04:育ての親より不良の親。
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他校の不良が泣き声に苦しんでいる隙に、石矢魔の不良が次々と殴りかかり、地面に倒していく。
やられていく仲間に、リーダーは一歩一歩とあとずさる。
「く…」
その前に肩を並べて立つ、神崎と姫川。
「さっさとそいつを返せやコラ」
「なに泣かせてくれてんだ、ああ?」
応戦している夏目はその光景を見て思う。
(神崎君と姫ちゃん、もう完全にそのコの親だよ)
その迫力に「ひっ」とリーダーが怯える。2人を見つめる赤ん坊は、いつの間にか泣きやみ、求めるように両手を伸ばしていた。
「ぐ…っ! 思い通りになると…思うな!!」
リーダーは振り返り、全力で走りだす。
まさかそのまま逃げだすとは思っていなかった神崎と姫川は少し遅れて追いかける。
「「待てやコラァ!!!」」
リーダーは曲がり角を曲がり、一瞬でも姿を晦まそうとした。
「絶対逃がすな、姫川!」
「オレに命令すんじゃねーよ、神崎!」
自分達も角を曲ろうとした時だ。
ボゴッ、と凄まじい音が聞こえた。
「「…?」」
2人は歩調を弱め、顔を見合わせた。
こっそりと窺うと、そこには上半身がブロック塀にめり込んだパンツ一丁のリーダーの姿と、急いでズボンのベルトを締めようとする因幡の姿があった。
「よ…、よう…」
「因幡?」と神崎。
「おまえなにやってんだ…。赤ん坊は?」と姫川。
「あ…、ああ。従妹が世話になったようだな…。そいつはこっちで保護しといたから…」
「ははは」と作り笑いし、納得させるように2人の肩をぽんぽんと叩く。
「保護って…」
「つうかあいつ、なんでパンツ一丁…」
「あーもう! 神崎、てめぇ頭から血ィ出てんじゃねーか! うち来い! 手当てしてやっから!」
誤魔化すように声を上げ、2人の間に入り、神崎の右腕と姫川の左腕を引っ張り、その場をあとにした。
(どうなってんだ…?)
姫川は肩越しに振り返ってめり込んだリーダーを見、疑問を残す。
因幡の家に、神崎、姫川、城山、夏目がやってきた。
幸い、母親は出かけている。
あの赤ん坊について質問されなくても済む。
「救急箱をとりに行く」と言って、因幡は神崎達を自分の部屋に残して1階に続く階段を下りていく。
だが、その途中の踊り場で、力尽きたのかへたりと座り込んだ。
(どうなってんだ。っていうか、どうなってたんだ…、オレ…;)
アメを舐めた途端、急に体が縮んだところまでは覚えている。
そこからの記憶が酷くおぼろげだ。
神崎と姫川に抱っこされたような気がするし、失礼なことを言われて蹴りをお見舞いしたような気もする。
落ち着いて記憶をたどっていくと、最後は不良達に囲まれながらも守られていた覚えがある。
(このオレが…、守られる?)
そう思うと急に恥ずかしさが込み上げてきた。
最後は、取り戻そうと追いかけてきてくれたことが嬉しくて、そう思ったらまた急に体が大きくなったのだ。
下半身はなにも履いてなかったため、元に戻ると同時に全体をいかつい不良に見られてしまう前に蹴り飛ばして壁にめり込ませ、ズボンを奪い取った。
「あ―――…。もうあいつら直視できねぇ…」
一方、因幡が救急箱を取りに行ってる間、夏目と城山はくつろぎ、神崎と姫川は1冊のアルバムに釘づけになっていた。
神崎が漁って見つけた1冊だ。
「お…、おい…」と神崎。
「これって…」と姫川。
2人は動揺が隠せない様子だ。
なぜなら、アルバムの写真にあったのは、先程の赤ん坊だ。
写真のすぐ下にはピンクの蛍光ペンでこう書かれている。
桃ちゃん・0歳。
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