50:金持ち学園に潜入です。
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午後8時過ぎ、神崎は待ち合わせの石矢魔公園の前で待っていた。
因幡は、少し遅れて到着する。
「お待たせー」
その肩にはボストンバッグがかけられてあった。
「因幡、オレには手ぶらで来いとか言っときながら…」
「神崎の分も入ってんだよ」
「なに入れてきたんだ?」
「それはのちのお楽しみ。あっちの到着がまだでよかった。遅れて一番うるさいのはあいつらだし」
「あいつら?」
神崎は詳しいことはなにも聞かされていなかった。
尾行すること以外、因幡がなにを企てているのかせさえも。
てっきり、因幡と2人だけで姫川達より先にサンマルクス修道学院に侵入するものかと思っていた。
因幡の発言から、協力者がいると初めて知る。
一体誰が来るのか、と尋ねようとしたとき、遠くからけたたましいバイクのエンジン音が聞こえた。
暴走族かと思えば、因幡は「おー、きたきた」と待ちわびたように騒音の聞こえてきた方向に顔を向ける。
「!?」
こちらにやってくる3台のバイクの車体色は全部黒のうえ、外装に見覚えのあるステッカーが貼られてある。
黒狐のマークだ。
「へーいタクシー」
因幡が親指を立てると、やってきた3台のうちの1台が因幡の目前まで近づき、衝突する直前にブレーキをかけた。
「因幡てめー、オレらをアシに使うなんざいい度胸してんじゃねーかっ!!」
フルフェイスのヘルメットを取り去り、いくつもの青筋を立てて因幡を睨みつけるのは、黒狐の右腕、豊川だ。
轢かれかけた因幡は涼しい顔で手を上げ、「よう久しぶり」と声をかける。
久しぶりと言っても、修学旅行で会ったのが最後だ。
「オレ達にとっちゃ、漫画で言うなら前回ぶりな気分だ!」
「おまえら暴走族だったのか?」
神崎が問うと、豊川はハンドルで頬杖をついて「あ? 違ぇよっ。オレと伏見とこいつしか大型バイク持ってねーんだよ」と否定した。
「昔、奇襲かけられて、マジでバイクで轢かれかけたもんだなー」
懐かしそうに言いながら、次にヘルメットを取り去ったのは寿だ。
「おまえも来たのか」
「「ボクを襲うヒマがあるなら、ちょっと頼まれてくれる?」って稲荷さんに言われたんだよな?」
豊川がからかうように言うと、寿は「うるせーよ、クソマジで殺すあのキツネ」と苛立ち混じりに言って、拗ねたようにそっぽを向いた。
「昔は、他の黒狐の奴らもバイク持ってたんだけどなぁ…。どっかのバカウサギが奇襲の礼だっつって見事に蹴り壊してくれたよな…。伏見なんか買ったばっかでローン払い終わってなかったんだぞ。かわいそうに」と豊川。
「女々しい奴だな。奇襲かけてくるならバイクなんて買うんじゃねえ。そもそも、普通にアジトの後ろに停車させてるおまえらが悪いんだからな」と因幡。
「それは一理ある。壊されたくなきゃ隠せ。てめーらだって仕返しか知らねえがなぁ…」と寿。
(思い出話に花咲かせてんじゃねーよ。つか、おまえら何気に仲良いな)
元は敵対していた黒狐と、仲間を裏切った寿。
因幡は気にしてないように、「あの時の寿、スゲー怒ってたなぁ」と笑っていた。
「もたもた…するな…。送って…ほしいんだろ…」
そこで話しかけたのは、ヘルメットを取らずとも伏見だとわかった。
「おまえゴツイからヘルメット被ってると迫力あるな…;」
神崎は伏見を見上げながら言う。
城山以上の身長だけに、乗っている大型バイクも少し小さく見えた。
「稲荷さんがOKしたから聞いてやるけどよ。オレ達だってヒマじゃねーんだからな」
文句を言いながら、豊川は2つのヘルメットを因幡と神崎に投げ渡した。
「そう言うなよ。減るもんじゃねーし」
「ガソリン…減る…」
もっとなことを言う伏見に、因幡は「あー、わかったってっ;」と言ってヘルメットを被る。
「稲荷にも言った通り、1日だけ黒狐(てめーら)と協力して、現在抗争中のチーム、ブッ転がしてやるから!」
それがサンマルクス修道学院まで運んでもらう交換条件だ。
学院は山中にあり、電車で行くことはできない。
そこで因幡は黒狐に協力を要請したのだった。
因幡は伏見の後ろに乗ろうとしたが、伏見の体が大きすぎて乗れるスペースがほとんどない。
「なんで来たんだよ」
「……………」
伏見は黙ってアゴで豊川を指した。
「仕方ねえからてめーはオレの後ろに乗せてやるよ。ただしオレに1ミリたりとも触れるな」
「誰がくっつくか立ち乗りしてやろーか」
豊川と神崎は早くも険悪な雰囲気だ。
因幡は伏見の言いたいことを察する。
「ああ…、うん、ストッパー役って必要だよな」
こくり、と頷く伏見。
保護者のようだ。
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