49:お土産も思い出もお忘れなく。
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午前0時。
神崎と東条は指定通り、2人だけで指定であるホテル裏駐車場に到着し、屋上にいる神谷達を見上げた。
ちゃんと指定通りに来てくれたので、神谷達は内心で安堵を覚えながら、悪役らしく二葉と花澤を人質に、神崎と東条を脅す。
神谷が、二葉を縛るロープの端を左手で持ち、屋上から吊るしたのだ。
ホテルは15階以上。
遠くのビーチまで見渡せるほどの目の眩む高さと、小さな体を揺らす強風に、二葉は恐怖で声も出せず硬直してしまう。
「二葉っ!!」
「見てのとーり、少しでも抵抗したらちびっこを落とすぜ」
罠だとはわかっていたが、こうなれば手も足もでない。
神谷はそんな神崎達を見下ろし、ほくそ笑んだ。
「わかったらそこでおとなしく、ボコられてくれや」
駐車場で待機していた珍高の不良達が角材やら鉄パイプなどを片手にぞろぞろと出てきて、神崎と東条を取り囲む。
「二葉ちんっ!! てめーらこのっ…、ひきょーっスよ!!」
こちらも縛られ、身動きがとれない花澤は怒鳴ることしかできない。
それを聞いた神谷は興奮を煽られるように笑った。
「ヒキョー!? かかかっ。バーカ。いい言葉じゃねーか!! 今度は誰も助けにこねーぜぇぇっっ!! なんせここはVIPしか入れねぇ最上階のスイート…」
そこで言葉を止めたのは、バスローブを身に纏いブランデーグラスとスタンバトンを手に持った姫川と、キャンディーを口に咥え、ポケットに手を突っ込んだままこちらを見据える因幡が、いつの間にか花澤の傍に立っていたからだ。
周りを見ると、神谷が神崎達に気をとられている隙に、屋上にいた珍高の不良達が2人によってほとんど倒されていた。
神谷は引きつった笑みを浮かべたまま硬直してる。
なぜ彼らがここにいるのか。
それは他の珍高の不良達も同じことを考えていた。
「小虫が…。人の部屋のテラスで騒いでんじゃねーよ。あ、でも、ヒキョーって、いい言葉だよねー」
「ねー」
姫川に続き、因幡も邪悪を含めた薄笑みを浮かべた。
「なっ、なんだおまえらは!?」
神谷の言葉に姫川は「あん? おまえらに名乗る名前なんてねぇよ」と冷たく返し、一度間を置いて言葉を継ぐ。
「姫川ですけど」
「「「「「名乗った!!」」」」」
つっこむ珍高の不良達。
だが、その名を聞いてざわめいた。
「え…?」
「ちょっとまて…。姫川…?」
「スーパーロングリーゼントに」
「VIPで」
「色めがねって…、まさか」
「まさかこいつ…!!」
「東邦神姫の、姫川竜也か!!」
珍高の不良達がそう気付いた時、姫川はスタンバトンのスイッチを押し、鞭状に変形させ、ブランデーグラスを持ったまま、鞭状にしたスタンバトンを辺りの珍高の不良達に向けて振るった。
「よくわかってんじゃね―――かっっ!!!」
バチィッ!!!
「うわっ!!」
「「「「「!!!」」」」」
電流つきの鞭のため、触れれば電撃が容赦なく襲う。
危うく当たりかけた因幡はその場にしゃがんで避け、鞭が当たった不良達は断末魔のような悲鳴を上げた。
屋上は眩い発光に包まれる。
「あぶね―――っス姫川先輩!!」
「てめー、オレまで巻き込む気かよっ!!」
因幡は文句を言いながら、花澤のロープを解く。
屋上の一番端で二葉を吊るしたままその光景を見ていた神谷は、唖然とした顔で「本物…?」と呟いた。
噂以上の力量だ。
「新必殺、広域スタンバトン“悪魔の鞭(デビルズウィップ)”。特注品だ」
電撃が収まると、辺りには焦げ臭い煙を漂わせた珍高の不良達が倒れていた。
「…なんだ?」
「…姫川と…因幡?」
駐車場から屋上を見上げる神崎と東条は、屋上が一時的に光ったのが見え、不良達の悲鳴を聞いた。
同じように、駐車場にいる不良達も何事かとそちらを見上げている。
「なっ…、なんでおまえが…」
はっとした神谷は、人質である二葉の存在を思い出し、強気に出てみた。
「いや…、そんなことより動くんじゃねぇっっ!! ガキを落としちまうぞ!!!」
「あ? 別にどーでもいーんですけど」
「「はぁ!?」」
姫川のどうでもいい発言に、神谷と因幡の声が重なった。
てっきり二葉を助けるつもりでいるのだと思っていたので、因幡は「なに言ってんだ姫川!!」と焦る。
「おいおい正気かてめぇっ。この高さから落ちたらマジで死んじまうぞ!!」
脅しを続ける神谷に対し、姫川は戸惑う様子も見せず、「ガタガタいってねーでさっさとやれよ」と煽った。
「…………っ」
「どーした、ほら」
本気で落とせるわけがない。
見抜いていた姫川は神谷に近づき、「ただのハッタリかよ」と鞭を振るい、神谷の胴体に巻き付けた。
「!!」
その拍子に二葉を縛ったロープを放してしまったが、間一髪で花澤が屋上の端から身を乗り出してつかんだ。
すぐに因幡も花澤自身が落ちないように花澤の服をつかんで支えた。
「二葉ちんっ」
「パー子!! 桃!!」
「桃?」
「オレの妹っ、オレによく似てるからなっ」
(だから本名呼ぶなっつの!)
本名を呼ばれて慌てて誤魔化す因幡。
「……っ」
逆に捕まったうえに、人質まで失ってしまった神谷は小さく唸った。
「あのなぁ、おまえ。本気で落とす覚悟ねーなら意味ねーぞ? そんなおどし」
「ひっ」
呆れたように言いながら姫川はさらに神谷に近づき、その背中を蹴って屋上から吊るした。
「!!」
「神谷さんっっ!!」
いきなり屋上から吊るされた神谷に不良達は声を上げた。
「姫川っ、てめぇ二葉が落っこちたらどーすんだこらぁっ!!」
一方で二葉が落ちかけたことに怒鳴る神崎に、姫川は「あぁん?」と返す。
「情けねーな、神崎、東条。しょーがねーから助けてやるよ」
その名を聞き、不良達は再びざわめきだす。
「お…、おい…、姫川に…」
「神崎…」
「東条って…」
「ま…、まさか」
「本物の東邦神姫か…」
発言の中に、何気に混じっている姫路と東山。
「あ、いたんだ」
発見した神崎。
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