49:お土産も思い出もお忘れなく。
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因幡は姫川の部屋を見て、ドン引きを通り越して絶句していた。
ホテルの最上階にある、高級なスイートルーム。
修学旅行生にあるまじき部屋だ。
因幡はリビングを見回す。
一人部屋にしては広すぎのうえ、窓からはテラスが見えた。
それに、玄関で因幡を迎えた姫川の格好は、風呂上がりのなのか白いバスローブを身に纏っていた。
しかしその頭はリーゼントのままだ。
シャンプーの匂いがしたので、一度解いてからまた作ったのだろう。
「おまえ修学旅行に来たんだよなっ!?」
「オレ、狭い部屋とかムリ」
ソファーに足を組んで座って、スマホをいじりながら答える姫川。
「黙れボンボンがっ!!」
因幡達が宿泊している部屋も広々としているのに、ここはそれ以上だ。
姫川にとって「狭い」とはどの程度のものなのか。
どう聞いても腹の立つ返答しか返ってこないのはわかりきっているため、あえて聞かずに因幡はとっとと用を済ませてしまおうと、姫川の目の前に立って夏目から受け取ったものを渡した。
「これ。国際通りで買ったもんだけど…」
「なんだこれ?」
受け取った姫川は指でつまみ、紫色のガラス玉がついたそれを見る。
「夏目が買ってた、ちゅら玉ストラップ…。オレももらった…。神崎達も持ってる…」
小恥ずかしそうに視線を逸らし、ケータイにつけたそれを見せる。
「おいおい、まさかおそろのつもりか? オレがつけると思ってんのか?」
小馬鹿にしたように笑い、ガラスのテーブルに載せた、ブランデー(ノンアルコール)の入ったブランデーグラスを手に取る姫川に、因幡はこめかみに青筋を立たせ、姫川の手からスマホとストラップを奪い、背を向けて2つを繋げる。
「おい因幡!」
「ほらよ」
姫川が手を伸ばすと同時にそれを返す。早業だった。
スマホについたそれを見て、姫川は「おまえなぁ」と怒りを通り越して呆れる。
因幡はいたずらっぽく笑い、「どーせ飾りっ気もない地味なスマホだろが。……オレもそろそろスマホに買い替えようかな」と呟いて自分のストラップを見せた。
そこで思い出したように「あ」と口にする。
「じゃあ、用はそれだけだから。捨てるなよ? それ。捨てたら転がすからなっ!」
「どこか行くのか?」
玄関へと向かう因幡に姫川は声をかける。
「さっき神崎から連絡があって、二葉ちゃんが迷子らしい。オレ、部屋に戻ってないか見てくる」
「あのバカ、ガキなんて連れてくるから…」
「もし見かけたら連絡……」
因幡は肩越しに振り返り、一時停止して目を大きく見開いた。
突然の因幡の停止に不審に思った姫川はその視線を追い、窓の方を見る。
「あ」
ぞろぞろとテラスに現れ、屋上の端へと移動する人影。
その群れの中に、ロープで縛られた二葉と花澤がいた。
「いたぞ」
姫川は指をさし、平然と言ってブランデー(ノンアルコール)を飲む。
「優雅に言うな」
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