48:ちゅらいって何ですか?
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ひと騒動が終わった翌日、聖石矢魔は美ら海水族館に来て、自由行動をとっていた。
偶然にも珍高の不良達と日程が被っていて、邦枝とのデートを楽しむ哀場以外の不良達は遠目からこちらの様子を窺っている。
「おぉっ!! 見ろ一。でっかい魚っ!!」
入口付近に来ると、二葉はゲート前に立つジンベエザメのモニュメントへと駆け寄った。
「はしゃいですっころぶんじゃねーぞ」
「神崎君、これが有名な美ら海水族館だよ」
夏目はパンフレットを持ちながら水族館を見上げ、神崎に言った。
「なにぃ。なにがそんなにちゅらいんだ」
「……………海…じゃないかな」
つっこむかどうか迷った夏目だったが、普通の返事を返す。それでも神崎は引っ張った。
「ちゅらちゅらしやがって。このちゅら男が」
「日本一大きなジンベエザメがいるんだってさ。ちなみに「美ら」っていうのは沖縄の方言で、美しいって意味だよ」
「君ちゅらうぃ~ね―――っ」
「聞いてる?」
それに続いて「ちゅらい」が流行りだす。
「朝メシを食べそこねてちゅらい」と東条。
「同じく眠くてちゅらい」と花澤。
「昨日のフロでの衝撃が未だにちゅらい」と飛鳥。
「ちょっとつらいみたいな表現になってるよねもうそれ!! なにここ無法地帯!? つっこみゼロ!?」
古市が乗り遅れたため夏目が耐え切れずにつっこんだ。
「ちゅらい?」
神崎は隣で欠伸をしていた因幡に首を傾げて問う。
「言わねーよ?」
返される厳しい一言。
館内に入った一行は、ジンベエザメやマンタなどの70種類の回遊魚が泳ぐ大水槽の前へと移動していた。
ダイナミックな水槽に、ジンベエザメが目の前を通過する。
「おおっ」
「おおおー」
神崎と二葉は口を開けたままそれを目で追いかけた。
「神崎さん、あれが噂のジンベエザメっスよ」と城山。
「なんてエラそーなヤローだ」と神崎。
「魚だけに」と因幡。
「でけー」と二葉。
「大丈夫なのか。横の魚とかぱくっといかれんぞ」と東条。
「た、たしかにっ!! 食い放題っスよこいつ!!」と花澤。
そこで物知りな夏目が説明した。
「ジンベエザメの主食はプランクトンだから大丈夫だよ。図体のわりに温厚な性格なんだね」
「マジスか!? プランクトンってなに!? 米!?」
プランクトン自体がわかっていない花澤に、今度は神崎が知ったか顔で説明する。
「アホかおまえ。プランクトンっていったらギタリストだろーが」
「ギタリスト喰うんスか!? パネェ。そして偏食!!」
「もしかしてエリック・クラプトンのこと言ってるの? わかりにくいボケはやめてくれる?」
夏目の勢いのないつっこみに我慢ならず、ここで古市がしゃしゃり出てきた。
「夏目先輩、ダメっスよ…。そんな優しいつっこみじゃ…。オレに任せてくださいっ」
古市は神崎と向き合うと、息を吸い込み、プロのつっこみを見せつける。
「喰うわけねぇだろっ。死ねっ!!」
そのあとすぐ、首根っこをつかまれて神崎と夏目に水槽の上へと強制的に連行された。
「すいませんっしたぁぁぁぁっ!!」
「お客様っ!!」
慌てた館員の制止の声も届かず、神崎に両腕を、夏目に両脚をつかまれた古市は水槽の中へと投げ入れられる。
沈んでくる古市に、因幡と、因幡に肩車された二葉はそれを眺める。
「桃、この魚は?」
「……コバンザメ?」
男鹿にくっついてるイメージがあったので適当に名づけた。
「がぼっ(人のこと言えるんスか!?)」
すっきりとした様子で戻ってきた神崎と夏目。
次のアクアルームに行こうとしたので、因幡は「あ、おい」と二葉を肩車したまま引き止める。
「鮫のコーナーにはまわらねえのか?」
アクアルームの手前にある、“サメ博士の部屋”という肉食のサメが展示されたコーナー。
すると神崎は嫌な顔をして首を横に振った。
「オレサメ嫌い」
「トラウマだもんな…。神崎食おうとしたあの赤いサメ…」
察した姫川は小声で因幡に教えると、因幡は「あ―――…」と思い出したように声を伸ばした。
名前を聞くだけでも嫌悪感があるらしい。
*****
その頃、噂の赤いサメ。
「ひっくしょいっ!!!」
テーブルの席についたまま大きなくしゃみをした鮫島は「風邪か…」と鼻をすすった。
「いや…、私のことですから、誰かが噂を……。モテる男も大変だ…」
「言いたいことはそれだけか鮫島ぁ」
正面で思いっきり鮫島のくしゃみを受けてしまった、向かい側に座っていたフユマ。
顔面が唾で汚れている。
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