48:ちゅらいって何ですか?
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背中合わせの因幡達は、すっかりあとから来た他の南珍比良高校の不良達に囲まれてしまったが、焦った素振りは見せなかった。
「ククク。改めて紹介するぜ」
「「「「オレ達はっ!! 南珍比良高校東邦神姫!!!」
「東山っ!!」
「邦彦!!」
「神谷!!」
「姫路っ!!」
順番に名乗る4人のキメ顔には殴られた痣があり、カッコ悪く鼻血を垂れ流していた。
「いや、もう全員殴ったし、いいんじゃね? 紹介とか」
そう言う神崎に、神谷は「笑止っ!!」と指をさす。
「この人数がいればオレ達だって」
「ちょっとぐらい活躍するぞ!!」
東山に続き邦彦が威張るように言うと、「おまえら東邦神姫バカにしてんだろっ」と神崎がつっこんだ。
「あーあ、手ぇ出しちゃったねー。二葉ちゃんもいるし、この人数相手にするのはマズくない?」
夏目が笑みを浮かべながら言うと、少し間を置いて神崎は返す。
「バカヤロー。男鹿だっていつでも赤ん坊背負って闘ってんだろ。二葉、肩車だ」
そう言って、その場にしゃがんで二葉に背を向けた。
「おおっ、一。一はつおいなー」
「いいから乗れ」
はしゃぐ二葉を促すと、二葉は神崎の背中に乗ろうと手を伸ばした。
それをチャンスと見て、真横から不良が角材を振りかぶり、はっと気づいた夏目は「神崎君!!」と声を上げた。
ガキッ!
振り下ろされた角材は、神崎の手の甲に受け止められた。
「え?」
目を丸くする不良に、神崎は空いている右手でコブシを構える。
「急かすんじゃ…ねえよっ!!」
ゴキャ!!
左頬を殴られた不良は真っ直ぐ吹っ飛び、地面に転がった。
「「「「「!!」」」」」
他の不良達は吹っ飛ばされた仲間を目で追い、顔色を変える。
「おおー。いい転がりっぷりじゃねーか」
「神崎君、また一段とウデ上げたんじゃない?」
因幡に続き夏目が言うと、神崎は「当然」と短く返した。
次の相手に構えた時、背後から神谷の両手に捕まった二葉の姿が目の端に映り、そちらに顔を向けた。
「一ー、つかまっちまったぞ!!」
人質にとられた二葉は別段怯える様子も見せず、平然とした顔のまま左手を挙げる。
「さぁて、どーするよ、大将。ククク」
こちらがヘタに出ると、あちらは二葉をどうこうするつもりだろう。
その場にいる全員が察した。
「二葉ちゃんっ、貴様ら~っ」
ひとり慌てる城山。
反対に神崎は至って冷静だ。
「まじで東邦神姫のツラ汚しだな、こいつら…。神崎さんはそんなヒキョーなことしねーぞ。姫川はする。あいつは超する」
(結構してたと思うケド)
薄笑みを浮かべたまま夏目は内心でつっこむ。
「…神崎」
因幡が神崎の横から出ようとすると、神崎は右手の甲を後ろに振り、因幡の肩に軽く当てて止める。
神谷達を睨む神崎の威圧感に、形勢逆転の笑みを浮かべていた神谷の顔が強張った。
「南珍比良高校とか言ったな…、てめーら…。……………略して、ちんこうか…」
際どい省略に、プッ、と噴き出す夏目と因幡。
「南校だっ!! そこを略すんじゃねーよっっ!!」
その時、怒鳴って否定する神谷の背後に大きな影が現れ、因幡は思わず「あ」と口を開けた。
現れたのは、ちんすこうを両手に持った東条だ。
「呼んだか?」
「だっ、誰だぁぁ―――っっ!!!」
振り返った神谷は突然の人物に声を張り上げた。
「呼んでねーよ…」
神崎がつっこむと、あとから連れの陣野と相沢も現れる。
「東条さーん。まーた急にいなくなったらと思ったら、って…、こりゃまた楽しそうなところに…」
相沢と陣野は神崎達を囲んだ珍高の連中を見て、現状を把握する。
「なっ、なんだてめーはっっ」
突如現れた東条に驚いた神谷には目もくれず、東条はその両手に持たれた二葉と目を合わせた。
二葉が「おっす」と左手を上げて挨拶すると、東条に衝撃が走る。
(か…、かわいい生き物がいる!!!)
東条の目には、なんかちっちゃいウサギに見えたそうな。
東条は神谷の肩を叩き、威圧をかもしだしながら「交換しよう…」と言い出した。
「は?」
「オレのちんすこうと交換しようぜ」
「はぁあああっっ!?」
その隙に、因幡は神谷の手から二葉を取り返し、神崎のもとへ戻る。
「東条、そいつブッ飛ばしたら交換してやってもいいぜ」
因幡が出した条件に東条は即座に頷き、コブシを構えた。
「よしキタ」
「な…っっ」
ゴワシャッ!!
堤防を越え、海の向こうまでブッ飛ばされた神谷。
「神谷さあああああんっっ!!」
何人かが堤防に走り寄り、海に落ちた神谷を助け出そうとする。
「交換…」
「しねーよ!!」
迫る東条に、神崎は、勝手に条件を出した因幡の頭を叩き、その手から二葉を受け取ってきっぱりと断った。
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