48:ちゅらいって何ですか?
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「遊びにきたぞー」
寝間着代わりのジャージに着替えた因幡は、神崎組の部屋へと遊びに来た。
ノックをして入ると、そこには雑誌を読みながら椅子に座っている夏目と、真ん中のベッドに腰掛けて二葉を胡坐の上に座らせながら一緒にテレビを見ている神崎がいた。
「…なにそれ。カワイイ画だな」
叔父と姪の光景を目にして、思わず写メに収めてしまう。
そこでふと思う。
(こいつら一緒のベッドで寝る気か…?)
神崎達の部屋のベッドは3つ。
おそらく二葉は神崎のベッドで一緒に寝るのだろう。
思わず和んでしまう光景に違いない。
「…母ちゃんの方は?」
因幡の背後を見てちょっと警戒した神崎だったが、遊びに来たのは因幡ひとりだ。
「抜け出してきたんだよ。いい年してはしゃぎやがって…」
修学旅行に便乗してきた理由が、仕事の資料集めというのは本当らしく、デジカメで首里城やバスから見える景色を撮影しまくったことを思い出す。
同学年だと感じさせられるくらいのはしゃぎっぷりだ。
今も、今日撮影した写真を見ながら仕事モード(ネタ作り)に入っていた。
呆れかえる因幡に、二葉は「桃っ、けんじょーひんはあるんだろーなっ」と偉そうに言ってきた。
「「桃」っつーのやめろって言ってんだろーが。神崎も本名教えんな。…献上品? エラそうに言わなくてもちゃんと持ってきたから」
そう言って、ビニール袋に入ったポテチョやキャンディーを掲げて見せつけ、神崎の隣に座って中身を取り出し、「ん」と二葉に手渡す。
自分はシークワーサー味のキャンディを咥えた。
「ヨーグルッチは買ってきたのかよ」
神崎が言うと、「こんなところまで来てソレかよ」と苦笑する。
「そういや城山は?」
欠員に因幡は夏目に尋ねる。
「ああ、城ちゃんなら…」
そこでタイミング良くドアが開き、急いだ様子で城山が部屋に戻ってきた。
「神崎さん、大変っスよ!! 表の自販機に沖縄限定ヨーグルッチが!!」
「なにぃ~」
「沖縄限定って…」
ここまできてヨーグルッチ、と肩を落とす因幡とは反対に、神崎と二葉の目が光った。
「一っ」
「おう」
「しんたろーも桃もボヤボヤすんな、いくぞっ」
ベッドから降りた神崎と二葉は靴に履き替えて出入口へと向かう。
「はいはい。2人とも好きだねー」
「え。オレも行くの?」
夏目と因幡もあとに続き、部屋を出た。
自販機はホテルの前にあるビーチの近くにあった。
辺りに波の音が響いている。
夜も更けるというのに、城山が見かけた時と違って目的の自販機の前に南珍比良高校の不良達がたむろしていた。
その内の何人かがこちらに近づく因幡達に気付き、仲間に声をかけるとその場にいた全員が一斉にそちらに振り向き、ガン垂れる。
仲間が何十人いようと喧嘩の売り買いをした相手の顔を覚えているのだろう。
「なんだこら」、「またてめーらか」と凄んでくる。
「……………そりゃこっちのセリフだ。邪魔だボケ。ヨーグルッチが買えねーだろが」
神崎も喧嘩腰に凄むと、南珍比良高校の不良達は「あ? ヨーグルッチ?」「売り切れだバーカ」と笑いだす。
「ここは南の東邦神姫、神谷さん専用なんだよ」
「よそ行け、よそ」
指された方向を見ると、ゴーヤ味のヨーグルッチを飲んでいる不良がいた。
フッ、と笑い、「バカおまえらよせって」とキザったらしく笑っている。
聞き捨てならない単語に神崎達はキョトンとした。
「東邦神姫?」
「あ? 知らねーのかよっ!?」
「あー、やれやれ、これだから坊っちゃん高校の不良はよーっ」
そこで出てきた4人組。
代表して、先程ゴーヤ味のヨーグルッチを堪能していた不良―――神谷が名乗り出す。
「最凶の不良校、石矢魔高校の4大勢力だよっ!! それに因んでつけたのが、オレ達南珍比良高校東邦神姫!!」
左耳と唇をチェーンで繋ぎ、片側の前髪だけ流した男が神谷。
4人の中で一番の巨漢でサングラスをかけた男が東山。
“邦”と書かれたマスクをつけた男が邦彦。
つぶらな瞳で、リーゼントをしている男が姫路。
特に神谷と姫路は本物を意識した身なりをしている。
((((―――…クオリティ低っ!!))))
神崎、城山、夏目、因幡は同時に思った。
「こいつら、おまえが東邦神姫だって気付いてねえのな…」
因幡が右手で口を隠して神崎の耳に小声で言うと、神崎も呆れながら小声で返す。
「一応、表向きは“聖石矢魔”だからな…。石矢魔(オレ達)が今はそんな坊っちゃん高校に通ってるとは思わねーだろ…」
「とりあえず、なんか見ててムカつくからブッ転がしていいよな?」
気に食わないというように顔をしかめる因幡に、夏目はにこやかに「モメないモメない」となだめようとする。
「それにしても…」
神崎の視線が姫路に移った。
「姫川は激似!!(笑)」
「「ブッ!!(笑)」」
神崎が振り返って噴き出すと、つられて夏目と因幡も耐え切れずに噴き出し、そのまま腹を抱えて笑い出す。
「な、なに笑ってんだコラァ!!」
バカにされたと思った姫路に続き、他の南東邦神姫達も殴りかかってきた。
*****
「へっくし!!!」
その頃、姫川は神崎達を冷やかしに行こうとしたが、不在だったのでやむなく自分の部屋に戻る途中だった。
大きなくしゃみをしたあと、「風邪か?」と鼻をすする。
「くっそおおおおっ、間に合ええっ!!」
その横を、ちんすこうを持った東条が走り過ぎる。
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