47:旅先の出会い。
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出入口付近に移動した、因幡、神崎、姫川、夏目、城山、二葉、稲荷、伏見、豊川、寿。
未だに車椅子に乗ったままの稲荷は、裏の読めない薄笑みを浮かべながら答える。
「ボク達は純粋に沖縄旅行に来ただけだよ」
「呑気だな、黒狐」
サングラスを指先で上げる姫川は呆れたように言う。
「全員で来てるのか?」と城山が尋ねると、伏見は首を横に振った。
「5人…だ…」
「5人?」
首を傾げた夏目は黒狐の人数を数えてみる。
4人しかいない。
そこでタイミングよく、もうひとりが売店から戻ってきた。
「やっぱり、お揚げ味のタルトやちんすこうなんてねーぞ。つーか、あるわけねーだろ、そんなもん…」
「明智!?」
かつての昔馴染みに神崎は声を上げた。
対して、こちらは大したリアクションをせず、「神崎…?」と禁煙パイポを咥えたまま静かに驚く。
明智と寿の2人は、かつてのノーネーム事件の主犯だ。
今では因幡の案で強制的に黒狐に入れられ、勢力拡大を嫌々ながらも手伝っている。
「随分馴染んでんじゃねえか」
売店で買ったばかりのキャンディーを咥えた因幡がニヤニヤしながら寿に言うと、寿はあからさまに不機嫌そうに顔をしかめ、「どこ見て言ってんだ」と口を尖らせ、明智も腕を組みながら頷いた。
「何度も寝首を掻いてやろうと奮闘してたようだが…、瞬殺もいいとこだな」
明智がため息混じりに言うと、寿は明智を指さし、「てめーだって、マジでボロッボロにやられてんじゃねーかっ」とがなる。
「懲りねえ野郎共だな」
神崎が呆れていると、明智は「そりゃあな…」と素直に頷いた。
「次は、実力でてっぺんを取るつもりだ。それには、黒狐の頭が邪魔なんだよ…」
「頭どころか、手にも足にも及んでないじゃない」
稲荷が笑顔ではっきり言うと、明智と寿は「ぐ」と小さく悔しげに唸った。
今まで魔力任せで戦って勝利していたため、それを失ってからは稲荷どころか、伏見と豊川にも勝てていない様子だ。
「つけあがってんじゃねーよ。さっさと稲荷さんのために、お揚げ味のちんすこう探してこいやぁ」
そう言ってどこから取り出しのか、豊川は鉄パイプの先端で2人の背中を軽くつついた。
「つか、おまえらも修学旅行だなんて学生らしく呑気なもんだな」
「あ゛?」
豊川の言葉に喧嘩腰に返すのは神崎だ。
また始まった、と伏見はため息をつく。
ノーネーム事件で協力し合った間だというのに、仲は険悪なままだ。
「聖の奴らが言ってたぜ? 校長様のお情けで修学旅行についてきたそうじゃねえか。どうやって泣きついたんだ?」
「それ言った奴ら今すぐここに連れてこいや。てめーごと沖縄の空の彼方にブッ飛ばしてやるからよぉ。そっちだって呑気に沖縄旅行に来ときながら棚上げかよ」
ビキビキ、と青筋を浮かべながら胸倉をつかみ合う神崎と豊川。
「あ゛あ? オレらのは慰安旅行みたいなもんだ。そっちこそ沖縄の珊瑚礁に沈めんぞゴラァ」
「はぁ? 抜かせ。そこらへんの家の屋根に突き刺してシーサーと同化させちまうぞ」
「はぁん? ズボンにハブ突っ込まれてーってか? 大事なアソコ噛まれて入院沙汰になりてーってか?」
「あーん? カラッポの頭にハイビスカス植え付けられてーか」
「あ゛ー? イリオモテヤマネコでにゃんにゃんされたいって…」
「テーマ“沖縄”で古今東西喧嘩すんじゃねえ」
見兼ねた因幡がストップをかけ、見計らった伏見は豊川の、姫川は神崎の首根っこをつかみ、未だに睨み唸り合う2人を引き剥がすように回収した。
「休憩時間も終わりだし、オレらももう行くけど、おまえらはいつまでここにいんの?」
因幡が問うと、稲荷が答える。
「ボク達は3日くらい旅行を楽しむから、そっちも学生気分を存分に楽しむといいよ。ボク達はこれから琉球村と美ら海水族館に行く予定」
「そっか」
それだけ言って、唸りっぱなしの神崎を引きずるようにバスへと向かった。
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