47:旅先の出会い。
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家族連れも便乗し、聖石矢魔と石矢魔の生徒を乗せた飛行機は沖縄に向けて飛び立った。
石矢魔は後列に座っている。
前列の、すっかり旅行気分ではしゃいでいる聖石矢魔の生徒とは違い、こちらは物騒な威圧感を醸し出しながら全員静かに座っていた。
不機嫌そうでなんか怖い、なんで石矢魔まで修学旅行についてくるのか、と苦情を受けた旅行委員とアレックスが様子を見に行き、アレックスが男鹿達の席を見つけて声をかける。
「男鹿クン」
「ダブ?」
「どういうことデスか、これは」
「あ?」と男鹿。
「あ、アホの六騎聖」と隣の古市。
「ナンでキミ達はそんなに不機嫌なんデスか!?」
「いや、そこじゃなくて…」
旅行委員にとって不機嫌なのはどうでもいいのだ。
「不機嫌? アホか、おまえ。よく見てみろ。ちょーはしゃいでんだろ」
「?」
「おいおい男鹿、ふざけんなよ、おまえナメられんだろーが」
聞き捨てならないというように声をかけたのは、近くの席にいる東条だ。
アレックスがそちらに顔を向けると、完璧なくらい旅行スタイルの東条が座っていた。
アロハシャツを着、頭にはサングラスをかけ、沖縄のガイドブックを開き、すでに膨らませたビーチボールやイルカの浮き輪まで持ち込んで隣の窓側の空席を占領している。
隣の姫川も呆れ果てていた。
(はしゃいでマスね)
「―――…機内でふくらませないでくだサイ。気圧で破裂しマスよ」
「なにぃ~。気圧の野郎ちょっと呼んでこい」
東条はサングラスを目にかけると、“気圧”がなにかもわからずに探し出す。
「はっ…。バカが。沖縄ぐらいで恥ずかしい野郎共だな」
その近くの、通路側の席に座る神崎が呆れたように言う。
「あ? てめーこそ、妹連れてきてんじゃねーよ」
「姪だボケ」
指摘する姫川に神崎は短く返す。
神崎の隣の二葉は、両手でポテチの袋を持って「一、あけろっ」と命令した。
(自由デスか?)
「この人達…、東邦神姫とかいう有名な不良だよな? 確かこっちはや○ざの息子で…」
旅行委員が小声で言うと、アレックスはおそるおそる尋ねる。
「あの…、流行ってるんデスか? 今、子連れの不良が…」
「あ? なに言ってんだ。子連れじゃねーよ。親父もいるぞ」
二葉の隣には当たり前のように武玄が座っていた。
「二葉ちゃん、あけてあげよーか」と武玄。
「ジジイはすっこんでろ」と二葉。
「ついてきちまった」と神崎。
孫可愛さに。
(家族連れ!!?)
「まあ、細かいことは気になさらないで…」
「どちら様デスか!!?」
声をかけたコハルにつっこむアレックス。その若々しい容姿ゆえ、保護者か学生か判別できない。
「こちらは身内の方デスか?」
「……………」
「?」
コハルの隣に座る、通路側の因幡に尋ねるが、因幡は真剣な顔で宙を見つめ、腕を組んだまま動かない。
「あの……?」
((そういえば、やけに大人しいな…))
まったく反応のない因幡に、神崎と姫川は怪訝に思い、どちらも通路側なのをいいことに後ろの因幡の席に振り返る。
すると、因幡は思い立ったようにすっくと立ち上がり、とんでもない一言を発した。
「降りる」
「は!?」
因幡は通路を渡ってドアへと向かい、嫌な予感を覚えたアレックスと、神崎と姫川は立ち上がって慌ててそれを追いかけ、旅客機のドアに手をかけた因幡を取り押さえる。
「おおおいっ!! なに考えてんだてめーはっ!!」
「こんな何百人も乗せた鉄の塊なんて、重さですぐにおっこちるに決まってんだろ!! 降ろせっ!! オレだけでもすぐに降ろせえええええっ!!!」
「桃ちゃんは飛行機初めてですものね」と呑気なコハル。
因幡の、意外な弱点がまた一つ発覚した。
沖縄まで残り1時間。
早くも、前途は多難の予感だ。
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