46:修学旅行に行きましょう。
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かくして、IKRS(石動校長籠絡作戦)は実行されることとなった。
校長室では、怪しい作戦が行われることなど知らない石動が、鼻歌を歌いながらコーヒーを淹れ、棚から楽しみにしていたカステラの箱を取り出していた。
「とっておきのカステラちゃん」
コーヒーと一緒に食べようと机に持っていこうとした時だ。
勢いよくドアが開かれ、因幡、神崎、古市、姫川の4人・第1班が足を踏み入れた。突然のことに石動は何事かと驚いている。
「な…、なんだね? キミ達は」
「チャンチャンチャンチャラ~チャン~♪」
因幡がイントロを口ずさみながらリズムよく指を鳴らし始めると、続いて後ろの神崎達も指を鳴らし始め、澄んだ目をしながら歌いだす。
「悲ーしいことーがーあるーとー♪」と姫川。
「ひらーくー皮のー表紙~♪」と古市。
指を鳴らし、歌いながら石動を中心に回り歩く4人。
「卒業~写真のあの人は~~~♪」と神崎。
「悲しい~目を~してた~~~♪」と姫川。
それをドアから窺っている、早乙女と男鹿達。
男鹿は理解不能な光景に「なにコレ…」と小さくつっこんでいる。
「よしっ、いいぞ。順調なすべりだしだ!!」
なにがいいのか、早乙女はほくそ笑む。
第1班の歌と足が止まり、因幡、神崎、古市が姫川に振り向いた。
「…おい姫川、おめー歌詞間違ってんだよ」と神崎。
「なんだよ悲しい目って」と因幡。
「そうそう。優しい目っスよー」と古市。
「あー? いーんだよ。どーせオレのアルバムは悲しみでいっぱいなんだから」と姫川。
「なにぃ~? どういうことだ~~」
「悲しみでいっぱいってなんなんですかー」
神崎と古市が棒読み気味に言うと、姫川は、ふ、と悲しげに笑う。
「だって、オレの卒業アルバムには、修学旅行がないから!!」
「「「修学旅行がないから―――?」」」
第1班の視線が一斉に、カステラを持ったまま中心に立っている石動に注がれた。
回りくどく同情させようとしている。
石動は黙ったまま困惑の表情を浮かべている。
(うわぁ―――)
なにこの寸劇、と男鹿が引いている。
「よしっ、第2班突入っっ!!」
早乙女が声を上げると、続いて第2班・烈怒帝留が校長室に突入した。
「また…?」
「そんなことないっ!!」
「あきらめないでっ!!」
「そうよっ!! そんな長いリーゼント」
「どうせ撮っても見切れるんだからっ」
烈怒帝留の面々も大変澄んだ目をしている。
「やめろっ。ヘタな慰めはよしてくれっ!!」
「いいえっ、むしろそれのせいで修学旅行がないんだわ」
「バラしましょうっ!!」
見計らい、再び早乙女が声を上げる。
「第3班っ!!」
「そいつはオレ達に、まかせてもらおうかっ!!!」
今度は、東条と夏目が窓ガラスを割って校長室に突入した。
第3班の2人は姫川をつかまえると、髪をつかんで無理やりそのリーゼントを毟る勢いで力任せに解いていく。
演技ではなく、姫川は本気で嫌がっていた。
人ゴミ――に流されて―――
変わって―――いく わたしを―――
あなたは―――
ときどき―――
とおくで―――
しかって―――
他の石矢魔面々は『卒業写真』を歌いながら、それを見守っていた。
その寸劇で石動の心をつかんだのかどうなのか、石矢魔も修学旅行行が許可されたのだった。
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