45:くしゃみをしないでください。
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薄暗い玉座に足を踏み入れたフユマは、モノクロの床を歩いて大広間の中心で立ち止まり、黒いカーテンで隠された玉座を見据えた。
相変わらず無風の空間で居心地が悪い。
それに、ここに来たのは自分だけではないようだ。
フユマを囲むように、部屋の壁際に幾人かの人間たちが立っていた。
顔はわからなかったが、すべて親戚だろう。
監視されているようで不愉快だ。
「来たか、21代目」
カーテン越しから老人のようなくぐもった声が聞こえた。
「ご無沙汰です、ジジ様…」
「さて…、どこから話そうか…」
ジジ、と呼ばれた者がそう言うと、フユマは自分の息子がクロトを継ぐことを話した。
その経緯も。
「―――では、卯月なごりになるのだな? 22代目クロトは…」
「はい。近日中に契約を継承するつもりです」
「22代目シロトはどうする…?」
「それもまた、こちらで…」
そう言いかけた時、壁際のひとりが声を荒げた。
「なにをちんたらしている! ジジ様をどれだけ待たせれば気が済む!」
「さっさと攫ってしまえばいいのだ。少々気が長いのでは?」
「またコハルのようなことになれば今度こそ取り返しがつかんぞ」
「我ら“卯月家”を絶やす気か!?」
続けざまに勝手を言って急かす親戚たちにフユマは舌を打ち、「騒ぐな」と低い声を出し、赤い瞳を見せた。
「あっちのベヘモットの問題は片付いたが、因幡桃の近くには蝿の王がいるんだぞ。王国を敵に回したくねえのはあんたらも同じだろが。因幡桃は卯月コハル以来の貴重な器だ。早乙女禅十郎みたいにまた邪魔されちゃたまったもんじゃねえ。だからこそ、慎重にいくべきだと思わねえか?」
「……っ」
正論だ。
早乙女の名も聞いて、親戚たちは顔色を変えて押し黙った。
くくく、とカーテン越しにジジの笑いが聞こえる。
「考えているな…。因幡桃の方は任せるが、くれぐれもクロトの方も失敗してくれるなよ、21代目」
「当然です」
「……あの失敗作にも目を光らせておけ。貴様にその面倒を押し付けたのは、我だがな…。なにかしでかせば、処分の方も任せたぞ」
フユマは目を伏せ、「はい…」と静かに答えた。
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