45:くしゃみをしないでください。
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「「あ」」
どこかであったパターンだな、と思ったのも同時だった。
因幡家へと続く坂道で、神崎と姫川はばったりと会った。
これもまた同時に眉をひそめる2人。
「オレが行くとこ行くとこ突然現れやがって、ストーカーかてめーは、通報すんぞ」
「ヤクザの息子がなにバカ言ってんだ。たまたまこっちに用があるから来ただけだ」
「用って因幡にか?」
「そーだよ。あいつ昨日ボロボロだったじゃねえか。勝ったみたいだけどよ」
「おいおい心配だから見舞いに行くとか言い出さねえよな?」
「ちょっと違うっつーか……。おまえ、帽子なんて被るんだな」
出会った時から気になっていた。
神崎にしては珍しく、迷彩柄のニット帽を頭に被っていた。
姫川に指摘され、神崎はギクッとすると、すぐに取り繕うように早口で喋る。
「オレだって帽子くらい被るっつーの。あ、おめーはそのフランスパンじゃ帽子も被れねーもんな」
「いちいち腹の立つヤロウだな。特注の帽子があるから被れる」
「特注かよっ」
つっこんだ時だ。
いきなり突風が吹き、神崎の帽子を飛ばした。
「「!!!」」
帽子の下から現れたのは、ぴょん、と頭に立ったウサギの耳だ。
金色の毛並であることも姫川は見逃さなかった。
神崎は能面のまますぐにアスファルトに落ちた帽子を拾い、頭に被り、何事もなかったかのような顔をする。
「……おま…っ、今のって…」
姫川は神崎の頭を指さし、声を震わせながら尋ねようとするが、神崎はそっぽを向いて「今のってなんですかー。帽子取れただけですけどぉー」と棒読みで返した。
「目ぇ逸らすな。ちょっともっかい外してみろ」
「触んなぁっっ!!!」
姫川が手を伸ばすと神崎は全力で抵抗した。
その時、またも強い突風が吹いた。
反射的に神崎は帽子をつかんで飛ばされないようにすると、今度は姫川のリーゼントが大きく揺れ、ぴょん、とリーゼントから銀色の毛並のウサギの耳が立つ。
「「!!!」」
姫川は素早く神崎に背を向け、懐からポマードを取り出してウサギの耳をリーゼントの中に隠して整えた。
そしてこちらも素知らぬ顔で神崎に向き直る。
「「……………」」
2人の間に気まずい空気が流れたが、目的が同じことが判明する。
「…おめーもか」と神崎。
「…おう」と姫川。
こんな非科学的な事態が起きた場合、大抵男鹿か因幡が関わっているのだ。
突然自分たちの身に起きた変化に、神崎と姫川は自身のウサギの耳を隠しながら因幡の家に向かっていた。
電話をかけても繋がらなかったからだ。
それもそのはず。
因幡は今、
「ハァ、ハァ…、死ぬ…っ」
高熱で寝込んでいた。
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