45:くしゃみをしないでください。
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悪魔野学園との戦いを終え、その早朝、とある屋敷でフユマは鮫島をつれ、1階の廊下の一番奥にある両開きの扉へとやってきた。
廊下側の窓からは眩しい朝陽の光が差し込み、フユマは目を細め、欠伸をする。
「……ふあ…。鮫島ぁ、ここまでだ。ここから先はオレ様一人で行く」
「…わかりました」
頷いた鮫島は、フユマから一歩下がった。
「フユマー」
パーカーのフードを外し、扉に手をかけたとき、不意に背後から声をかけられた。
肩越しに振り返ると、スキップするようにユキがこちらにやってくる。
「ユキ…」
「どっこ行っくのー?」
こちらに近づきながら歌うように尋ね、フユマの前で立ち止まって小首を傾げるユキに、フユマはため息混じりに答える。
「……本邸だ。朝っぱらからジジ様に呼ばれた。…ま、すぐに戻ってこれるだろうけど」
「へぇ、本邸。その扉が開くの、久々に見れるってわけだ。…鮫島使ったほうが早くない?」
そう言って鮫島を指さすと、鮫島は「私の次元転送では侵入不可能な場所なんだ」と答える。
「へえ?」
スキップしながら来たせいか、ユキの仮面が口元の上まで上がっていた。
仮面からはみ出した口元は、皮肉そうな笑みを浮かべ、鮫のようなギザギザの歯を見せている。
「…ユキ」
眉をひそめたフユマは一度ユキと向き合い、ユキが被っている仮面に手を伸ばし、そんな口元を隠すように仮面を下ろした。
「ちゃんと被ってろ」
「……………」
フユマは再びユキに背を向け、扉に両手をかけ、左右の扉を開ける。
扉の向こうの廊下は薄暗く、窓の外は夜のように真っ暗だった。
廊下を灯しているのは、壁に連なるランプのオレンジ色の光だけだ。
扉の向こうの別次元をユキは静かに見据えていた。
「行ってらっしゃいませ、フユマ様」
「おう」
一礼する鮫島に短く返したあと、フユマは扉の向こうへと歩を進めた。
フユマが扉の向こうへ行くと、両サイドの扉が同時に勝手に閉まる。
それを見送った鮫島は、戻ってくるまでそこで待つつもりだ。
「…なんで呼ばれたと思う?」
ユキが尋ねると、鮫島は目を伏せながら答える。
「契約継承の話だろう。…フユマ様はそろそろ荷を下ろすべきだ。これほど長くクロトと契約していた者はいないだろう。ジジ様も焦っているはずだ」
「…クロトは、やっぱりなごちゃんに?」
「なごり様が決めたことだ。都合のいいことに、因幡桃のことを気に入っているようだしな…。これで、ようやく22代目のクロト・シロトの契約者が揃う」
「……………」
ユキは再び扉を見つめて近づき、扉の取っ手に手をかけて引こうとしたが、カギがかけられたかのように動かない。
「扉は招かれた者しか開けられない。残念だったな」
「あ、そ…。つまんないな~」
ユキはそう呟いて鮫島の横を通過し、部屋へと戻って行った。
だがその口には、妙なことを企んでいる笑みを浮かべていた。
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