44:さぁ、合いの手を。
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「神崎、後ろ!!」
因幡は神崎の背後に回り込んだフィフニールの右脚を自身の右脚で防ぐ。
その背後を狙うのは、ビリヤードのキューを振り下ろしたリンドブルムだ。
神崎はすぐに因幡の右肩をつかんで押しのけ、左手の甲でそれを受け止めた。
「てめえこそボーッとすんじゃねえっ!!」
そんな熾烈な戦いを眺めているベヘモット柱師団は唖然としていた。
「な…、何者なんだ、あの人間共は…!?」
「こっちは戦闘部族だぞ…!!」
「なのに…」
「なんで柱爵と渡り合ってるんだ…!!」
「人間をナメてはいけませんよ」
「「「「「!?」」」」」
声をかけたのは、武器である本を取り出したイザベラだ。
「なにかを守りたい、取り戻したいと強く思う彼らは…、時に、悪魔を越えた力を発揮します。私たちも、それを目の当たりにさせられました…」
ページを破き、魔言を発動しようとするイザベラに武器を向ける柱師団だったが、
「こっちも忘れるな」
城山と夏目がその前に叩く。
フィフニールとリンドブルムは、一度因幡と神崎から離れて距離を置き、隣り合って様子を窺った。
「…キリがねえな…。こいつら、ちょっと面倒くせーぞ。互いを補い合ってやがる…」
「あの鎖が強さの源なんだろうけど…、蹴って砕くこともできない…。どうやら…、あのコの意思次第みたいね…」
戦いの最中、フィフニールは戦いを楽しみながら、冷静に因幡と神崎の尻尾を繋ぎ合う鎖を分析していた。
強さの根源はあの鎖にある。
それを固く繋ぎ合っているのが、因幡の意思であることに気付いたのもつい先程だ。
因幡と神崎も、こちらの出方を窺っている。
“ワシの“尾”は、貴様の本来の攻撃性魔力を、意識を飛ばすことなく限界まで引き出すことができる…。遠慮するな、桃矢。存分に暴れろ”
シロトの言葉を合図に、因幡は床を蹴り、フィフニールに詰め寄り、回し蹴りをその顔面に炸裂させようとした。
「っ!」
フィフニールは反射的に後ろに体をそらせてそれを避けるが、鼻先をかすめ、鼻血が垂れる。
「!!」
それを見たリンドブルムも目を剥いて驚いた。
血を流したフィフニールを初めて見た、というように。
口元の笑みが消えたフィフニールは鼻の下をてのひらで拭い、付着した自身の血を見つめ、フ、と笑みを浮かべ、顔を上げて因幡と目を合わせる。
「ねぇ…、調子に乗ってんじゃないわよ?」
「!!」
フィフニールの周りを、淀んだ魔力の空気が漂う。肌が痛むほどの殺気を感じ取った因幡は、後ろに飛んだ。
それに続くように、フィフニールは因幡と神崎の真上にジャンプする。
「なにがペアーダンスよ。私が最も嫌いなダンスを、自慢げに見せつけないでくれる?」
ゴガッ!!!
冷笑を浮かべたフィフニールの高らかに上げた右脚が、天井を破壊した。
「「「「「!!!」」」」」
「っ! あのバカが!」
自分たちを忘れているかのようなフィフニールの行動に、リンドブルムは舌を打ち、瓦礫に巻き込まれないようにその場を離れる。
「よ、避けろ!!」
「ひーっ!!」
ベヘモット柱師団も一旦戦闘を中止して、瓦礫から避難する。
「うっ」
尻餅をついた神崎は、目の前の瓦礫の山にはっと顔を上げた。
「因幡!!!」
壁となってしまった瓦礫の山の向こうには、因幡が取り残されてしまった。
ビリヤード場の半分が埋まってしまったため、生き埋めになったこともあり得る。
天井には大きな穴が空き、そこから月明かりが差し込んでいた。
「仲間の心配してる場合じゃねえぞ」
その声に顔を向けると、コートに付着した土埃を払うリンドブルムがいた。
神崎を見て、不気味な笑みを浮かべる。
「続き、しようぜ?」
神崎の尻尾は生えたままだったが、その先の鎖が千切れていることは、人間である神崎には見えていない。
唯一それが見えているリンドブルムは、今の状況を、勝機ととらえた。
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