43:いっしょに、肩を並べて。
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「ゲーム内容は見ての通り、ビリヤード。そして、代表者同士の直接対決! オレに見事勝てれば、仲間を助ける道が開けるってことだ。で、誰がその重役を担うんだ?」
キューの先端を因幡達に向けると、因幡達は不満そうな顔をしていた。
「ケンカじゃねえのかよ…」と因幡。
「なんか変わった出し物かと思えばビリヤード…」と神崎。
「みんなヒマだよねぇ」と夏目。
「焔王坊っちゃまの趣味です」とイザベラ。
「ビリヤードか…。ルールがまったくわからん」と城山。
「好き勝手言ってるなぁ、子ども達…。オレだって戦いたくて、これでもガマンしてんだ。けど、オレがやったら呆気なく終わっちまうだろ」
それを聞いて因幡と神崎の額に青筋が浮く。
舐められているとわかったからだ。
「因幡、オレが行くぜ」
「おう。泣かしてやれ」
因幡は、「任せた」と神崎の背中を軽く叩く。
神崎は歩きだすと、何本ものキューが立てかけられたそこからゆっくりと自分のキューを選ぶ。
それを目の端で確認しながらメホドはルールについて説明する。
「種目は、ポケット・ビリヤード。簡単に言えば、ボールの番号順に、ポケットっていう、テーブルの隅にある穴に落としてけばいいんだ。交代も知ってるか? ボールがポケットに入らなかったり、順番を間違えたり、当てるためだけのキューボールをポケットに落としたりなどのミスを犯せば、相手に代わる。逆を言えば、相手がミスするまでボールを突いていいってことだ」
「ん。これでいっか」
聞いているのか聞いていないのか、神崎は1本のキューを手にとって軽く振った。
「…ナメた子どもだな」
メホドは引きつった笑みを浮かべたあと、テーブルから少し離れる。
神崎はテーブルに近づき、ビリヤードテーブルの上で三角形に詰めて並べられた15個のボールと、テーブルの隅にある、6つのポケットを観察し、頭の中でイメージトレーニングをした。
「……ま、こんな状態で「どーぞ」って言うのもいじわるだからな…」
すると、メホドは神崎を押しのけてキューを構え、白いキューボールを打つ。
三角形に並べられた15個のボールはバラバラに転がり、テーブルに広がった。
ポケットに入るボールはなく、必然的に神崎と交代になる。
「ほら、1個ずつ打てよ」
挑発的に笑うメホドに、夏目達とともに勝負の行方を見守る因幡は、「はぁ?」と苛立った声を出す。
「あいつ…、まだ順番も決めてねえのに勝手に…!」
「怒らない怒らない。…神崎君なら、大丈夫だよ」
それを耳に入れたメホドは、「はっ」と小声で馬鹿にする。
(なにが「大丈夫」だ。これでこいつが打ち間違えればオレの勝ちだ。なんせ、オレ自身が打ちやすいポジションにボールを持って来たんだか…)
こっ、と軽快な音が鳴り、キューボールが打たれた。
それは1番のボールに当たり、1番のボールは他のボールに当たりながら吸い込まれるようにポケットの中へと入っていった。
「まだだ」と神崎は呟く。
1番にぶつかった4番がテーブルに当たって跳ね返り、また他の2つのボールにぶつかる。
それが何度もヒットの連鎖を起こし、2番、3番、4番…、と次々と順番にポケットの中に入っていった。
次第にメホドの顔が真っ青になっていく。
ボールは残すところ、14番と15番とキューボールだけ。
真っ直ぐポケットへと向かう14番は、動きを止めていたキューボールに当たると、軌道を曲げることなくポケットへと入る。
再び動いたキューボールは、ポケットの手前で留まっている15番に向かった。
「は、入るな…!」
メホドは思わず声を上げたが、それも虚しく、キューボールに当たった15番は、ガコン、とポケットに入る。
残ったのは、キューボール、ただ1つだ。
「馬鹿な…っ。柱師団一ビリヤードの腕に自信があるオレでさえ…、たったのワンショットであんな芸当はできなかったというのに…っ!!」
メホドはその場に膝をつき、ショックを隠しきれずにいた。
他の柱師団も露骨に驚いている様子だ。
神崎の圧倒的な勝利だ。
神崎は真顔でキューを掲げる。
「神崎…っ!」
見事な勝利に、思わず拍手を送りたくなった。
「さすがです!! 神崎さんっ!!」
因幡達が神崎に駆け寄ると、メホドは「待て!!」と声を上げる。
「オレがビリヤードで負けるはずがない…!! もう1度勝負だ!!」
「ふざけんな。どっかの馬鹿ガキじゃあるめーし、男なら潔く負けを認めて、さっさとドア開けろやタコ。今度はてめーの脳天をついてやろうか」
神崎がキューを持ちかえて凄んだとき、メホドの真上の天井にヒビが刻まれた。
ゴシャッ!!
「「「「「!!?」」」」」
突如、天井に大きな穴が空き、フロアが土煙に包まれる。
それが晴れると、ビリヤードテーブル、床、壁が破壊されていた。
そしてそこに立つのは、気絶したメホドを踏みつけて立つフィフニールと、腰まで伸びた長髪の男、フードを被った無精髭の男、片眼鏡をかけた短髪の男だ。
「どーも。リンドブルムってもんだ。玉つき遊びなんてやめにして、オレと殺し合おーぜ」
「フィフニール…って、もう知ってるわね? ねえねぇ、社交ダンス程度には、踊れるようになったの?」
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