42:ただいま修行中です。
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「はぁ、はぁ…っ」
早乙女は、神社で修行をつけてもらおうと学校を出るレッドテイルを見送ったあと、残った因幡と男子組に「修行前の準備運動だ」と言って、グラウンドを100周させていた。
中でも、一番息が上がっているのが、脚力に自信があるはずの因幡だった。
それどころか、神崎達より1周遅れている。
「因幡!! 気合入れて走れ!!」
「わかってんよっ!!」
神崎に怒鳴り返したあと、早くも軋んできた足をムリヤリ前に押し出した。
止まれば、そのまま倒れそうだ。
(んだよ…っ、コレ…! 足…、重…っ!)
その両足首には、黒光りする足輪があった。
グラウンドを走らされる前に、こっそりと早乙女から渡されたものだ。
『足輪(アンクレット)?』
『魔力を制御させる、魔界の一品だ。おまえの魔力は両脚を中心に巡っているから、それを一旦止める。おまえは自分の中の魔力に頼りすぎだ。シロトがいなけりゃ、暴走起こしちまうところが、魔力にいいように振り回されてる証拠だからな。まずは己を鍛えろ。自分のデカい魔力に耐えられる…器になれ』
最後は意味ありげに間を置いて言っていた。
持った時はまったく重くなかった足輪だったが、装着してみれば、ただ立っているだけでも地面に引き摺り込まれそうな重さに驚かされた。
因幡はぐっと歯を噛みしめる。
(コレが、普通の人間の足ってか…!)
足輪がなければ、100周なんてあっという間だというのに。
前を見ると、神崎達の背中がまた遠のいていく。
これでも全力で走っているというのに。
「お先!」
横を通過するのは、男鹿だ。
とてもさっきまで足が折れていた男とは思えない。
ベル坊を背中に載せたまま、風を切るように走っていく。
「く…っ!!」
対抗心を燃やし、因幡はさらに腕を振ってそれに追いつこうとする。
(絶対追いついてやる…!!)
結局、神崎達より10周以上の遅れをとり、そのあと早乙女の地獄のようなメニューに扱かれ、10分の休憩をとる頃には朝になっていた。
部室倉庫の前は死屍累々だ。
城山は壁に手をついて嘔吐し、古市と姫川はうつ伏せに倒れ、神崎は水を求めて地面を這っている。
男鹿はかろうじて立っている状態だ。
因幡も眩しい朝日を見上げるように大の字で仰向けに倒れていた。
両脚は針金できつく縛られるような激痛を訴えていたが、疲労のあまり大袈裟に痛がる余裕さえない。
(死ぬ…っ。これで10分休憩とかアホかあのオッサン…!!)
悪魔と戦う前に命の危機を感じる。
その時、因幡の顔にタオルがかけられた。
「あらあら、女の子がそんな汗だくで…」
「!」
聞き覚えのある声にタオルを避けると、そこには前屈みになってこちらに薄笑みを浮かべた顔で見下ろすコハルがいた。
その隣には桜もいる。
「母さんと、姉貴…!?」
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