41:踊っていただけませんか?
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時刻は午後5時をまわり、窓の外の夕日は沈みつつあった。
教室で各々の席に座って待っているのは、石矢魔の新校舎から戻って来た神崎達だった。
最初に出た時より、石矢魔の生徒が少ない。
アギエルにブッ飛ばされたメンバーがいないからだ。ほとんどが悪魔達に捕まってしまったのだろう。
「大丈夫かな…。因幡ちゃん、酷く落ち込んでたけど…」
「ひとりにしてくれ」。
保健室のベッドに寝かせると、因幡は小さくそう言った。
「ガチでやって負けたんだ…。あいつだって落ち込むだろ」
そう言うのは姫川だ。
「あの女…、バケモノ並に強かったからな…」
神崎はフィフニールとの戦いを思い出しながら呟く。
「今頃、悔しくてめそめそ泣いてるんじゃ…」
「だーれがめそめそ泣いてるって?」
「「「「「!!」」」」」
姫川の言葉を遮るように、因幡が教室に顔を出して足を踏み入れた。
その口にはいつものキャンディーが咥えられている。
「よっ」
軽やかな足取りで神崎の席に近づき、小さく手を上げた。
「もういいのか?」と体を気遣う城山に、因幡は「もう平気だ」と余裕の笑みを向ける。
「本当かよ。吐血してたじゃねーか」
神崎はコブシを軽く因幡の腹に当てる。
「…っ~~~」
ラミアから魔界の薬をもらったが、まだ内部にダメージが残っていたため、因幡は呻き声を漏らしながら腹を抱えてその場に膝をついた。
口に咥えていたキャンディーもぽろりと床に落ちる。
「おまえやっぱ保健室帰れっ!!」
「平気だっつってんだろっ!!」
血と唾を飛ばしながら怒鳴り返す。
「ラミたんっ!!」
そこで花澤が、男鹿と古市とともに教室に入ってきたラミアを見て声を上げ、駆け寄って抱きしめた。
「うぉぉ、なんスかなんスか!! オニ久しぶりっス!! ラミたんラミたんっ。小っちゃくてかあいーっス。学校に何しに来たっスか!? ラミたんなんか元気ないっスね…。あっ!! 泣いたあとが…っ。ロリコン古市になにかされたっスか!! アメなめるっスか!?」
マシンガンのように言ったあと、どこから取り出したのか大きなキャンディーをラミアの口につっこみ、ラミアは「ひはふっへほ」と言葉にならない言葉を発する。
「いや、もうそれ本当かんべんしてください」
未だにロリコン扱いされてしまう古市。
谷村はラミアに近づいて「久しぶり…」と前屈みになってラミアに声をかけ、大森は「由加!! 嫌がってるでしょ。放しなさい」と花澤に注意する。
「あーラミアちゃんだー」と夏目。
「こらガキ、おまえ焔王なんとかしろ!! 色じかけで。あいつ最悪だぞ」と神崎。
焔王とのゲーム対決以来、仲良くなったラミア達。
一方、男鹿と邦枝は魔二津で修行していたため、そのことをあまり知らない。
「…なんか」と男鹿。
「距離近くない…? こんなになかよかったの?」と邦枝。
それを聞いた花澤は、「そーゆー姐さん達はちょっとは近づいたんスか?」と冷やかす。
「なっ、はっ…、はぁっっ!?」
邦枝はわかりやすい反応を返した。
「あの…、みんな本当に焔王(あいつ)の学校にのりこむつもりなの…? だって、絶対勝てるわけないし…」
花澤からもらったアメを両手に、ラミアは不安げに上目遣いで男鹿達に小さくこぼすように言うと、神崎が「フッ」と小さく笑う。
「ナメられたものだな…。ラミ公…」
(ラミ公?)
変わった呼び方に疑問を浮かべる古市。
「男にはなにがなんでもやらなきゃならねー時ってのがあんだよっ!!」
「そうだな…。オレも…、借りを返さねえといけねえヤロウがいるからな…」
他の生徒の席に腰掛けた因幡が言う。
「確かに勝てるかどうかわからない。正直、相手の方が何枚も上手だと思うわ。でもね…、あそこまでやられて黙っていたんじゃ、女がすたるってもんじゃないっっ」
大森が立ち上がって啖呵を切ると、花澤と飛鳥は「うぉぉ寧々さんパネェ!!」「よっ!! 4代目!!」と熱を上げる。
「そうねー…。私もつい受けて立つとか言っちゃったし」
対して、邦枝の反応は薄かった。
「姐さんっ!! かるいっ」
「最初はみんなをまきこみたくないって思ってたけど、ここまで関わっちゃったら、ほっとけないわ。みんなでおじいちゃんに稽古つけてもらいましょう。一週間でなにが出来るかわからないけど」
「姐さん…」
「うぉぉお がぜん燃えてきたっスよ!!」
「やりましょう!! 葵姐さんっ」
レッドテイルも意気込むなか、姫川は口を開く。
「アホかおまえら。根性論なんてどーでもいいんだよ。物理的に戦力足りねーんだ。相手は394人に、ウチの学校のモンまでいんだぞ」
「なんだ姫川、怖じ気づいたのかよ」
現実的な考えな姫川に対し、神崎は嘲笑を向ける。
「あ゛? 人の話聞ーてんのか。せめて東条クラスでもいねーと話になんねーっつってんだ」
「東条さんなら来るっつってたぞ」
そこで教室の奥の窓際にいた相沢がケータイを片手に言った。
その傍には陣野もいる。
「!! まじっスか!!」
必要不可欠な戦力に古市は声を上げる。
「そんなおもしろそーなもん、行かねーわけねーだろ。必ずかけつけるから待ってろってよ。それまで代役頼まれちまった」
「フーン。頼もしいじゃない」と夏目。
「あぁ。東条にこの2人が加われば」と城山。
「ナニをしてイルのですか」
教室の出入口で声をかけたのはアレックスだった。
その傍には同じ六騎聖の榊と郷もいる。
「!! 六騎聖」
教室にいる全員が注目した。
「やれやれ困ったものデスね。また喧嘩の相談ですか?」
呆れたように言いながら、アレックスひとりが教室に入ってくる。
姫川と神崎はそれを睨みつけ、低い声で凄んだ。
「止めたってムダだぜ…?」
「あぁ。今回は退学になろーが」
そこでアレックスが「止める…?」と言葉を遮る。
「カン違いしないでください。止めに来たわけじゃありマセん。Mrオガ」
男鹿に近づいて向かい合わせになると、手を差しだした。
「校長から話は聞きました。我々、六騎聖も協力させていただきます」
「なんせ、おまえら石矢魔にはちゃんと母校帰ってもらわねーといけねーからよ」と郷。
いつの間にいたのか、七海は腕を組んだままドアに背をもたせかけ、「もちろん、三木君と出馬君も来るわ。あの2人、今奈良で修行してるから」と教える。
「奈良…?」
なんだってそんなところに、と神崎は呟く。
古市は思わず笑った。
「ハハッ。まじかよ。なんだこの最強チーム」
石矢魔の主要メンバーだけでなく、六騎聖まで協力してくれるというのだ。
これほど頼もしいことはない。
(つーか誰だっけ?)
「今、つーか誰だっけとか思ってるデショウ」
協力の証である握手を交わしながらも目線を上に上げる男鹿を見て、アレックスはその内心を見透かした。
(―――でも、悪魔と戦うには、まだまだ心もとない…)
それぞれが人並み以上に力はあっても、邦枝はもっと人数が欲しかった。
「さーてと、おまえらー、特別授業を始めるぞー」
そう言って早乙女が教室に入り、教卓の前に立った。
「強くなりたい奴は全員、グラウンドに集合」
突然の早乙女の発言に、「あ?」「なに?」「とくべつ授業…?」と反応する神崎と姫川と古市。
すると男鹿は真っ直ぐに教卓に向かい、早乙女と目を合わせる。
「あいつより強くなれるか?」
「…………さぁな…。だがまぁ、おまえには、死んだ方がマシってくらいの地獄のメニューを用意してやるぜ」
それを聞いて男鹿は不敵な笑みを浮かべた。
「上等!!」
「ダッ!!」
早乙女は再び廊下へと出ようとしたところで、立ち止まる。
「…因幡、おまえの分のメニューもあるが、どうする?」
名指しされた因幡は、一瞬だけ大きく目を見開いたが、すぐに男鹿と同じく不敵な笑みを浮かべた。
「受けるに決まってんだろ」
快い返事を聞いた早乙女はそれからなにも言わず歩きだし、男鹿はそれについていく。
「おいっ!! まてこら男鹿っ!!」
机から下りた因幡と、席を立った神崎と姫川達もそれを追いかける。
.To be continued