39:白と、黒と。
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いい加減同じ景色で退屈してきたユキは、その足音を聞きとり、またフユマが説教をしにきたのだと思ってゆっくりと顔を上げる。
だが、そこに立っていたのは、フユマでも、鮫島でもなかった。
ワカメのような黒の長髪を後ろに束ね、目の下には隈があり、緑のツナギを着た男。
牢屋越しにその人物の口元が嬉しそうに歪む。
「チィーッス!」
「なごちゃん!!」
裏でノーネームを結成し、明智達に魔力を分け与えていた、名護だ。
数ヶ月ぶりの姿に、仮面をつけたユキの顔が明るくなる。
「またやんちゃしたんだって? 懲りねえな。マジ乙」
「なごちゃんがいなくて退屈だったんだよ! 今までどこに…」
「オフ会。すごく長いオフ会だったけど…、なかなか楽しめた」
名護はスマホを取りだし、ノーネームのサイトを開いて操作する。
「リア友できたけど…、またぼっち充だな」
“サイトを削除(デリート)しました”の表示を確認した名護は、寂しそうに呟いてからポケットにスマホをしまった。
「なごちゃんには、ボクがいるんだから必要ないよ」
「そうだな。おまえは特別なダチだ。…ああ、そうだ、オフ会の時、因幡桃にあった」
瞬間、仮面の中の表情が曇った。
「え…。あ」
「なごりぃっっっ!!!」
ゴッ!!
「ぶはぁっ!!」
渾身のコブシが名護の頬にめり込み、ブッ飛ばされた名護は檻に体の前面をぶつけて地面に倒れる。
「なごちゃんっ!!!」
名護を殴ったのは、鮫島を引きつれて地下に下りてきたフユマだった。
たったいま殴りつけたコブシを、まだ殴り足りないのか震わせながら名護を睨みつける。
「なごり、てめー、実の父親には「ただいま」の挨拶もなしかっ!!」
「この…クソ親父…! なんてことしてくれたんだ…! もう2度と、「親父にもぶたれたことないのに!!」って言えねえ体にしてくれやがって!!!」
涙目で訴える名護―――本名、なごり。
「黙れオタク息子!! ユキといいてめーといい、この金喰い虫どもがっ!! 勝手にオレ様の金使って、殺し屋の雇用代とインターネット+携帯代だけでどんだけ払ってると思ってんだ!!」
そのままフユマとなごりはつかみあって揉み合いになる。
「お、落ち着けよ親父っ!」
「うっせ! オレの苦労も知らねえクセに…」
鮫島もそろそろ止めに入ろうかとしたとき、なごりは「知ってる」と静かに言ってフユマを止めた。
「オレ、クロトを継ぐよ、親父」
「「「!!」」」
その場にいた全員が驚いた。
その反応に満足したのか、なごりは「いい反応」と口角をつりあげる。
「なごちゃん…、「継がない」って言ってたじゃん…。「面倒だから」って…」
「ユキ、オレも大人になる時が来たってことだ…。因幡桃に会った。…あの女…、オレの嫁にする」
それを聞いた瞬間、ユキの目の前は真っ白になった。
なごりの言葉も、耳が拒絶しているのか聞こえない。
(桃ちゃんなんて、大嫌いだ。ボクのもの…、全部奪ってく…!!)
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