39:白と、黒と。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鳥籠の部屋から去っていく背中。
彼はそれに手を伸ばす。
『―――っ! ぁ…っ』
掻き切られ、ぼたぼたと血の滴る喉からは声が出なかった。
それでも、その痛みに目に涙を溜めながら、絞り出すように情けのない声を出し、鳥籠の内側から柵越しに手を伸ばし続けた。
(どうして置いてくんだよ…!! コハルちゃん!!)
何度呼び続けても、その背中はこちらに振り返らない。
(コハル―――…)
『姉ちゃん…!』
はっと目が覚めると、目の前には鮫島の顔があった。
その右頬には、赤い横線の傷があり、流血している。
部屋の中も冷え切り、天井や壁、家具には爪痕のような傷跡が無数に散らばるようにあった。
「フユマ様、寝惚けて“チリーブレス(切り刻む吐息)”を発動させないでください」
鮫島は右手の甲で頬の傷から流れる血を拭い、ハンカチで拭いた。
「鮫島…」
意識がはっきりしてきたフユマは、自分の口から漏れる、触れたものを切りつける氷の結晶の混じった冷たい息を、すぐに生温かい息へと切り替える。
身を起こすと、そこは広く真っ白な自室で、アンティークな白いテーブルに伏したまま眠ってしまったようだ。
眠りながら能力を発動させてしまったらしく、起こして止めようとした鮫島は誤って頬を傷つけてしまったらしい。
「………鮫島、オレ様の寝言はすぐに忘れろ」
「ムリ。…ここは冷えるから、温かい部屋へ行きましょう」
「……………」
暖炉のあるリビングで、フユマは鮫島に膝枕されながらソファーに横になり、暖炉の火の温もりに再び眠気を覚えていた。
「鮫島、頭皮マッサージよろしく」
「はい」
フードを外して晒される頭部。
その顔は、コハルの面影があった。
「……また、白の部分が増えてますね…」
鮫島はそっとその髪に触れた。白髪と黒髪の混ざった髪だ。
すべて地毛である。
「シロトは桃ちゃんに受け継がれたんだ。オレ様もそろそろ誰かにクロトを受け継がないと…、命ごと引き剥がされちまう。オレの髪が本来の髪色(白髪)に戻る前に…」
そう言って薄笑みを浮かべ、喉の傷痕を擦る。
「…やはり、ユキにクロトを継がせるべきでは?」
フユマの脳裏に、牢に閉じ込めたままの仮面の少年を思い出す。
「ユキ…。最悪そうなる…が、桃ちゃんと殺し合いになる。それはジジ様が望んでねえ。オレ様は、あの馬鹿に継がせる気だ。…今どこでなにしてるか知らねえけどなっ」
数ヶ月前に行方をくらませてそれっきりだ。
フユマは眉をひそめた。
「その馬鹿なら、すでに帰宅されてますよ」
「………あ!!?」
突然の発言に、フユマは自分の耳を疑った。
.