38:リーゼントとウサギ。
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学校に到着した姫川は、正門から堂々と入り、そのまま石矢魔校舎へ向かう。
(ようやく校舎に着いた…)
ビスケットのおかげで、小さな空腹も満たされている。
「あれ? ウサギ?」
「なんかどっかで見たことあるウサギだな」
振り返ると、登校してきた男鹿と古市がいた。
(男鹿と古市…!)
2人は姫川の前で立ち止まると、物珍しげに見つめる。
「この学校、ウサギ飼ってたっけ?」
「知らねえけど、こいつ、姫川に似てねえか? リーゼントといい、目付きの悪さといい」
「ぎゃははっ、確かに!」
(こいつら…っ)
バカにされているようでムカついた姫川は、元の姿に戻ったらデビルズショック食らわせてやる、と心に誓ってその場をあとにしようとした。
「ダブ」
「?」
男鹿の肩から下りたベル坊が、仁王立ちで姫川の目の前に立ち塞がる。
「…ぶー(どけコラ)」
なんのつもりだ、と睨んでいると、いきなり、もみじのおててで両耳をつかまれ、真上に引っ張られる。
「キ―――!!!(いででででででっっ!!)」
「ダウィー!!」
ベル坊は、新しいオモチャを見つけた。
※生き物は大切に。
「ベル坊!?」
「子どもって小さい生き物に容赦ねえな」
「キー!!(痛いって言ってんだろがっ!!)」
止める気もない2人と、いつまでたっても手を放さず振り回すベル坊に耐え切れず、姫川はベル坊の眉間に躾キックを食らわせた。
「ア゛ヴッ!!」
「ベル坊!!」
ベル坊が手を放した隙に、姫川は地面に着地して一直線に石矢魔の校舎に向かう。
「ビェエエエエエエエッッ!!!」
「「の゛ぉおおおおおおっ!!!」」
その背後では、泣き喚くベル坊の電撃をモロに受ける男鹿と古市。
一難を逃れた姫川は「最近のガキは…」と眉間に青筋を立てながら校舎の中へ入ろうとした。
「……………」
「……………」
そこで出会ってしまった、東条、相沢、陣野の3人組。
出会ってはいけない男に、出会ってしまった。
目と目が合った瞬間、
(ウサちゃん…っっ)
(ヤバ…ッ)
動物の勘から危険を察知した姫川は脱兎のごとく逃げ出した。
それを、動物大好きな東条は、獅子はウサギを追うにも全力を出す、と言葉通り追いかける。
(ヒィィィィィッッッ!!!)
捕まれば喰われてしまう…わけでもないのに、そんな恐怖心が姫川を猛走させた。
聖石矢魔学園中を走り回り、うまく校庭近くの茂みに身を隠して東条を撒いた姫川は、茂みから出るなり、倒れた。
(最悪だ…。なんて日だ…。ウサギの苦労なんざ知りたくもなかった…。因幡達に会っても、オレのことわからなかったらどうしよう…。この姿のままになっちまったら…、こんな…肉球のない手じゃリーゼントも作れないし、アロハシャツも着れねえ…。それ以前に、誰がオレの世話してくれるってんだ…)
真っ暗な先を想像した姫川は、首を横に振ってその考えを飛ばそうとするが、小さな体にその絶望は大きすぎる。
今なら、泣いてもいいじゃないかとさえ思った時だ。
「姫川」
「!!」
はっと振り返ると、そこには天使の羽が生えた(姫川にはそう見えた)因幡が立っていた。
「ぷ―――っ!!(因幡―――っ!!)」
自分のカワイイ鳴き声には気にも留めず、姫川は歓喜のあまり両腕を上げた。
因幡は口元を緩ませると、姫川を抱きあげ、「こんなところにいたのか…」と優しい声色で言う。
「ぷっ。ぷっ。ぷ―――っ。(いくらだ。いくらでオレをこの呪われた姿から解放してくれるんだーっ)」
「―――というわけで、神崎」
くるり、と後ろに振り返った因幡は、後ろにいた神崎の目前に姫川を突きつけた。
神崎、夏目、城山はキョトンとしている。
「この哀れなウサギは、おまえに託す」
「…は?」
「ぷっ!?(はっ!?)」
「オレは急用でちょっと今日はサボるわっ! じゃっ!!」
神崎に姫川を手渡した因幡は、校庭を囲むフェンスに飛び乗り、そのままどこかへと行ってしまった。
「うぉ―――いっ!!」
「ぶ―――っ!!(待てコラアァァア!!)」
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