38:リーゼントとウサギ。
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「影響? 姫川が?」
因幡は寝巻から石矢魔の学ランに着替えながら、部屋の扉の前にいるシロト(右靴)に尋ねる。
帰ってきてからたった2時間しか眠っていないが、姫川と違って真面目に学校に行こうと準備していた。
だがその顔は眠そうだ。
目の下には薄らと隈がある。
“神崎に大量に魔力を貪られておったじゃろう”
「…あー…」
窒息するほど唇を吸われていた姫川の姿を思い出す。
“姫川はおヌシと違ってただの人間じゃ。魔力の半分を持っているといっても、詳しく言うなら“魔力を溜めこむ素”。魔界でもないかぎり、消費した魔力は人間界ではすぐには取り込めん”
「え…と?」
因幡は首を傾げる。
シロトは苛立ちをこめて説明する。
“ケータイにも充電というものが必要じゃろ! ケータイの本体が姫川。そのバッテリーが“魔力を溜めこむ素”。なら、魔力は電気じゃ! 現在姫川は必要以上を神崎に与えてしまって魔力はほぼ皆無の状態…、つまり“皮”の部分を抑えることができん。魔力を持つ者に与えられるか、数日かけて空中に漂う微量な魔力を吸収するしかない”
「…で、姫川は今、どういう状態なわけ?」
着替え終わった因幡はしゃがんでシロトに尋ねる。
““素”があるかぎり、神崎のように魔力を求めて暴れ回ることはないが…”
*****
「おそらく…」とシロトが言葉を続けた、その頃、姫川は洗面所の鏡を見て心の中で奇声を上げていた。
(あ゛ああああああ!!?)
もしその声が発せられれば、隣に住民がいれば壁ドンされるほどの絶叫だ。
鏡には、銀色の毛並に覆われた、ウサギが映っている。
長い耳に挟まれる頭上には、小さなリーゼントが生えるようにあった。
(何コレ!!? 何コレェ―――!!?)
どこからどう見ても愛らしいウサギだ。
(なんだよ、このメルヘンな姿は!! どちらのシルバニ●ファミリー!!?)
パニックになる姫川。
ウサギの手で鏡に触れてみる。
(みんな、知ってるか? ウサギって肉球がないんだぜ?)
ウサギのキメ顔。
現実逃避だということは自覚している。
(そうだ、蓮井に…)
洗面台から飛び下りて着地した姫川はベッドに置いてきたケータイに駆け寄り、蓮井のアドレスを開こうとするが、「いや待て」と思いとどまる。
(声が出ねぇえ…。あといくらなんでも、こんな手じゃメールを打つことも…)
声が発せたとしても、「ぷー」「ぶー」「キー」と鼻を鳴らすように鳴くだけだ。
どうすればいいものかと頭を悩ませ、頭が賢い姫川はすぐに次の手を考え出した。
神崎のシッポ、そして事情を知っている因幡の存在だ。
「…………ぶー(学校行くか)」
どちらも、集まる場所はそこだ。
自分のように、眠いからとズル休みされないことを願う。
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