37:今の友達は、ただそこで…。
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夕日も沈み、因幡はひとり、ふらふらとした足取りで棄見下町と阿利華町を繋ぐ橋を渡っていた。
「あいつら…、オレを置いて行きやがって…」
恨みがましく呟き、棄見下町に残してきた夜叉達のことを思い出した。
リーダーである寿を黒狐に任せたあと、因幡は夜叉の副リーダーを、新生・夜叉のリーダーに任命したのだ。
『まあ、オレもう夜叉じゃないけど、任せたぜ?』
『はい! 正直、因幡さんに戻ってきてほしかったのですが、仕方ありません…。しかし、せめて握手だけでも…』
『あ、ずるいぞリーダー!』
『オレ達も因幡さんと握手したい!!』
『なんだと!? オレなんてサイン求めちゃうもんね!!』
『オレも!!』
『因幡さん! せめてお守りになにか身につけてるものを!!』
『オレは髪の毛を!! せめて1本だけ!!』
『誰だ今キメェこと言ったヤツ!!』
夜叉の憧れの存在である因幡は、そのあともみくちゃにされ、時間を取られている間に、黒狐と男鹿達は帰ってしまったのだった。
橋を渡りきったところで、因幡のケータイが鳴りだした。
「!」
夏目から着信だ。
通話ボタンを押して耳に当てる。
「もしもし、夏目」
“あ、ようやく繋がった。因幡ちゃん達、全然連絡取れなくて心配したよー。オレと城ちゃんもそっちに行こうかって話しあってたとこ”
“神崎さん! 神崎さんは何処にー!?”
夏目の傍にいるのか、城山が喚く声が聞こえる。
「あ…、悪い。メールも返信返せなくて心配かけちまったな…;」
“無事ならいいけど…。そっちの用事は済んだの?”
「ああ。…実はな…」
因幡は棄見下町の出来事をゆっくりと夏目達に説明した。
過去との決着のことも。
“え―――。やっぱりオレ達もそっちに行けばよかった”
肩を落とす夏目が目に浮かんだ。
「あはは。また詳しく説明してやるよ」
“うん。オレ達、駅で待ってるから、ゆっくり帰っておいで。3人で”
途端に、因幡は口を尖らせる。
「それが…、あいつら先に帰りやがって…」
駅が見えて来たところで、因幡は言葉を止めて立ち止まった。
券売機の前で見覚えのある人影を見つけたからだ。
包帯や絆創膏だらけの体を見る通行人に「見てんじゃねえよ」と2人仲良くガン垂れている。
こみ上げてくる感情に因幡は思わずケータイを握りしめ、駆け足になった。
“…因幡ちゃん?”
「ああ…、帰る…。3人で!」
通話を切ると同時に駅に到着し、そこで待っていた神崎と姫川は走り寄る因幡に気付く。
「遅ェぞ、因幡!」
「さっさと石矢魔に帰…」
「「うおあっ!?」」
ジャンプした因幡は2人の首にからみつき、通行人の目も気にせず、その場に3人一緒に倒れた。
そのあと、電車に乗った3人は、因幡、姫川、神崎の順番で座席シートに座り、並んで揺られながら石矢魔へと向かって行った。
途中、疲れに伴い襲ってきた眠気に耐えきれず、3人は真ん中に座る姫川を中心に寄りそい、眠りにつく。
その数時間後、3人は、小さな駅から真っ暗な海を茫然と見渡していた。
潮風に髪がなびき、電車は終電のお知らせを流している。
「………寝過ごした!!!」と頭を抱える因幡。
「だろうなっ!! オレも同じこと思った!!」と半ギレで叫ぶ神崎。
「てめーらのせいで両肩痛いんですけど…。つうか誰だ左肩にヨダレつけたの…。置いて帰ってやろうか…」とケータイを取り出す姫川。
圏外だ。
その頃、夏目と城山は終電の時刻を過ぎても駅で待っていた。
「神崎さん達…、遅いな…。まさか乗り過ごしたとか…。いやいやまさか…;」
「アハハハ。そこのワックで朝まで待ってようか、城ちゃん」
いつもの3人が戻ってくることを信じて。
.To be continued