37:今の友達は、ただそこで…。
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神崎と因幡が決着をつけると同時に、スーパーミルクタイムを使った男鹿も倒したノーネームを漫画のように積み上げ終えた。
そのまま名護の相手をしようとした男鹿だったが、すべてが終わった頃には、名護の姿は消えていた。
そして、ノーネームに埋め込まれていたはずのガラスも。
男鹿はケータイで家に電話をかけ、ヒルダと通話していた。男鹿に顔を寄せ、内容を聴きとろうとする古市。
“魔力のガラス…。その名護という男がすべての元凶か…”
「みたいだ。けど、まんまと逃げられちまった…。…悪魔かははっきりとはわからなかったし…」
“…まあよい。話を聞く限り…、ベヘモットとも関係なさそうだ…。坊っちゃまも無事のようでなにより…。アランドロンを迎えに行かせるからそれで戻ってこい”
古市は、オッサンかぁ、と複雑な顔をする。
アランドロンにあまり頼りたくないのだ。
騒ぎも落ち着き、外の霧も晴れ、半壊したビルの前には、ロープで上半身を両腕ごと縛られた寿と明智が黒狐と夜叉に囲まれていた。
寿は悔しげに歯軋りしていたが、対して明智は開き直ったかのように余裕の笑みを浮かべている。
「煮るなり焼くなり好きにしろよ…」
「エラそうに言ってんじゃねえよ」
肩に鉄パイプを担いだ豊川は低い声で明智を見下ろした。
「どうせもう、オレは紅大蛇を使えない…。あと、貧血気味だ…。で、次はどうする? リンチにするか?」
「お望みとあらば…な…」
豊川は目を細め、鉄パイプを振り上げる。
「やめろ」と一言でそれを止めたのは神崎だ。
「ちょ…、神崎さん、まだ手当てしてるのに…」
副リーダーに手当てしてもらっていた最中だったので、右腕の包帯が中途半端に巻かれてある。
寿は、ふっと笑い、ドラム缶に座って夜叉達から手当てを受けている因幡に顔を向けた。
「…てめーの今のダチ共は甘ちゃんばっかだなぁ。…オレらがこうなって満足か? おい、こっち向けよ、バケモン」
「……………」
因幡は静かに寿に顔を向けて目を合わせ、ドラム缶から立ち上がってゆっくりと寿に近づく。
「勝ったのはてめーだ。どうされようが、腹はくくる。また黒狐の奴らに好き勝手されるくらいなら、てめーに半殺しにされた方がマシだ…。ほら、裏切り者を制裁してみろよ。オレが火傷をつけた時みたいに…」
因幡の本性を全員の目の前でさらけ出そうとしているのだろう、寿は挑発を続けた。
因幡は「…ブッ倒しても、てめーはそのままか…」と落胆したように呟き、右足の爪先を地面にこすりつける。
ゴゴゴン!!
「ぅだっ!!」
「!?」
因幡が足を出す前に、男鹿、神崎、姫川が同時に寿の背中を蹴りつけた。
因幡や周りの人間も突然のことにポカンとしている。
「うるせー」
「マ゛(死ね的な)」
「うぜぇ」
「女々しい」
「ムカつく」
「マ゛マ゛マ゛(地獄に堕ちろ的な)」
「開き直んな」
「コロスぞ」
「ウジ虫」
「マ゛マ゛ダァ(汚すぎて翻訳不可能)」
「ハエ」
「貧民」
男鹿、神崎、姫川はサッカーボールのように寿を転がしながら悪態をつく。
「ちょっ! 痛っ! 痛たぁっ! マジっ! そして酷いっ!」
因幡はいじめのような光景に伸ばした手を彷徨わせ、おそるおそる声をかけた。
「お…、おまえら…、その…、やめてやれ?」
悲惨で見ていられない。
声をかけられた3人は土埃にまみれた寿を見下ろし、不満そうな顔をしながらも解散する。
そこで因幡に近づいてきた姫川と神崎。
「てめーが足汚す必要はねぇ」
神崎が因幡の頭に手を載せ、姫川がそう言った。
「…!」
大きく目を見開く因幡。
そんな3人を見つめる明智。
その目は羨ましげだった。
「―――けど、このままじゃ、オレ達は納得できねーぜ? 因幡、てめーはどうしたいんだ? ノーネームの解散だけじゃ物足りねえ」
豊川にそう言われ、因幡は「わかってる」と豊川に振り返り、不敵な笑みを浮かべる。
「そいつらの処罰は、オレに任せろ」
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