37:今の友達は、ただそこで…。
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紅大蛇で体を何度も打たれた神崎だったが、それでも片膝をつくくらいだ。
「しぶといな…。昔と変わらず、タフだ」
「……………」
黙って目の前の明智を見据えたまま、神崎は口端の血を手の甲で拭った。
「そう…。仲間がナメられたら、上級生どころか中学生相手でも、おまえは何度も立ち上がって立ち上がって殴りかかってったな…。家の奴らに頼ることなく…」
「家は家。オレはオレだ。下の奴らがナメられたら、このオレまでナメられちまうからな…」
「そういう天の邪鬼なところも相変わらずだ」
小さく笑った明智は吸いきったタバコを足下に捨て、足で踏み潰す。
「次は、この1本吸いきる前に終わらせる」
新たに出した1本のタバコを口に咥えた時、神崎が不敵に笑った。
「次なんてねえよ」
「? どういう…。!!」
神崎ばかり意識を集中させていた明智は、背後に近づく気配に気付いた。
「火が欲しいんだろ?」
ようやく復活した姫川は、火の点いたライターで明智の上着に点火した。
「っ!!?」
驚きのあまり、明智の口元からタバコが落ちる。
「安物の服は燃えやすい。ちょっと涼しくなってもらおうか」
「く…っ!」
明智は距離を置いた姫川を睨み、すぐに燃え広がろうとする箇所を手で叩いたが火は消えず、慌てて上着を脱ぎ捨てた。
「「「「「!?」」」」」
さらけ出されたその背中を見て、誰もが驚愕の表情を浮かべた。
背中に埋め込まれた、漆黒の、大きなひし形のガラス。
紅大蛇はそこに繋がっていた。
ガラスは脈を打つように、魔力の光を点滅させている。
「どういう仕組みだよ…」
そう呟いたのは姫川だ。
てっきり、服に仕込まれているのか、体に巻きついているものだと予想していたからだ。
仕組みを理解している名護は「あーあ、種明かししちゃった…」と薄笑みを浮かべながら呟いた。
(紅大蛇の材料は、明智さんの血液…。本来の悪魔の魔力をあそこまで扱える人間は滅多にいない…。普通の人間は、どう対処する?)
明智の背中から生えている紅大蛇は暴れるように床を打ち、神崎、姫川、豊川に襲いかかり、容赦なく鞭打つ。
「うがっ!」
「つっ!!」
「う゛っ!!」
その場に倒れる神崎達に、嘲笑の笑みを浮かべる明智。
「半分人間やめたオレに、勝ち目なんざねーよ、神崎…」
「…っ」
神崎は痛みに歯を噛みしめながらも、立ち上がる。
睨むその鋭い目に、明智は思わず喉を鳴らした。
(…まだ…、立つのか…?)
目の端で神崎達の現状を見た寿は、ナイフを構えたまま因幡を挑発する。
「おまえの仲間、マジで終わったな」
「勝手に終わらすな。…けど、そろそろ終わらせるか…」
「は? カッコつけてんじゃねーよ。状況見て喋れ。苦戦してんのわかってんのか?」
「苦戦? てめーこそ状況見ろよ。あと数秒で、同時に決着つくかもしれねーのに」
「はっ。数秒だ? それはマジかもな。てめーが倒れ、同時にあいつらも倒される…。間違って殺しちまっても、棄見下町(ここ)なら死体も見つからねえ」
寿は右手のナイフを宙で弄び、刃を下にするように構え、因幡に突進する。
「じゃあな!!」
「っ!!」
因幡の顔面目掛け振り下ろされると同時に、因幡は寿に背を向けた。
ブツリ!
因幡の両手首を縛っていた紅大蛇が断ち切られ、因幡の両手に自由が戻る。
「!?」
「ありがとよ」
バキン!!
勢いのいい右脚の回し蹴りが、寿の右手のナイフの柄の下の刃を折った。
「は!!?」
「!!」
蹴り飛ばされた刃の部分は、一直線に明智目掛け飛んでいき、
ビシッ!!
背中のガラスに突き刺さり、ヒビを刻んだ。
「な…!!」
ヒビから魔力が漏れ、紅大蛇が苦しげにのたうちまわる。
因幡と、それを見た姫川は神崎に向かって叫んだ。
「神崎ぃ!!」
「今だ!!」
はっとした神崎は弾かれたように明智に向かって突進する。
気付いた明智は迎え撃とうとするが、紅大蛇が勝手に的を外した。
「く、来るな!!」
(うまく操れない…!!)
「因幡、てめぇ!!」
寿は左手のナイフで反撃しようとしたが、その前に因幡がその左手を蹴り上げた。
弾け飛んだナイフは天井に突き刺さる。
「アンタは昔の方が最強だったよ」
両手を床についた因幡は逆立ちして寿の首を両足で挟んだ。
焦った寿はすぐに両手で外そうとしたが、しっかりと固定されたそれはビクともしない。
「待…っ!!」
「待て…!!」
「「うおおおおおおっ!!!」」
ゴガンッッ!!!
神崎が明智の脳天に踵落としを落としたのと、因幡が寿の頭を金づちのように床に打ちつけたのは、ほぼ同時だった。
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