37:今の友達は、ただそこで…。
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「こいつが今日からオレら“夜叉”の仲間になる、因幡桃だ。噂は知ってるよな? マジで仲良くしてやってくれ」
「…よろしく」
声をかけてきたのは、寿の方だった。
男顔負けのその強さを聞きつけ、他のギャングチームに取られてなるものかと声をかけ、因幡も単独は飽きてきたのかあっさりと勧誘に頷いた。
因幡が仲間に加わったことで、夜叉は勢力を伸ばしていき、夜叉は棄見下町や他の町でも黒狐に並ぶ最強ギャングとして名を馳せていった。
「因幡、ちょっと来てくれるか!?」
「なにがあった? また黒狐か?」
名を成していくごとに、因幡が徐々にメンバーからも信頼されるようになったところで、寿は不安を覚えた。
最近、自分の名前が呼ばれない。
因幡ばかりが頼られている気がする。
「リーダー、ちょっと助けてくる…。行っていいよな? …おい?」
「あ…、ああ。オレも行く」
「なに言ってんだ。アンタがいないと、アジトがガラ空きになっちまう」
「そ、そうだな。じゃあ、ここは任せろ。救出したら連絡してくれ」
「わかった!」
階段を使わず、窓から颯爽と飛びだす因幡。
寿は知っている。
誰もがその姿を眩しげに見つめていたことに。
そして自分も。
他のギャングに取られてしまわないようにと誘ったはずが、いつの間にか自分のチームを取られかけてしまうように感じていた。
それ以来、胸の内の妬みの種は芽生え、黒狐に捕まった頃には蕾にまで成長していた。
豊川のあの命令が、開花するための水となった。
(ああ、そうだ…。こいつは…、邪魔だ…!)
因幡の後ろ首に焼けた鉄パイプを当てた時、罪悪感は確かにスズメの涙だった。
胸の内に咲いた妬みの花は、とても焦げくさい匂いがした。
*****
「因幡…、今はっきりと自覚してる…。オレはあの頃から、てめぇが邪魔くさくて仕方ねえ…。あの事件以来、どんな暗い青春送ってるかと思えば、仲間と楽しく笑い合いやがって…」
「……………」
腕と頬、両脚につけられた切り傷から、血が流れ、足下に垂れる。
「バケモンのクセに、マジ笑いしてんじゃねえよ」
寿は覚えている。
火傷を負わせてすぐ、顔を上げた因幡の両目が真っ赤に染まっていたことに。
それを見たあと、気が付いたら病院のベッドの上だった。
しばらくは悪夢にも苛まれるほどの恐怖を刻みつけられた。
「てめーの本音がそれか…」
因幡は、小さく笑った。
「……………」
男鹿は手助けをしようとしたとき、肩をつかまれた。
目の端に映ったのは、名護の顔だ。
「!」
「KYなことしようとすんな。チート的なてめーにはチート的なザコで遊んでろ」
男鹿は振り返り際にコブシを振るったが、名護は上半身を反らして紙一重でそれをかわし、ポケットからスマホを取り出し、操作した。
画面上の左上端にあるウサギマークのフォルダをタッチして開く。
「魔力をアタッチ(添付)…。…で、“トランスミッション”!!」
スマホを上にかざし、画面をタッチしてメールを送信すると、ノーネームのケータイ・スマホが一斉にメール受信音が鳴った。
途端に、ノーネームの体の一部に埋め込まれたガラスが一層大きくなり、魔力が増す。
「さっきより、手強いぜ」
「!!」
名もないザコキャラにも関わらず、速度は先程より俊足で、男鹿が避けた敵のコブシはコンクリートの壁をも破壊した。
口端からはヨダレを垂らし、視線の焦点は合っていない。
「半分以上意識がブッ飛んでるけど、そんなこと気にしてると…氏ぬぜ?」
「チッ…」
男鹿は楽しげな笑みを浮かべる名護を睨みつけ、懐からミルクの入ったスキットルを取り出し、口に含んだ。
“スーパーミルクタイム 30cc”
まだ修業段階のため、顔に紋様が浮かび上がる。
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