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「「!!?」」
2人が握手をかわす寸前、その場にいる、数十人のノーネームと全員の夜叉が、自分の携えた武器と敵意を明智と寿に向けた。
2人は顔を強張らせ、周りを見る。
「おまえら…!?」と寿。
「どういうつもりだ…?」と明智。
そこで、ノーネーム側にいる、左手に金属バットを持った男が武器を向けたまま寿に近づき、嘲笑の笑みを浮かべた。
「裏切られた気分はどうだ? 最高だろ?」
「お…まえは…!!」
その声を聞いた寿は思わずたじろいだ。
神崎もはっとして顔を上げ、男の顔を見る。
目には黒のサングラス、頭には紫のニット帽を被り、格好も変わっていたので全然気付かなかった。
男は黒のサングラスを外し、懐にしまっていた色眼鏡にかけ直してから神崎を見る。
「いいカッコじゃねえか、神崎」
「姫川…!!」
「オレもいまーす」
遠くの方で声がしたのでそちらに顔を向けると、出入口の前でいつでも逃げる用意をしている、ワックスで髪を立たせた古市がいた。
「古市おまえ、不良のカッコ似合わねえな…」
「率直な感想述べないでくださいよ、神崎先輩」
「おまえら…っ、どうやって…!!?」
寿は動揺を隠せず、姫川に尋ねる。
「てめぇにとっても因縁深い奴らが…、そこにいるだろ」
「!?」
振り返ると、「あはははっ」と高笑いを上げる人物がいた。
「ドッキリカメラ並みのびっくり顔だな! オレもう笑い堪えるの限界だったわ! なぁ、伏見」
「豊川…、遊びじゃ…ない…」
ノーネーム側から現れたのは、細目で、2mを越える巨体を持ち、額に横一線の傷がある男―――伏見と、火傷を隠すために顔の右半分を包帯で巻いた―――豊川。
かつて、因幡達と戦い敗北した“黒狐”だ。
「“黒狐”…だと…!!?」
寿は思わずたじろいだ。
明智も驚いて言葉を失っている。
姫川はしてやったような笑みを浮かべながら口を開いた。
「オレ達が助かったのはそういうことだ。ノーネーム側に黒狐達が潜んでいたのをあらかじめ知っていたからだ。…そこのリーダーとは、オトモダチなんでね」
ノーネームの中に黒狐のメンバーが混じっていたため、姫川と古市は見張り役に選ばれた彼らに救出された。
姫川の言葉を聞いた豊川は不服そうに顔をしかめ、鉄パイプを姫川に向ける。
「はあ? なにがオトモダチだっ。昨日、稲荷さんに「オレ達になにかあったら、助けろ。それで貸し借りはなしだ」とかエラそうに言ってきたクセに!」
因幡達と黒狐との戦いに決着がついたあと、姫川の計らいで、入院中だった黒狐のリーダーである稲荷と、リーダー不在で恐怖で部下達を支配する豊川とそれを苦い思いで支えていた伏見が再会を果たすことができた。
それがきっかけで今の黒狐は、戻って来た稲荷を中心に活動を再開し、ここ数ヶ月で統率のとれたチームになり、勢力を拡大しつつあった。
「豊川…、落ち着け…。実際…、こいつらには…、借りがある…。それに…、ノーネームも…、これで終わりだ…」
「そうそう。よくわかってんじゃねーか、デカブツ」
冷静にまともな意見を口にする伏見に感心する姫川。
豊川は聞こえるように舌打ちし、「わかったよ」と言う。
「おまえらは…」
寿は、同じく武器を向けている夜叉達を睨む。
「ベラベラ喋るもんじゃねえな。電話は使えなくても、録音はできるんだぜ?」
姫川は自分のケータイを取り出し、録音を再生させた。
すると、寿と明智の空き地での会話が流れる。
監禁から解放された姫川は、明智との約束の時間になる前に夜叉達とコンタクトを取り、その録音を聞かせ、作戦を伝えたのだった。
「寿さん…」
「アンタって人は…!!」
裏切られた夜叉達の敵意の目に、寿は「う…」と唸り、たじろぐ。
明智はその肩を叩き、「うろたえんじゃねえ」と声をかけた。
「してやられたぜ。狐まで混ざってるなんてな…」
「目印がガラスだけじゃ抜けてんだよ。そんなもん、100円ショップで簡単に作れる」
豊川がそう言うと、黒狐のひとりが手の甲のガラスを見せつけ、ただのガラス製であることを証明するように指でつまんで外した。
「神崎も、夜叉も、黒狐もオレ達につかねえってんなら…、次がねえようにブッ潰すまでだ」
明智が両手首を振るうと、神崎を縛る紐は外れ、袖から新たな8本の鉤針の紐が飛びだした。
それらは宙でヘビのようにうねる。
「オレの“紅大蛇”でな!!」
「…オレも、マジでやらせてもらう」
諦めたようなため息をついた寿も、2本のジャックナイフを取り出した。
ほぼ同時に動いたのは、その場にいる全員だ。
武器がぶつかり合う音、倒れる音、鈍い音、怒声、呻き声などが混ざり合い、室内に響き渡る。
そんな中、姫川は金属バットで目の前の敵を沈めながら、神崎に走り寄った。
「神崎!」
「う…っ」
体に絡みついた紐をカッターナイフで切ろうとしたが、中に針金が仕込まれているのか断ち切れない。
仕方なく切れ端から徐々に解いていく。
「く…っ!」
「! おまえ、またか!?」
付け根に触れた途端、姫川はそのシッポの膨らみに気付いた。
顔が熱っぽい原因を察し、呆れた顔をする。
キスすれば治る、と言った因幡の言葉を思い出した。
「姫川…」
無自覚だろう、物欲しげに目線を上げる神崎。
姫川は悩ましげに頭を掻き、辺りを見回す。
全員、戦闘に夢中だ。
古市なんて扉の陰に隠れて黒狐側を応援していた。
(確か場所ってどこでもよかったんだっけ?)
姫川は神崎の顔を見つめ、頬、額、首、手の甲と順番に見る。
時間をかけると余計に恥ずかしくなってきた。
「どこにすればいいんだよっ!!!」
「「ぐあっ!!」」
知ってか知らずか、背後から襲おうとした2人のノーネームの顔面に金属バットを食らわせる。
(悩むな!! ここは無難に手だろ!?)
姫川は再び神崎の目の前でしゃがみ、神崎の右手をとって中指にキスした。
すると、神崎はそれを振り払い、両手で姫川の両頬をつかんで引き寄せる。
「足りねえ…っ」
「ん゛っ!?」
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