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7階の部屋に連れて行かれた因幡は手足を拘束されたまま、椅子に縛り付けられていた。
床に転がされているだけでは、窓から逃げだしてしまうかもしれないからだ。
右足には、シロトがおさまっている。
「……神崎を連れてきてくれてありがとな…。シロト…」
シロトが神崎を連れて来てくれなければ、生涯消えない傷を負わされていたことだろう。
因幡は天井を見上げ、呟くように礼を言った。
「それと…、今更かもしれないけど…、酷いこと言っちまって…ごめんな…。…ごめん」
項垂れ、自分の右足におさまっている靴に、頭を下げて謝る。
すると、ため息が聞こえた。
“悪いと思ったら、そうやって素直に謝ればいいのじゃ。愚か者め”
「ああ。ホントだな…」
ようやく口を利いてくれたことにホッと安堵し、苦笑を浮かべる。
“…で、このまま大人しく捕まっているつもりか?”
「まさか。オレがそんなタマに見えるかよ」
“心意気はいいが、神崎の“尾”がまた出現してしまったぞ”
「! マジか!? それ、ヤバいんじゃ…。姫川も捕まったみたいだし…;」
尻の付け根にシッポが生え、魔力の渇きにうなされる神崎を思い浮かべた。
同じく捕まっている本人も、きっとかなり慌てていることだろう。
早く今度はこちらから助けなければと手元を動かすと、シロトは“ああ。ヤバい”と頷くように言って、言葉を継ぐ。
“他の人間共がな”
「ん?」
*****
「おいっ、どうしたんだ?」
「なんでも…ねぇ…っ」
副リーダーは、時間が経つごとに息が荒くなっていく神崎の具合を窺う。
「具合…悪いのか?」
「なんでもねえって…」
神崎は後ろズボンの膨らみを見られまいと仰向けのままだ。
だからと言って、このまま中坊に心配されるのももどかしい。
他の夜叉達も何事かとざわつき始めた。
「…っ」
そんな中、頭に浮かぶのは姫川の顔だ。
喉が渇けば欲するのは飲料のはずなのに。
そして思い出す、秘密の放課後。
すぐに振り払うように首を振った。
(違う…。違うからな!? 別にまたキスしてほしいとか思ってねえし…!)
顔から湯気が立つほど羞恥と渇きの熱で赤くなる神崎。
(―――けど…、このままだと…、オレ…)
燃えるように熱くなる喉と体。目眩までしてきた。
このままだと死ぬかもしれないと悟った神崎は、因幡と違って手首だけ後ろで縛られているのをいいことにゆっくりと立ち上がる。
「お…、おい…」
副リーダーは、おぼつかない足どりで鉄の扉に近づいていく神崎に声をかけるが、神崎は無視して扉まで近づくと外で見張っている見張り達に声をかけた。
「姫川はどこだ?」
「あ?」
扉越しに返事がかえってくる。
「いただろ。リーゼントのヤロウだよ…」
「なんか、明智さんが別のアジトで監禁してるらしいけど? いいから大人しくしてろ!」
明智と一緒にいた時の腰の低さはどこへ行ってしまったのか。
「出せ…っ。出せよ…!」
まずは爪先で鉄の扉を蹴ったが、ビクともするはずがなかった。
見張り達は扉の内側で無駄なあがきをしているくらいにしか思わず、相手にはしない。
「出せ…っ。明智と話をさせろ…。因幡と…、姫川に…っ、会わせろよ…!」
今度は足裏で扉を蹴りだした。
ガン、ガン、と廊下に響き渡る音が次第に大きくなる。
さすがに頭に響くような音には見張り達も黙っているはずがなかった。
「うるせーぞ!! 大人しくしてろ!!」
ガンッ、と見張りのひとりが苛立ちをぶつけるように扉を蹴る。
すると、しん、と静まり返った。
「ったく…。次騒いだらタコ殴りにして…」
再び見張りが背を向けた時だ。
ドガァッ!!
「「ええええええ!!?」」
鉄球でもぶつけられたかのように鉄の扉が吹っ飛び、扉を背にしていた見張り2人が扉の下敷きになった。
「もーいい! 自分で出るからよ!!」
破壊した扉から出て来た神崎は、下敷きになった見張り達を見下ろし、背中で縛られた手首に力を入れ、ブチリッ、と引き千切った。
皮膚が傷ついたが、それほど痛みを感じなかった。
「随分ヤワなドアだな…。プラスチックでできてんのか?」
それぐらいの手応えだったそうだ。
((思いっきり鋼鉄の扉ですが…っ!!))
完全にノビる前に内心でつっこむ見張り2人。
神崎は肩越しに監禁部屋に振り向き、ポカンと口を開いて唖然としている副リーダー達に声をかける。
「外のことが知りてぇなら、オレについてきやがれ!!」
「は…」
「「「「「はい!!」」」」」
*****
廃ビルの中が騒々しくなってきたことに気付いた因幡。
シロトの言う通りなら、神崎が暴れ回っているのだろう。
神崎の持つ“尾”の症状を、人間で言うところの風邪と同じだと思っていた。
“ノーネーム共の体の一部に付着しているガラスと同じだ。あのガラスは魔力の欠片のようなものじゃ…。ワシの一部より劣るがのう。渇きによってナリを潜めていたそれが出てしまえば、たかが人間の手には負えん。喉の潤いを求めて暴れ回るじゃろう”
「ククク…」と笑うシロトは因幡が口を開く前に言葉を続ける。
“しかし、おヌシと違って、普通の人間には負担が大きい。姫川のように魔力の半分を持っていれば制御もできて大人しいものじゃが、早く魔力を与えねば、体が耐えきれず砕けるぞ”
「は…、早く言えよ!! 神崎が強くなってもそんなことになったら…!!」
シャレにならない。
想像しようとしたが、脳内でモザイクがかかる。
「なにがそんなことになるんだ?」
「!」
はっと部屋の扉を見ると、いつの間に入って来たのか名護が背をもたせかけてこちらを見ていた。
「kwsk…教えてくれる?」
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