35:ウソツキを見つけました。
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「マジでやるのか…」
「不服か?」
「そんながわけねえ。これでオレもアンタらの仲間入りだろ? 明日、因幡が途中で逃走したことにして、こっちが大人しく白旗上げりゃ、シナリオは終了。快くノーネームの勢力拡大を手伝わせてもらうぜ。代わりに、逃げた因幡は最悪のレッテルを貼られるわけだろ? くくっ、マジで愉快じゃねーか。これで約束はナシとか言ったらキレるぜ? アンタからもらった“力”で」
「心配すんなよ。声をかけたのはオレだ。因幡を連れてきてくれたことには感謝してんだ。蔑ろにはしねーよ」
「だよなぁ。…で、神崎の方はどうする気だ?」
「ここまでうまくやってくれたんだ。友情の言葉でもかわして大人しく帰ってもらう」
「そこは友達想いなわけ? 個人的に気になってたんだけど、わざわざ神崎に因幡を「止めてくれ」って言ったの…、あれなんで? 本当にこっちに来ないよう止めたらどうする気だったんだ? オレのこともちょっとバラしちまって…。そんなことより因幡が実はとんでもない悪者でって設定づけてそっちの味方にすることできなかったわけ?」
「いや…、その設定は難しくなるほどあいつらが親密になってたからな…。ヘタな虚言で因幡との仲が覆ることはない。だが、オレはあいつの不器用な部分を知ってる。そこを利用してやった」
『こいつ、今日からオレの下僕だから』
いじめっ子にいじめられていた小学の頃、ある日、神崎はわざといじめっ子達の前で明智に暴力を振るい、他のいじめっ子達がどん引いた時、発した言葉だった。
神崎がそう宣言してから、いじめっ子にいじめられることはなかった。
宙を見つめながら過去を思い出した明智は、ふぅ、と煙を吐く。
それを聞いた寿は「くくっ」と笑った。
「6年ぶりだってのによく知ってることで」
「オレの6年ぶりの手紙で来てくれたことで確信したんだ。こいつの歪んだ仲間想いは変わらねぇって…。対しておまえときたら…、平気で昔の仲間を売り渡す。胸は痛まなかったのか?」
非難の言葉だが、タバコの先端を寿に向ける明智の口元は呆れたような笑みを浮かべていた。
寿は再び肩を震わせて笑う。
「そう。昔の仲間「だった」。けど、今はあの石矢魔ですら目でもない最強ギャング“ノーネーム”の仲間入りの方が大切だ。マジで。あいつ、オレとは縁切ったつもりでいやがったが、アンタが神崎を引き入れるっていう先手を打ってくれたおかげで、あいつは来た」
「見事な連携プレイだったな」
「ああ。アンタとならマジでやっていけそうだ」
それを聞いた古市は沸々と湧きあがる怒りに、痛いくらいコブシを握りしめていた。
同じ人間の会話とは思えない。
「とんでもねえ悪党だよ、おまえも。仲間裏切っといて罪悪感もねぇ」
「罪悪感? そりゃあ、1度裏切った時は罪悪感でいっぱいだが…、ふと気付くんだよ。あれは本当にオレが悪かったのか? 本当はあいつに恨みがあったんじゃないか? 楽に考えるようにした。裏切れば仲間から疎遠されるだろうが…、バレなきゃいいんだよ。バレずに裏切る…。この計画がそうだろ? オレは夜叉のリーダーとして下の奴らの身を案じ、泣く泣くアンタの軍門に下る。…泣かせるシナリオだと思わねえか?」
(あいつら…!!)
智将として、ここは気付かれないように逃げて男鹿と合流し、因幡を助けに行くべきかと一瞬考えたが、怒りに震える古市がくだした判断は、傍に落ちてる電子レンジでもぶつけて逃走してやろうということだ。
ガラン!
古市が電子レンジをつかんだ時だった。
なにか大きなものがあの2人の傍に落ちた。
古市はもう一度隙間から明智と寿を窺う。
「「!!」」
2人の中心に、ドラム缶が転がった。
落ちてきた方向を見上げると、ひとり分の人影がそこにあった。
「いい悪党っぷりじゃねーの。惚れこむねえ…」
積まれたドラム缶から飛び下りて着地したのは、姫川だった。
(姫川!?)
「計画は失敗だな。オレにバレちまったんだから…」
「おまえ…、帰ったんじゃ…」
ソファーから立ち上がった寿は、目を見開いて驚いていた。
「頼まれごとされたんだよ。そしたら、まだその頼まれごとも終わってねえのに、因幡が嬉しそうな顔でアジトから飛びだしてくるし、そのあと、悪そうな顔したてめーが出てくるじゃねーの。…なにかあると思って尾行するだろ、普通」
古市がここに来る前から話を聞いた姫川は瞬時に察した。
因幡が偽の手紙でおびき寄せられたことに。
「なんか勝手にベラベラ喋ってくれたおかげで、裏舞台のこともわかったし…」
腰からスタンバトンを取り出し、正面を向いたままそれを横に振るい、ガンッ、と背後のドラム缶を凹ませる。
真剣なその顔のこめかみには、わかりやすいほどくっきりとした青筋が立っていた。
「とりあえず、てめーらのドタマかち割ってスッキリしてから帰るわ」
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