35:ウソツキを見つけました。
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空気の冷たい深夜、古市は町を徘徊するノーネームから身を隠しながら男鹿の行方を追っていた。
「男鹿―――っ」
大声だとノーネームに気付かれてしまうため、小声で呼んでみるが、返事がない。
霧のせいで視界が悪く、時間が経過するごとに苛立ちだけが募っていく。
「ふざけんなよあいつ。勝手にオレのこと巻き込んでおきながら、勝手にオレのこと置いていきやがってっ。寒いっ! 寒いーっ!」
悪態を呟きながら路地を歩いた。
パチンコ店を出たあと、すぐに男鹿に追いつき、因幡をあのままにしていいのかと話している途中で、この濃霧のせいか突然はぐれてしまったのだ。
徘徊すること数時間。
古市はパチンコ店に戻ろうかと考えた。
次の角を左に曲ろうとしたとき、話し声が聞こえ、足を止めた。
「?」
そっと窺うと、話し声はすぐ近くの広い空き地からだ。
不法投棄された粗大ゴミばかり積まれたその場所から、2人分の会話が聞こえた。
忍び足でそこに近づいた古市は、入口まで近づき、まだ相手との距離があるとわかると足を踏み入れ、粗大ゴミの間をゆっくりと通りながら声が聞こえる場所まで近づく。
「最初はハラハラしたが、首尾よく事が運んでるじゃねえか。こっちはわざわざ痛い思いしたり、途中でバレないか危惧してたってのに」
「フン。その時はその時って計画だったが、実際、あの因幡を捕獲することができた。至って順調だ。次はいよいよ…、夜叉を取り込む」
「!」
(因幡先輩が…!?)
大型冷蔵庫とクローゼットの隙間から、古市は、タバコを咥えた明智の顔を確認した。
布地の破れた椅子に座り、足を組んでほくそ笑みながら話している。
こちらには気付いていない様子にホッとしつつ、もうひとりの顔を確認しておきたいと相手の顔が見れる隙間を捜す。
(この声…)
話し相手の声から、相手は神崎や名護ではないことがわかる。
だからといって部下にしては話し方が偉そうだ。
一体誰かと角度をかえてもう一度同じ隙間から窺う。
「!!?」
古市は思わず声を上げそうになり、自分の口を右手で押さえた。
明智の向かい側にいたのは、黒のソファーに座った、寿だ。
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