34:ウソツキは誰ですか?
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ドアに背をもたせかけたまま、因幡は眠っていた。
突然、背後のドアが、ドンドンッ、と強めに叩かれ、目を覚ます。
「!」
跳ねるようにドアから離れ、「誰だ?」と警戒する。
奇襲だろうか。
しかしドアの外は静かだ。
よく耳を澄ませば、夜叉の誰かの呑気ないびきが聞こえる。
因幡がもう一度ドアに向かって「誰だ?」と声をかけると、ドアの下の隙間から紙が出てきた。
そっと近づいて紙を広げてみると、文字とヘタクソな地図が書かれていた。
“話がある 午後9時にココにこい 神崎”
「!」
すぐにドアを開けたが、熟睡している夜叉達しか見当たらなかった。
スタートはパチンコ店からだ。
そこから曲がり角がぐねぐねと書かれ、目印となる店の名前も、“本”、“タバコ”、“パン”など小さい字で省略して書かれていた。
見た限り、ここからそれほど遠くない。
ゴールは、マンションの駐車場。
メモをポケットに突っ込んだ因幡はパチンコ店を飛び出し、他の建物の屋根に飛び移りながら移動する。
「神崎…!」
その口元は嬉しそうに緩んでいた。
きっと神崎なりにあんな冷たいことを言った理由があったのかもしれない。
神崎の口から直接説明してくれるのを期待しながら屋根を走る。
メモ通り、目印も見つけた。
待ち合わせ場所の駐車場が見えてきて、ケータイを開くと画面に映る時刻は8時45分。
余裕だ。
車道に着地し、駐車場に入る。
目の前に建っているマンションは4階建てだが、明かりがひとつも点いていない。
そわそわと待っていると、背後から足音が聞こえた。
「神崎!」
はっと振り返ると同時に、いくつもの釣り針が連なる2本の長い紐が迫って来た。
因幡は反射的に後ろに飛んだが、紐は急にヘビのような俊敏な動きをし、追ってくる。
「な!?」
不意を突かれた因幡の腕と体に1本目の紐が巻きつき、動きを止めた隙に2本目の紐が両足に絡みついた。
「く…っ! うあ!!」
バランスも取れず、よろめき、その場に横に倒れる。
その衝撃で釣り針が肌に食い込み、痛みが走った。
「時間前に来たか…」
「賭けはオレの負けかー。オワタ」
「!!」
首だけを動かして声の聞こえた方を向くと、明智と名護、数人のノーネームがそこにいた。
紐の先を目でたどると、釣り針のない部分は明智の両手首に巻きついていた。
その両手の甲には、他のノーネーム達がつけているのとは違う、黒光りするガラスが埋め込まれてある。
「神崎は…?」
捜すが、姿が見当たらない。
その姿に明智は嘲笑する。
「夜叉共の次にバカな奴だな…。てめーは、まんまと神崎におびき寄せられたってことだ」
「…ウソだ」
「くくっ。収穫だな。行くぞてめーら」
ぐいっと紐を引っ張られ、手酷く引きずられながらアジトに向かう。
釣り針はさらに食いこみ、皮膚を突き破り、そこから流血した。
アスファルトの地面には引きずられた血痕が残り、途中で右足の靴が脱げる。
「ウソだ…っ、信じねえ…っ! 神崎…!! 神崎ぃ―――っ!!」
因幡の悲痛な叫びは夜空にこだました。
.To be continued