34:ウソツキは誰ですか?
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夕方になり、アジトのパチンコ店に戻って来た因幡達。
誰もがうつむき、暗い表情を浮かべていた。
あのあと、神崎が明智を説得し、軍門に降るかどうかは明日に引き延ばしてくれた。
「次はねえ」と最後に明智は宣言していた。
頼りの因幡は戦意喪失していて、それを見た寿は、やむなく夜叉達を引きつれてアジトへと戻って来た。
「明日…」
夜叉のひとりが呟く。
明日、ノーネームに白旗を上げなければ間違いなく夜叉が潰されてしまう。
誰もが絶望していた。
寿は救急箱を持って因幡の傍で、自分と因幡の手当てをする。
因幡の右頬は少し腫れ、口の中も切れていた。
右頬にガーゼを貼られ、手足の擦り傷に絆創膏を貼ったあと、因幡は立ち上がって店の一角に座る男鹿に絆創膏を手渡す。
寿に負わされた鼻の傷にと。
もらった男鹿は「悪いな」と言って自分で浅い傷口に貼り付ける。
それを目の端で確認した寿は椅子から立ち上がり、男鹿に近づいて言った。
「男鹿さん、出てってくれ」
「! おい…」
寿の言葉に、因幡はたしなめようとする。
「アンタが邪魔しなければ勝機はあったんだ…。なのに…」
「男鹿のせいじゃねえよ。オレの問題だ…」
「味方だろ!? アンタは…! せめて、因幡の代わりにあの神崎をブッ飛ばしてくれても…!」
「べつに」
即答する男鹿に、夜叉達は言葉を失った。
投げやりの言い方ではなかった。
「な…」
「オレはあいつらのことを調べに来たんだ。てめーらの味方になった覚えはねーよ。…ってことで、出てくわ」
男鹿はそう言って立ち上がり、あっさりとパチンコ店から出て行った。
続いて、古市も立ち上がり、「し、失礼します」と寿に一礼して男鹿を追いかける。
「オレは帰る」
パチンコ台に背をもたせかけていた姫川も、因幡と寿の横を通過して出て行こうとした。
「姫川…!」
「姫川さん!? アンタまでなにを…!」
姫川は立ち止まり、肩越しに振り返る。
冷めた目をしていた。
「茶番は嫌ぇなんだよ。参戦するのもアホらしくなってきた」
「な…っ」
「オレの予想じゃ、オレがいてもいなくても、夜叉は潰される。ヘンな意地を張らずに諦めることだな。…因幡、おまえも帰ろうぜ」
「……いや、オレは残る」
因幡は首を横に振りながら答える。
「あ、そう。じゃあな」
姫川も、あっさりと出て行ってしまう。
因幡は呼びとめることなく、黙ってその背中を見届けていた。
夜叉達は「なんなんだあいつらは」「ビビって逃げたのか」と悪態をつく。
「因幡…」
寿は不安げに因幡と姫川が出て行った出入口を交互に見たが、因幡は薄笑みを浮かべる。
「大丈夫だ。元々、オレひとりだけがここに戻ってくる予定だったんだから…。寿、今度はちゃんとやる…。仲間も、オレが取り返してやるから」
その言葉を聞いて、寿と夜叉達は安堵する。
仲間が敵側にまわったり、途中であっさりと離脱されたにも関わらず、因幡は見捨てずに自分達の傍にいてくれる。
頼もしいことこの上なかった。
「じゃあ、ちょっと休憩してくる…」
「ああ。明日に備えて、ゆっくり…」
そう言う寿に背を向けたまま手を振り、スタッフルームへと入り、ドアを閉め、電気も点けずにドアに背をもたせかけて座り込んだ。
『とっとと石矢魔に帰れっ!! 2度と関わんな!!』
『てめーらの味方になった覚えはねーよ』
『あ、そう。じゃあな』
頭を巡るのは、気にしまいとしていた仲間の冷たい言葉。
気を紛らわそうとキャンディーを取り出し口に咥えた時、自分のケータイが震えた。
驚いてビクッと体を震わせ、ポケットから取り出してみると、1件のメールを受信したようだ。
送信者は夏目だ。
“そっちはどう? 姫ちゃんと男鹿ちゃんと古市君も休みだったけど もしかして一緒? 因幡ちゃんのことだから きっと神崎君のことで棄見下町に行ったのかなって 城ちゃんも心配してたよ 早く一緒に帰って来てね(^_^)/”
「…今の状態で、このメールはきついなぁ…」
天井を見上げて独り言を漏らし、返す言葉もなくケータイを閉じた因幡は、それを持ったまま手の甲で両目を覆った。
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