03:突然訪問は失礼です。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
女性の家は坂の頂上付近にあり、3階建ての高級住宅だ。
石垣に囲まれ、手入れされた小さな庭もあり、車を入れるための車庫もある。
神崎と姫川は、その家に呼ばれていた。
広々としたリビングの真ん中、2人はテーブルの席に並んで座っていた。
助けた女性はキッチンでコーヒーを淹れている。
「…おいおい、なんでいつのまにか招かれてんだ? オレ達…;」
神崎が小声でそう言い、同じく姫川もワックスでリーゼントを整え直しながら小声で返す。
「「礼がしたいから」っつって、半ば無理矢理引っ張り込まれたんだろうが;」
「礼はいらない」と首を振る2人に対し、女性は「来てくれなきゃ嫌だ」と幼稚な子どものように泣き出してしまった。
傍から見たら、警察を呼ばれかねない。
逃げようとしても、女性は2人の裾をつかんだまま放さなかった。
そして、今に至る。
「今日の集会はムリそうだな…」
姫川は携帯を操作し、集会中止の知らせを部下に送る。
「……豪華な家だな…」
神崎は改めてリビングを見回す。
5人家族なのか、5人分の椅子があった。
テレビは最新の大型。
その目の前にはふかふかのソファーがある。
キッチンも広々としていて使いやすそうだ。
「オレの家ほどじゃねーけどな」
「さりげなく自慢するんじゃねぇ」
すると、女性は2人分のコーヒーを持ってこちらにやってきた。
「神崎君はミルク多め、姫川君は砂糖なしだったわね?」
「「お、おかまいなく;」」
妙な緊張感に、素直に「はい」と答えられなかった。
(この人本当に人妻か? だとしたらいくつだ?)
(オレらとそんな年変わらなくね?)
長く白い髪を後ろに一つに束ねたその女性は、見た目も高校生と言ってもいいくらいに若い。
化粧でそう見えるのかと思えば、化粧の形跡がどこにも見当たらない。
つまりすっぴん。
「あなた達、石矢魔の生徒?」
「そうだけど…」
学ランを着ていなくても、見た目でわかるのだろうか。
姫川が頷くと、女性は怯えるどころか笑顔になり、両手を合わせた。
「ああやっぱり…。うちの娘もそこの生徒なの。もうすぐで学校から帰ってくるはずよ」
((娘、女子高生!!?))
まず驚くべきはそこだ。
「ん? でも、石矢魔の女子っつったら…」
神崎と姫川は不思議そうに互いの顔を見合わせる。
「確か、邦枝と遠征に出かけてるはず…」
今の石矢魔に女子の姿は見当たらない、ほぼ男子校状態だ。
なぜなら、邦枝とともに関東制圧のために遠征に出かけているからだ。
学校から帰ってくるはず、ということは、「学校に行ってる」と親に嘘をついている可能性が高い。
「どうしたの?」
「その…」
姫川は肘で神崎の肘をつつき、続けようとした言葉を止め、耳打ちする。
「やめとけ。これ以上関わるな。オレ達はただ素直にお礼受けて帰りゃいいんだ」
「…………奥さん、どうしたんスか?;」
女性は目を輝かせながら神崎と姫川を見つめていた。
神崎に続き、それを見た姫川もぎょっとする。
女性は「やだ、ごめんなさい」と謝り、赤らんだ頬を両手で覆って隠した。
「いや…、仲がいいなと思って…」
「「誰がこんな奴と!! てめぇ、ハモんな気色悪ィ!!」」
打ち合わせしていたかのような見事なハモりだ。
それを見ている女性はクスクスと笑っている。
「ただいまー」
その時、リビングの扉越しから声が聞こえた。
「あら、帰ってきた」
口喧嘩していた2人はピタリと止まった。
石矢魔で“東邦神姫”の2人を知らない生徒は皆無。
女子なら、相手はおそらく邦枝側だろう。
まさか自分の母親と一緒にコーヒー飲んでるなんて思いもしない。
色々と面倒なことになるのが目に見えている。
慌てる2人のことなど知らず、足音はリビングへと近づき、扉が開けられる。
「母さん? お客さんでも来て…」
目が合った。
「「「!!!?」」」
扉から入ってきたのは、因幡だった。
.