33:友達は選びましょう。
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「絶対行くと思った。それに、てめーが今更昔のことを女々しく引きずるわけがねえと…」と男鹿。
「ダ」とベル坊。
「男鹿、駅に着く前に今すぐ窓から放り出されたいか?」と姫川。
「ババ引いたからってわざと怒らせんな、男鹿」と因幡
「ていうか誰ですか、トランプやろうって言いだしたの。もうすぐでおっかないとこ行くってのに」と古市。
因幡、姫川、男鹿、ベル坊、古市の5人は、現在、快速電車で向かい合わせの座席シートに座り、ババ抜きを繰り返しながら棄見下町に向かっていた。
ちなみに、トランプをやろうと言いだしたのは古市だ。
重い空気に耐えられなかったからだ。
途中で普通電車に乗り換え、姫川は「これならヘリで行った方が早ぇな」と呟く。
平日のおかげか、人はまばらで座席シートは空いていた。
因幡達は並んで座る。
「因幡先輩、昔その町に住んでいたなら、どんなところか教えてくださいよ」
「…いや、オレが住んでたのは、その隣町の阿利華(ありか)町だ。オレの家は棄見下町寄りだったから行きやすかった」
「女の子みたいな名前の町ですね」
「ははっ。だろ? 中学校はいくつかあるが、オレが行ってたとこは、唯一の不良校だった」
因幡の口元は笑っていたが、あまり良い思い出がないのか伏せられた目は寂しげだ。
電車はトンネルを抜け、窓からは都会の風景が広がった。
「ここが阿利華町だ」
石矢魔町に劣らないほどの街並みだ。
「降りるぞ」
「え?」
立ち上がる因幡に、景色に釘づけになっていた古市はキョトンとして見上げる。
「棄見下町に駅はねえからな」
代わりに姫川が答えて立ち上がり、それに続いて男鹿も立ち上がったところで駅に到着し、立ち上がった順に電車を降りて古市もそれに続いた。
「タクシーは?」と姫川。
「使わねえ。運転手が嫌がる」と因幡。
駅の階段をおりながらそんな会話をする2人。
駅が存在しない町。
タクシーが嫌う町。
古市は嫌な予感しかしなかった。
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