03:突然訪問は失礼です。
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道は車一台分の広さで、大きなワゴン車のせいで避ける隙間がない。
2人は、先程のぼってきた道を今度は並んで駆け下りて行く。
止まれば容赦なく轢かれてしまう。
「なんで車が!?;」
神崎は肩越しに迫りくる車を確認する。
「知るか!」
姫川もそう言って同じく車を確認。
「いや―――! 止まらない―――!」
運転席に半泣きの女性が乗っているのが見えた。
バックですべり下りる車に成す術がない様子だ。
「おいあんた! サイドブレーキはどうした!?」
姫川は逃げながら女性に呼びかける。
その声が聞こえた女性は窓から少し顔を出す。
「さ…、サイヤブレーキですか!?」
「なにその悟空ストッパー!!?;」とツッコむ神崎。
「サイドのブレーキだ!! すぐ横についてんだろ!!」と怒鳴る姫川。
「は…、あ、こ、これですね!?」
ウィーン、と運転席の窓が閉まった。
「「窓閉めんなあああああっ!!!」」
どうやら女性は車のことはなにもわかっていないようだ。
閉められた窓の向こうでは本気で泣き始めて本格的に手がつけられない状況だ。
「姫川! なにを思い立って車に乗り込んだんだあの女!」
「オレに聞くな!! とにかくあんな女に轢き殺されてたまるか!」
もうすぐで坂道のスタート地点に戻る。
そうすれば道も左右に分かれて直進バックする車から逃れられるわけだが、そうなると車がこの先に見える電柱かブロック塀に激突し、大破してしまうだろう。
中の女性もただでは済まない。
それを放っておくほど、姫川と神崎は悪ではなかった。
考える。
滑り下りる車は坂道に逆らえず下っているだけだ。
アクセルだって踏まれているわけではない。
走る2人は視線を合わせる。
「おい、姫川、なに考えてる!?」
「かなり気に食わねえが…、神崎、てめぇとおんなじことだ!」
2人はほぼ同時に足を止め、振り返った。
「絶対後ろに体重かけんなよ!?」
「んなマヌケなことするかよ!!」
姫川の言葉に神崎は言い返し、2人は両腕を前に突き出した。
ドンッ、と前から鉄の塊がぶつかり、その衝撃に体が後ろに傾きかけたが耐える。
「「うらあああああ!!」」
車はすぐには止まらず、勢いを徐々に削りながらも下へとくだっていく。
2人は靴底をすり減らしながらも、負けじと車を止めようとした。
ガシャァン!
「きゃあああ!!」
結局、車は下までくだり、電柱にぶつかって止まった。
だが、2人が勢いを殺したおかげで悲惨な激突にならず、そのうえエアバッグの作動もあって女性は無傷で助かった。
サイドミラーで2人を確認していた女性は慌てて車から下り、2人の安否を確認しに車の後ろへと走る。
「だ、大丈夫ですか!?」
2人は無事だった。ブロック塀に背をつけたまま動けずにいる。
「ぎ…、ギリギリじゃねーか;」
「リーゼント潰れた…」
電柱が間にあったおかげで、2人は車に潰されずに済んでいた。
姫川のリーゼントの先端から半分が潰れてしまったが。
「よ…、よかった…」
2人は安堵する女性を見て、若干驚いた顔をする。
車内に乗っている時はわからなかったが、その若い女性の髪は雪のように真っ白だった。
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