31:うちに来ませんか?2
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神崎の家に着いたのは、午後8時過ぎだった。
「「「「おかえりなせぇっ、若っっっ!!!」」」
神崎を迎えるため、ずらりと門から玄関先まで2列に並んだ部下達。
子どもも一般人も泣いて逃げ出すような光景だ。
だが、強面のお兄さん達に慣れている姫川と因幡は怯むことなく、ただただ「やっぱ若だったんだ」と驚いていた。
「肝が据わってんな。普通はビビるだろ」
動じていない2人に、神崎は呆れた表情を見せる。
強面のお兄さん達の道を通り、先に神崎が引き戸を開けて中に入ると、姫川と因幡は「お邪魔しまーす」と普通に上がる。
「おお。廊下長ぇなっ」と因幡。
「驚くとこ違うだろ」と姫川。
「親父は? 出張中か?」
「はい」
「若、お食事は?」
「おう。こいつらの分も用意してやってくれ。あと、先に風呂の用意。着替えもな」
そう言って神崎は背後にいる2人を親指でさした。
「神崎の親父さん見たかったなぁ。似てるのか?」
「それほど」
廊下を歩きながら因幡と神崎はそんな会話を交わす。
「おおっ。庭もデケェーっ」
縁側に出ると、因幡は広大な庭に目を見開いた。
錦鯉が泳ぐ池、古風な音を立てる獅子脅し、池にかかる小さな石橋といった、豪華な老舗旅館にでもいるような感覚を覚える。
「ちなみに、親御さんはオレの家に泊まること…」
「は? 知るはずねーだろ」
途端に機嫌が悪くなる因幡。
「おまえ、なに喧嘩して…。あんなおしとやかな姉ちゃんと…;」
「……………」
桜と面識のある姫川と神崎は、因幡の頬をひっぱたく桜の姿が想像できなかった。
今は桜のことを聞かれるのが嫌なのか、因幡はふくれっ面のまま、つーんと庭の方へ顔を逸らしていた。
神崎の部屋に到着し、中へと入れてもらう。
「広ぇっ!!」
てっきり畳の部屋を想像していた因幡は、洋風で、姫川の部屋と同じくらい広い部屋に驚いた。
ひとりで寝るには充分すぎるベッド、床には虎の毛皮、ソファー、低く長いテーブル、天井からつるされたサンドバッグ、地デジテレビ、非常に充実している。
「おまえもいいとこで暮らしてんじゃねーか。シャレてるし」
姫川は部屋を見回しながら呟く。
「えーと、エロ本は…」
荷物を部屋の隅に置いた因幡は早速とばかりにベッドの下やクローゼットの中を漁りだす。
「ねぇよっ!! 捜すなっ!!」
パンッ、と神崎はその頭を叩く。
その時、ノックが鳴り、扉越しに部下の声が聞こえた。
「若、入浴の準備が…」
「おう。おまえ先に入ってこいよ、因幡。オレらはあとでいいから。着替えもタオルも用意してあるからそのまま行け。場所は外の奴が案内してくれるはずだから」
ここで、レディファーストだ、とは言わない。
「あ、ああ、そりゃ悪いな…」
因幡はお言葉に甘えて立ち上がり、神崎の部屋を出た。
その部屋の前で待っていた顔面傷まみれの部下に「こちらです」と丁寧に案内される。
因幡の足音が遠ざかったのを確認した神崎は、ソファーに座り、ポケットからケータイを取り出した。
その隣に姫川が座り、「かけるのか?」と尋ね、神崎は頷く。
「変に真面目なとこあるよな、おまえって」
「姫川も人のこと言えねえだろが。あっちも心配してるだろし…、オレんちで預ってることだけでも報告しねーと」
アドレス帳を開くと同時に、あちらから電話がかかってきた。
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