30:姉の正体は?
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大鎌を構えた桜と、魔力を纏った棒を構えるピトス。
十字架に磔にされた春樹。
目の前の光景が信じられない因幡。
(確か…、神崎達とゲームして…、殺し屋がきて…、春樹が殺されかかって…、姉貴が………)
混乱しかける頭を整理させる。
「丸腰の子ども相手に、大人2人が武器を片手に殺しにかかってくるとは…」
「はぁん? 私達は赤子だろうが容赦はしませんよぉ? ていぅか…、カーメンはどうなさいました? あなたを殺しにやったはずですか?」
「決まってるじゃない…」
桜が嘲笑を浮かべると、タイミングを見計らったようにエレベーターのドアが開き、桜を除いて全員がそちらに注目した。
「ピ…トス…!」
そこには、寒いわけでもないのに全身を震えさせるカーメンの姿があった。
命乞いをするようにピトスに手を伸ばし、膝から崩れ倒れる。
「カーメン!!」
「彼のようになりたくなければ、引きさがりなさい。3流の殺し屋さん?」
ブチッ、とピトスの額にいくつもの青筋が立った。
仕事は遊び半分でやっていても、自分達の仕事をナメられるのだけは許さない。
ここで大人しく引き下がるピトスではなかった。
「小娘が…、ナメてくれるじゃありませんかぁ!!」
球状の魔力の塊をぶつけようと突進するピトス。
桜は顔面目掛け振るわれた棒を、表情も崩さずヒラリとかわし、ピトスの横を通過して春樹を磔にしている十字架に向け、大鎌を下から振るった。
すると、左斜め一線に振るわれたそれは十字架を通り抜け、十字架は人型に戻ってその場に仰向けに倒れた。
十字架の正体は、顔も隠れる全身黒タイツを履いた女だった。
「う…っ、ぐ…」
「ピュクシス!!」
振り返ってそれを見たピトスは声を上げた。
殺されたかと思ったが、ピュクシスの体には傷一つついていない。
しかし、全身を震わせて悪夢にでもうなされているかのように呻いている。
「あなた…っ、一体…」
ようやく格の違いに気付いたピトスはあとずさり、桜から目を逸らさないようにする。
「私はただの、このコ達の姉よ。……―――っていう設定もここまでね」
因幡を一瞥した桜は諦めたようなため息をつき、右手を横に伸ばして大鎌を構えた。
血痕一滴付着していない、美しい漆黒の三日月の鎌。
「ファントムサイズ。あなた方のような雑草を刈るのにふさわしい代物よ」
大鎌の名を明かし、桜はゆっくりとした歩調でピトスに向かう。
「うぅ…!!」
ピトスは自暴自棄のように棒を振りまわしながら桜へと突進した。
「そんなだから、3流なのよ」
桜の振り下ろされたファントムサイズは、振り回される棒を真っ二つにし、ピトスの腹の中心を貫いた。
「ぐ…っ!!」
食らったピトスはその場にうつ伏せに倒れる。
役目を終えたファントムサイズは、桜が手放すと液化して床に落ちた。
「…し…、死んだのか?」
沈黙に耐えきれず、因幡が倒れたピトス達を見て尋ねる。
桜は振り返り、因幡に近づいて手を差し出した。
「ファントムサイズは、その名の通り、幻影の鎌。斬れはしないけど、悪夢を見せてトラウマを植え付けるの。今頃彼ら、今までのターゲットから折檻されてる悪夢を見てるはず。靴箱の中に偽のラブレター入れられたり、トイレに閉じ込められて出られなくなったり、引き出しの中の教科書が全部数学だったり…」
「しょぼっ!!! あんだけ華麗に倒されて見せられる悪夢が小学生のイジメっっ!!?」
それでも“パンドラ”の3人は悪夢に酷くうなされていた。
因幡の反応に小さく笑った桜を見て、因幡はムッと顔をしかめ、自力で体を起こして立ちあがる。
それでも足下がフラつき、壁に背をもたせかけた。
「……春樹は?」
「見た目ほど大袈裟なことじゃない。母さんの血が入ってるんだから、治りも早いはず…」
コハルのことも知っているようだ。
その言葉から察した因幡は、眉を寄せて桜を目を合わせた。
「悪魔のこと、知ってるのか?」
「ええ」
「母さんとシロトのことも?」
「ええ」
「オレが今シロトと契約してることも?」
「全部ね」
思わず歯を噛みしめた。
「知ってること全部隠して高みの見物か!!?」
それはコハルに対する怒りでもあった。
一瞬、桜の瞳が揺れたのを見逃さない。
「姉貴…、アンタ、一体……」
ドオオオオオン!!!!
カッ、と眩い光に包まれた瞬間、今いる階から上が消し飛んだ。
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