03:突然訪問は失礼です。
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「「あ」」
経緯はひとまず置いといて、下校途中、神崎と姫川は道端でばったりと出会ってしまった。
神崎にとって、そこは普段通らない道だった。
石矢魔高校から遠くもなく、近くもない。辺りはほとんど高級住宅だ。
ばったりと出会った2人はそのまま、若干急な坂道をのぼっていく。
その不機嫌な顔には、よりにもよって一番会いたくない奴に会っちまった、と書いてある。
「なにおまえ、こっちに用事でもあんのかよ?」
最初に質問したのは姫川だった。
神崎は坂道の頂上を見上げながら答える。
「…この先のスーパーに用があるんだよ」
「…ヨーグルッチ?」
「ヨーグルッチ。いちご味が出たらしい。学校の自販じゃ売ってなかった」
「いつもなら腰巾着共に買ってこさせるだろ」
「アホ。この神崎様がいちご味なんてカワイイモン飲むと思われたくねえんだよ。オレだって自分で買いに行くわ」
「オレにはバラしてよかったのか?」
「…!! ……てめーはなんの用なんだよ!?」
くわっと姫川に顔を向けると、姫川はニヤニヤと小馬鹿にするような笑みを浮かべていた。
姫川はこちらを向いた神崎を横目で見ながら答える。
「オレはこの先が集会所だ。手下どもが情報かき集めてオレを待ってる」
「へっ、てめーじゃなくて、てめーの金だろが」
「だろうな。なんだ? めぐんでほしいのか?」
「てめぇんとこと一緒にすんなボケ」
「金さえあればヨーグルッチどころか女も手に入るぜ。モテねーてめぇでもな」
「あぁ!? 金持ち=モテると勘違いしてんじゃねーよ。所詮はニセモンの愛情だろ? てめぇが無一文になったらゴミみたいに捨てられんのがオチだっての」
「バカが。オレだって女に与えてんのは金だけじゃねーぜ。ちゃんとオレなりの優しさってモンをだな…」
「ぶはっ! てめぇに優しさなんてございましたの?(笑)」
「あるね! 買い物袋からこぼれ落ちて転がるオレンジ拾ってやるくらいの優しさがな!」
「そりゃぜひとも見てみてぇな! どんなキザッたらしい顔とキザッたらしい言葉で拾ってやるのかをな! そしてオレは指さして「キザリーゼント」って笑ってやるよ!」
「キザキザ言ってっと刻むぞてめぇ!!」
「んだコラァ? そのフランスパンでどうやって刻むってんだ!? チェンソー仕込んでんのかぁ!?」
ついに立ち止まってその場で睨み合いを始めた2人。
そのまま喧嘩に持ち込まれるかと思われた矢先、
「すみませーん! 誰か、拾ってくださーい!」
坂道の先から女性の声が聞こえた。
その言葉を聞いた姫川は早速自分の優しさを見せつけてやろうと、額に青筋を浮かせたまま口端を吊り上げる。
「ちょうどいい。黙ってそこで見とけ。んで笑え。ちゃんと刻んでやるから」
「おう、早速見せてもらおうか。キザリーゼント」
2人はばっと声が聞こえた方向に振り返り、こちらに転がってくるものに備えた。
そして、仰天した。
坂道を転がってきたのは、いや、坂道をすべり下りてきたのは、オレンジのようなカワイイものではなく、白く大きなワゴン車だった。
バックで人間を轢き殺す勢いで滑りおりてきているのだ。
「「拾えね―――っ!!!」」
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