28:ゲーム開始の時間です。
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昨夜と同じゲーム部屋に入ると、姫川は席でペットボトルの水を飲んでいた。
「全員揃ったな。じゃあ、練習すっから席につけ」
昨日はなかったはずの全員分の席とパソコンが設置されていた。
「―――って、おまえ、これ一人でやったのかよ?」と神崎。
「一晩で?」と因幡。
「増えてる!!」とラミア。
「まさか。人と金はこーやって使うんだよ。一部屋に集まった方が有利だからな」
そう言って姫川がリモコンを取り出して天井に向けて押すと、天井が開き、モニターが下りてきた。
「ちなみに、あっちのサブモニターで全員の動きがチェックできるようになってる」
「基地かっ!!」
遊びでも金を駆使し、徹底していた。
「うーむ…」と神崎。
「これはなんとも…」と夏目。
「スゴイな…」と城山。
「パネェ」と花澤。
「テンション上がってきましたね」と古市。
「大魔王様みたい…」とラミア。
「3時のゲーム開始まで、あと5時間。これが正真正銘のラストチャンスだ。全員、死ぬ気で練習すっぞ」
姫川はそう言って、唯一他の机と向かい合わせになっていない席に着いた。
先程座っていた席に神崎が座る。
「つーか、よく向こうもOKしたよな。昨日、オレ達あんなにコテンパンに負けたによ」
「なんだかんだでむこうも遊び相手が欲しいんだろ?」
そう言い返す姫川に、古市はボソリと「正解」と言って席に着いた。
「アタシもやるの?」
今更ながらラミアが驚いている。
「よーし、ゲームの説明すっぞ。全員起動させろ」
「起動ってなに? どこ押すの?」
基本的なことから大森は躓いていた。
隣に座る谷村が「下の丸いボタンです」と教えている。
(不安だ…)
夏目は静かに思った。
ようやく全員が同じ画面になる。
「あっ…、ついた!! 千秋!! ついたついた!!」
「はしゃぐな大森…」
注意した姫川は説明を続ける。
「ジ・エンド・オブ・ウォー4。俗に言うTPSゲームだな」
「TPS?」
「「Third・Person・Shooter」。三人称視点で銃を持って撃ちあうゲーム…とまぁ、難しい話はすっとばすが、要するに、オレ達11人と向こうの11人がネット上で銃を持ってどんぱちやるわけだ。つっても、向こうは11人もいねぇからな。助っ人を何人か連れてくるらしいが…。このゲームのルールは至ってシンプル。先に全滅した方の負けだ」
画面が切り替わる。
キャラクター選択だ。
「そして、選べるキャラクターは4種類。衛生兵・偵察兵・突撃兵・工兵。それぞれ特技が違うから…ってまぁ、ここも後で説明するから適当に選べ。まずは操作を憶える。5対6に分かれて実践訓練すっぞ」
「え? え? もう!? 私まだ説明書も読んでないんだケド」
早くも焦り出す大森に、姫川は「やりながら憶えろ!!」と厳しく言った。
隣で大森を見る谷村には、普段は毅然としている大森が可愛く思えた。
プレイスタート。
まずは基本的なことから憶えていく。
「まず、移動は左スティック。右スティックで視点変更だ」
「ひ…、左スティック? こ…、これかしら…」
大森が押したのはボタンだった。
すると、大森が操作するキャラがいきなり花澤のキャラに向けて手榴弾を投げた。
「あっ!! ばか、それは手榴弾だろーが!!」
「えっ!? えぇえっ!!」
姫川は怒鳴ったがもう遅い。
味方の陣地で爆発が起きる。
「ぎゃああっ!! ね…、寧々さん!! いきなりなにするんスか!!」
「しっ、知らないわよ!! 私だって…」
「寧々さん、左スティックはこれです」
谷村がわざわざ見せているのに、またもや大森は違うボタンを押した。
「え? こ…、これ?」
谷村のキャラがいきなりサブマシンガンで撃たれた。
「きゃあぁぁぁっっ!!」
「バッ…、バカ、おまえそれは射撃ボタンだろーが!!」
「このゲーム、味方も殺せんだぞ!?」
「そ…、そんなこと言われたって…」
今度は因幡のキャラに向けてバズーカが放たれた。
「ぎゃああっ!! いきなりバズーカ!!?」
「とにかくボタン離してください!! 死にます!!」
「わーっ、もうムリムリっ。誰か代わってー!!」
半泣きになりながらも、大森は容赦なく古市のキャラをチェーンソーで真っ二つにしようとしていた。
「ての゛ぉ゛ぉぉぉぉっ!! それはチェーンソ―――――っ!!! こんどはオレっスかー!!!」
「っていうかもうワザとやってません!?」
「殺人鬼かっ!!!」
味方同士で殺し合いをしているころ、城山は呆れたようにそれを眺めていた。
「…やれやれ、先が思いやられるな…」
「城ちゃん…、コントローラー、それ逆さまだよ…」
「人のこと言えないっスよ…」
そして5時間が経過した。
練習のつもりが、すでに全員へとへとで机に伏せっていた。
「…時間だ…」
「…あぁ。…まぁ、やることはやった。全員準備はいいな?」
大森が「帰りたい、帰りたい」と呟いているのは無視だ。
「よぉしっ!! オンラインにつなぐぞ!!」
チームAは姫川達だ。
対戦するチームBは焔王。
チームBの画面に焔王がログインしてきた。
(―――…来た!!)
“約束通り来てやったぞ。有難く思うがよい。昨日言った通り この勝負 そち達が勝てば 余の居場所を教えてやろう。”
「へっ…、相変わらずえらそーな野郎だ。ボッコボコにしてやらぁな」
偉そうな文を見た神崎は、傍にあったペットボトルの水を口にする。
「神崎、それ、さっき姫川が飲んでた水…」
「桃姉、集中して」
“―――ただし… 余が勝った時には 嬉しさのあまり…
余…超泣くから。”
「ぎゃははっ、知るかっつーの」
笑う神崎だが、事情を知っている者は笑える話ではなかった。
真っ青な顔で口を開ける古市とラミア。
負ければ火の海と知っている者の反応だ。
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