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因幡、姫川、神崎の3人は近場のゲームセンターからあたることにした。
因幡を挟んで歩く2人の顔は不機嫌で、明後日の方向を見たまま一言も喋ろうとしない。
ムリヤリ組ませたとはいえ、因幡にとって居心地の悪いことこの上なかった。
通行人がこちらを見れば道を開けるほどだ。
「……おまえらなぁ…」
ため息をついて半目になり、2人を交互に見る。
(この状態で捜索するのヤだなぁ…)
そう思い、試しに神崎を見つめボソリと呟いてみる。
「……放課後」
「!!」
真っ先に神崎がこちらに顔を向けた。
「…の時間だよな、今日が学校なら…」
「お…、おお、そうだな」
神崎は焦るように答え、挙動不審に目を泳がせた。
予想以上の反応ぶりに、因幡は忍び笑いし、調子に乗りだす。
「姫川、この間貸してくれたCD、よかったぜ。特にあの曲…、“ファーストキス”だっけ?」
ゴッ!
すると、神崎が電柱に顔をぶつけた。
電柱の傍のポリバケツの上で昼寝していたネコもびっくりして逃げる。
「~っ」
わかりやすい反応に、因幡は両手で口を押さえて爆笑を耐えた。
「“ファーストラブ”だ。遊ぶなバカ」
「ふぐっ」
楽しみだした因幡の脳天に、横から強めのチョップを食らわせる姫川。
神崎が右手で顔面を抑えながらこちらに戻ってきたところで、最初のゲームセンターが見えてきた。
「お、まずはあれからだな」
「小せぇところだ」
因幡に続き、姫川がそう言うと、神崎は「行くぞ」と先立って中へと入る。
1階のみのゲームセンター。
店内を隅から隅まで見て回り、緑色の子供を捜す。
「…お。…小せぇ店だけど、最新機ばかりじゃねーか…」
格闘ゲームの対戦台に目を留めた神崎は、通い慣れたゲームセンターより機種が豊富なことに気付き、試しに対戦したくなる。
うずうずとする手を対戦台に伸ばすと、横から現れた姫川の手がその手首をつかんで阻止する。
「集中力ねえ奴だな。そんなの、いつでもできるだろ」
「ちょ…、ちょっと触ってみたくなっただけだ。うるせーな」
子どものようにたしなめられた神崎は、その手を振り払って姫川に背を向けた。
「次行くぞ。因幡はどこだ、因幡は」
まるで逃げ場所を捜すかのように辺りを見回し、因幡を捜す。
それを背後から見つめる姫川は、よほど自分は嫌われているのだと痛感した。
因幡はその光景を、クレーンゲームのケース越しに見ていた。
「もどかしい…。もどかしすぎるぞ、あいつら…っ」
いたたまれない思いを感じ、目の前のケースを指の爪先でカリカリと音を立てて掻いた。
*****
ゲームセンターも4件目にきたところで、因幡達は夏目と城山と出会った。
こちらも近場のゲームセンターばかりあたったが、緑色の髪の子供は見つからなかったらしい。
「あの2人、どうなの?」
先頭を肩を並べて歩く2人に、夏目は隣を歩く因幡に尋ねた。
因幡は眉を寄せ、どうもないと言うように首を横に振る。
「面白い話はあまり聞かせてやれないな…。夏目も気になるのか?」
「当然♪」
即答する夏目に、因幡は肩を落とした。
(どういう意味で気になってんだか…)
「次はあそこか…」
「さすがにあそこはねぇんじゃねーか?」
2人はそんな会話をしながら次のゲームセンターへと向かう。
今度は地下にあるゲームセンターだ。
店の外壁は物騒なラクガキだらけ。
辺りを歩く人間も柄の悪い連中ばかりだ。
「あ、ここ、さっき古市君が入ったの、オレ見たよ」
夏目の言葉を背中で聞き、神崎と姫川は地下へ向かう階段の上から下を見る。
地下の扉が開かれたままだ。
そこから不穏な空気を感じ取った。
「…行くだけ行ってみるか」
そう言って姫川が先に進み、神崎もその後ろに続き、因幡、夏目、城山の順番に階段をおりていく。
扉をくぐると、また階段があった。
下からは大森の声も聞こえ、レッドテイルのメンバーもここにいることがわかった。
ちょうど、このゲームセンターを根城にしているギャング・スカルヘッドともめているところだ。
「おぅいてめぇら、いつまでダラダラやってんだ」
「むこうのゲーセンにもいなかったぜ?」
現れた神崎と姫川に、大森達に凄んでいたスカルヘッドが全員唖然とする。
「おっ。スカルヘッドじゃねーか」
「なんだおまえら、モメてんのか?」
「いや…、ちょっと…」
古市は苦笑して言った。
「か…、神崎と姫川じゃねぇか…」
「ヤベェ…」
「なんだって石矢魔東邦神姫が連れだって…?」
「仲いいのか?」
「しっ…。目ぇ合わせたら殺されっぞ…」
人数的にはスカルヘッドが勝っていたが、突然現れた2人に騒然となる。
リーダーである赤松も冷や汗を浮かべていた。
そして、スカルヘッドは、
「「「「―――…す、すみませんっっっしたぁ―――っ!!!」」」」
全員、土下座。
「おう」
「行くぞ、おまえら」
神崎と姫川は軽く流して次へと向かう。
集合して外へ出た頃には、日はとっぷりと暮れていた。
「―――しかし、こんだけ捜していねーとなると、ちょっと捜し方を変えねーとダメだな」
そう言いだしたのは神崎だ。
「捜し方っスか?」
「なんかねーのか? ゲーム好き以外に手がかりはよ?」
尋ねる神崎に、古市は「どーなのよ?」とラミアにふる。
「うーん…」
ラミアは口元に指を当て、考える仕草をし、思い出しながら言う。
「でも、あとはもう…、ヒルダ姉様のメールにあった…、「ネトゲサイコー」とかいう言葉しか…。てゆーか、ネトゲってなに?」
瞬間、全員の動きが停止した。
((((それだよ…))))
「? え? なに?」
「ゲーセン意味ねーじゃん」
どうりでいくら捜してもゲームセンターにはいないはずだった。
無駄な時間の浪費に嘆く間もなく、姫川は指先でサングラスを上げて言う。
「だったら…、うちに来るか?」
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