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夕方も近くなってきた頃、ゲームセンターを出た因幡達は近くのファミレスに入り、全員が揃うまで待っている間、店の奥の禁煙席でドリンクバーのドリンクを飲んでいた。
しばらくして、花澤のケータイから呼び出した大森と谷村も到着し、見慣れた石矢魔メンバーに目を丸くして驚いていた。
メンバーも集まり、古市が席から立ち上がり、全員の注目を浴びる。
「―――というわけで、今日、皆さんに集まってもらったのは、他でもない。とある人物を手分けして捜し出すためです」
「おいおい、古市…、てめーぶっ殺されてーのか? 勝負の邪魔してまでオレ達をこんなところへ連れてきた、それが理由か?」
姫川は古市を睨み、ドスの利いた声で言った。
使うことはあっても、使われることは気に食わない様子だ。
「―――同感だね。古市君、あんまり調子に乗っちゃダメだよー? キミ、それオレ達をアゴで使おうってわけ?」
「そんなことはどーでもいいのよ!! 葵姐さんはどこなの、葵姐さんは!!」
夏目に続き、大森も言いだす。
まとまりがない集団にくじけず、古市は真摯に言う。
「もちろん皆さんに無関係ではありません。というか、これは石矢魔の沽券に関わる問題です」
「あ?」
ストローを咥えたまま神崎が聞き返す。全員の顔つきも変わった。
古市の隣に座って黙って聞いていたラミアは、慌てた様子で古市の袖を引っ張り、声を潜ませる。
「ちょっと…、大丈夫なの? 適当なこと言って…」
古市も声を潜ませて言い返す。
「しょーがねーだろ!! こうなりゃもう石矢魔全体の問題にするしかねーじゃねーか!! 出たとこ勝負だよ、こんちくしょー!!」
逆に開き直って「はっはー」と言うくらいだ。
勝算はある。
「―――先日、男鹿と邦枝先輩が、何者かによって襲撃を受けました」
「「「「!!」」」」
石矢魔のトップである2人がやられてたと聞いて、全員が驚かないわけがない。
全員の動揺を感じ取った古市は言葉を続ける。
「幸い、2人共無事でしたが、相手は信じられないほど強く、あの男鹿ですら勝つことはできませんでした。そんな奴らが今度は、この石矢魔に本格的に攻めてくるというのです。しかも、近いうちに…。はっきり言ってピンチです」
「ちょっ、ちょっと待って…。それで…、姐さんは…!?」
「力のなさを痛感した2人は、今、とある場所で特訓しているそうです」
「特訓!?」
「はい。魔二津の山奥です。あの2人は必ず成長して帰ってきます。だから…、誰のためでもない!! 石矢魔のために!! お願いします!! 先輩たちはその主謀者を捜すため、協力して欲しいんです!!」
訴え終わった古市は、全員の反応を窺った。
半分が本当で半分がデタラメだ。
苦しいか、全員が動きだすにはまだ足りないか、そう思ったとき、神崎が口を開いた。
「もしかしてそいつら…、妙なコートの制服を着た奴らか…? だったら、オレもやり合ったぜ…。なぁ、パー子」
「…神崎君?」
この時古市は、釣り糸のエサに魚が食いついたような感覚を覚えた。
ふられた花澤は少し慌てて「は…、はいっ」と答える。
「由加…?」
「いや、ウチも偶然見たんスけど、マジ、パネェっスよ!! 奴ら、あの東条先輩もボッコボコにやられてましたから!!」
「―――…前に言ってた奴らのことか…。確かに東条の野郎、ボロボロだったな…」
姫川も食いついてきた。
「どこの学校よ?」
「この辺の奴らじゃねぇ…。たぶん、修学旅行生とかだぜ?「アクマ」がどーとか言ってたけど…」
「アクマ」という単語に、神崎の隣で黙って聞いていた因幡は神崎に目を向けた。
「悪魔ぁ?」
姫川は信じ難そうな声を発した。
「いやでもマジ悪魔的に強かったんスよ!!」と花澤。
「なんにしても、ナメられっぱなしってわけにもいかねーな…」と神崎。
次々と食いつく石矢魔メンバーの様子に、ラミアは古市に感心の眼差しを向ける。
「えぇ…。その名も…、悪魔野学園…!!」
胡散臭いにもほどがある。
ラミアから感心の眼差しが消えた。
因幡も危うく椅子からずり落ちかける。
「悪魔野…」
「学園…」
石矢魔メンバーは一斉に立ち上がった。
「なんて悪そうな名前の学校だ…!!」
「あぁっ!! オレ達がぶっ潰してやんぜ!!」
まさかのトドメとなった。
古市もこんな簡単にかかってくれるとは思わなかったのか、引きつった笑いを浮かべていた。
ファミレスを出たメンバーは古市が提案した通り、手分けして各所のゲームセンターをあたることにした。
古市とラミア、大森と谷村と花澤、夏目と城山と神崎、因幡と姫川…のはずだったが、因幡と姫川が行こうとすると神崎が「待てよ」と呼びとめた。
「因幡、てめーはこっちだ」
「は?」
「あ?」
姫川は「ふざけろ」と睨みをきかす。
「なんだその気持ちの悪ぃ分け方は。2人か3人で手分けして捜すって聞いてなかったのかてめーは」
「ひとりじゃ寂しいのかよ、ぼっちが」
「ああ? かたまってねーとなにもできねークセになに言ってんだ。ぼっちが怖ぇのはてめーの方だろ」
「あ゛!?」
まだ捜索が始まってもないのに喧嘩腰に古市は焦りを見せる。
「ちょ…っ、先輩…」
「もっかいゲーセン戻って勝負つけるか!?」
「望むとこだ!!」
「あ゛――――!! もー!! いい加減にしろてめえらあああっ!!」
奇声にも似た大声を発した因幡は2人の間に入り、左腕は姫川の右腕に絡み、右腕は神崎の左腕に絡んだ。
「こうすれば話は早いだろ!! 行くぞ!!」
「お、おい!」
「勝手に決めんじゃ…、放せよ因幡!」
因幡は2人を引っ張ってムリヤリ組ませ、ゲームセンターを当たることにした。
そんな3人に、古市は「因幡先輩グッジョブ」と尊敬の眼差しを向ける。
城山は「神崎さーん」と寂しく声をかけたが、夏目は諦めたように小さく笑い、「オレ達も行こうか、城ちゃん」と肩を叩いた。
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