27:うちに来ませんか?
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集合場所であるゲーセンへ徒歩で向かい、到着した因幡は自動ドアを抜けて中へと足を踏み入れる。
周囲の機械の音が耳を突き、ゲーセンに通い慣れていない因幡は眉を寄せ、耳が慣れるのを待ってから奥へと進み、神崎達の姿を捜し歩いた。
日曜日なだけに、昼間だというのに人の数も一段と多い。
クレーンゲームのコーナー、プリクラのコーナーは無視して真っ直ぐに神崎達がいそうなメダルゲームコーナーへと向かう。
そこにいなければビデオゲームコーナーと先読みもする。
「お」
メダルコーナーを通る前に、階段の近くで神崎達を発見した。
他に、古市と、犬の人形を胸に抱いたピンク色の髪の少女―――ラミアも一緒だ。
ベンチに座る神崎はヨーグルッチを飲みながら古市の話を聞いている様子だ。
「古市?」
「あ、因幡先輩」
声をかけると、古市はこちらに振り返り、神崎達も視線をやった。
「やっと来たか」
「珍しい組み合わせだな。男鹿もいねーし…。そっちは古市の妹か?」
「こんなキモ市の妹なんておぞましいこと言わないで!」
「お…、おお…」
気に障ったのかラミアに生意気に返され、因幡は思わず仰け反る。
じゃあどういう関係なのかと古市に視線を向けたが、苦笑いしか返されなかった。
「古市が緑色の髪のガキを捜してるってよ」
「緑色?」
思い出したのがベル坊だ。
あの赤ん坊も髪の色は緑色だ。
「それで、どこに…」
促す古市に、心当たりのある神崎は「ついてきな」と立ち上がり、階段を上がっていく。
古市や因幡達もそれに続いた。
「ここんトコ、毎日来てたからな。たぶん、いるんじゃねーかな」
向かった先は、2階のビデオゲームコーナーだ。
「ほら、そこだ。そこの格ゲーの対戦台で…」
「ぐあああああっっ!!」
神崎が指をさしたとき、女とは思えない悲鳴が上がった。
見ると、対戦台を前に悔しげに頭を掻き乱している花澤がいた。
「また負けたぁぁっ!! なんじゃこいつはぁぁ、パネぇぇぇっっ!!」
「……………」
黙ってその光景を見つめる神崎達。
「およっ。神崎先輩」
声をかける前に、花澤は立ちつくす神崎達に気付いた。
神崎は花澤に近づき、問答無用でその頭を右手でつかんで無言の怒りのままに力を入れる。
「パー子…、なんでてめーがオレの城にいんだ? あれか? ファンか? ファンなのか?」
「いやいやいやっ!! 知らねーっスよ!! たまたまっつか、パー子ってなんスか!?」
仕方ないので事情を説明することに。
「緑色のガキ? いやぁ…、見てないっスね…。地球人っスか?」
「省略しすぎだ。なんだ? 緑色のガキって。こえーよ」
つっこむ神崎と、それらを呆れた目で眺める古市。
(ヒマ人ばっかだな、石矢魔…。もう少しで勢ぞろいじゃね?)
「古市、石矢魔がヒマ人の集まりだとか思ってるだろ」
表情で読みとった因幡に、古市はぎくりとし、「いえ…」と首を横に振る。
「ゲーム強いんスか? んー。もしかしてウチが戦ってた相手だったりして。緑色っスかー?」
花澤は向かい側にいる対戦相手に声をかけてみる。
すると、対戦相手はこちらに顔を出した。
「あ? 誰が緑色のガキだ。コロスぞ、てめーら」
缶コーヒーを手に持った、姫川だ。
全員、大口を開けた。
(コンプリ――――トォォォ―――ッ!!!)
古市は心の中で叫んだ。
((なんでいるんだああああああっ!!!))
因幡と神崎も叫んだ。
姫川は神崎を一瞥したあと、因幡と目を合わせた。
(神崎に事情は話したのか?)
「!」
因幡は眉を寄せ、肩をすくませる。
(まだだよ。物事には順序ってのがあってだな…)
(こっちはわざわざ待ってやったってのに…)
(気が早ぇんだよてめーは!!)
ここにいたのはただの偶然ではなさそうだ。
おそらく、神崎の気配をたどってきたのだろう。
姫川はため息をついた。
(役に立たねえ奴だな)
(んだとてめーこのやろー。例の写真バラまかれてぇか)
テレパシーしてる2人を見た神崎は、ムッと表情をしかめ、電波を遮るように2人の間に入って姫川と睨み合い、凄む。
「クソメガネ…。オレ様の城に土足で入ってきてんじゃねえよ…!! ボッコボコにされてぇのか…!?」
「あぁ? やってみろよ。そういや、てめーとの決着はまだつけてなかったよなぁ…?」
(始まった…)
険悪な雰囲気が漂うなか、いつもの光景に安心していいのか残念に思っていいのか、因幡は肩を落とした。
「この際だ…。どっちが上かはっきりさせとこうじゃねぇか」
「おもしれぇ…。いくぜオラァ!!」
「こいやぁぁっ!!」
勢いよく、格闘ゲームで店内対戦を開始した2人。
「ゲームでつけるのかよ」
夏目と城山は神崎の後ろで画面を見守りながら、神崎を応援している。
「因幡先輩」
「!」
少し離れた場所で、ラミアと花澤となにやら話し合っていた古市は因幡に近づいて肩を軽く叩いた。
「ちょっと大事な話があるので、あの2人鎮めてもらえませんか? このまま放っておくと夜まで対戦しそうなので…」
「確かに…」
同意した因幡は、「わかった」と頷き、2人の鎮静に向かう。
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