26:秘密の放課後。
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授業終了5分前。
因幡は未だに戻ってこない2人の空席を先程から何度も窺っていた。
「…帰ってこねえな…。その…接触? したら治るんだろ?」
普段は会っただけでも胸倉をつかみ合う2人だ。
因幡はこの時、2人がバッタリ会うか、2人の手が掠っただけでも治るものだと思っていた。
“ああ。惹きつけ合うものじゃから、互いの居場所がなんとなく察知できる。たとえ“尾”が…神崎と言ったか? 羞恥で隠れていようと“皮”の姫川には壁が透けて見えるようにわかる”
会ってはいる可能性は高い。
神崎も隠れることはできるが逃げることもままならない状態らしい。
「……接触ってのは、一瞬で終わるものなのか」
長く手を握らなければならないのだろうか。
“そうじゃのう…。桃なら接吻にいくらの時間を費やす?”
瞬間、因幡の思考が停止した。
「………シロト、今、なんて? 具体的な接触法をもう1度」
“接吻。姫川は魔力の半分を持っとるから“皮”に馴染んどるが、神崎は違う。たとえるなら、“尾”や“皮”が魚だとすれば、魔力は水じゃ。水がなくては魚が衰弱してしまう。じゃから、与えてやるのじゃよ…”
「……そうか…」
授業が終わり、ベルが鳴った。
早乙女よりも先に因幡はシューズケースを片手に提げ、教室から廊下に出た途端、弾かれるように走りだした。
「それを早く言えよおおおおおっ!!!」
*****
「…マシになったか?」
「ん…」
あれから30分が経過。
2人はまだ密着状態だ。
姫川はいつどかすかタイミングを見計らっていたが、つかめない。シッポを見ると、小刻みに震えていた。
(ホント…どうなってんだこのシッポ…。まさかあのクソ保健医が実験の薬品打ったとか…。マッドドクターっぽかったしな)
知り合いの外科医に頼もうかと考え、どこか惜しむようにそのシッポを手のひらで軽く撫でた。
「っ!!」
すると、神崎ははっと顔を見上げ、姫川を睨んだ。
「てめ…っ、ヘンな触り方すんなって言ってんだろ!」
「感じてんの?」
「キモっ!! アホかっ!!!」
うまくグーが作れなかったので平手で頬を打った。
「痛たっ! てめー、人の上で優雅にくつろいでるクセに…!」
むかっ腹が立った姫川は思いっきりシッポをつかんだ。
「フギャッ!! 殺すぞコラ! 放せっ!」
「その前に、ごめんなさいだろー…が…」
目の前には、至近距離の神崎の顔。
頬は赤らみ、眉は寄せられ、目は涙で滲んでいる。
語尾が弱くなった姫川は、その顔を思わず見つめてしまう。
神崎も何事かと思い、その至近距離にはっと我に帰った。
「な…、なっ、なに見て…」
しようと思えば、一瞬でキスが出来てしまう距離だ。
その時、背後の積み上げられた机の山の、一番上の机が落下してきた。
ゴッ!
姫川の脳天に衝撃が走る。
リーゼントがクッションになってダメージは小さいが、痛いものは痛かった。
しかし、今の姫川は痛がる余裕もなかった。
同じく、神崎もだ。
先程よりも至近距離。
いや、ゼロ距離だ。
2人は目を見開いたまま動かない。
口と口が塞ぎ合っているため、声もでなかった。
「「!!?」」
姫川の頭に直撃した机が、下の階に響くほど大きな音を立てて床に落ちた。
その間、3秒。
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