24:凶暴兎がブチ切れました。
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コハルは懐から万年筆を取り出し、その先端を鮫島に向ける。
「それが、シロトの依代か…!」
「そう」
キャップを取り外すと、中から蛍のような光が飛びだし、ウサギの形となって屋上の端から端ををぐるりと駆ける。
光が駆けた跡には青白い線が浮かび上がる。
「“守り貫く境界線(アイスライン)”」
青白い線は、鮫島とコハルを囲む円になっていた。
鮫島は白衣に手を入れ、10本のメスを取り出し、消した。
消えたメスは四方八方コハルを囲み、一斉に襲いかかる。
「無駄よ」
メスが突き刺さる寸前、突如コハルの体に氷面が現れ、コハルの体を護り、メスは地に落ちる。
「!」
「何度言われようとも、シロトは私の代で終わらせるわ。こんな呪われた宿命を娘に背負わせてたまるものですか…! フユマにもジジ様にも伝えて」
鮫島の足下から氷の柱が生えるが、鮫島はすぐ手前に自身を次元転送させた。
「……これはフユマ様の意思ではない」
次々と繰り出される氷の柱を避け、鮫島は徐々にコハルと距離を詰めていく。
「…大体、娘のことだけで、フユマ様はどうでもいいのか!? あの方は、未だ、おまえに裏切られたことに胸を痛めておられる…!」
鮫島は数年間フユマに仕え、その痛みを負った姿をずっと傍らで見つめていた。
鮫島の訴えに、コハルは目を伏せる。
「……………」
「おまえはもう少し考えるべきだったな。どうして、今更、私達が現れたのかを」
意味深な言葉に、コハルは顔を上げた。
ただの気紛れとは考えなかったが、なにかあるのだ。
20年前に家を飛び出してからすぐに追いかけてこなかったことを不審に思わなかったことはない。
いずれやってくるだろう。
そんな覚悟と恐れはいつも胸の内にあった。
「この技、依代が変わっても、本質は変わらないのだろう?」
「!」
はっと我に返った時には、鮫島は取り出した1本のメスを消さず、そのまま因幡に向けて投げつけた。
「!! ダメ…っ!!」
「…っ!!」
因幡の目の前に氷塊が現れ、因幡をメスから守る。
「そう。欠点は、自分の身と他人の身、どちらかひとつしか守れない…。フユマ様が言った通りだ」
氷塊が崩れ、因幡の目に、コブシを腹に叩きこまれたコハルが映る。
「は…っ」
コハルはその場に崩れるように倒れる。
生身の女の体には、鮫島のコブシは重すぎた。
「母さん!!」
「魔力も格段に上がるから厄介なものだと思っていたが…、娘を連れて来て正解だ。娘を攻撃されそうになれば、盾はそちらにやるしかない」
“コハル…!”
万年筆から飛び出した光・シロトはコハルの周りをまわった。
コハルは万年筆を握りしめて抵抗しようとするが、その手は鮫島の右足に踏まれてしまい、骨を砕かれかねない痛みに顔を歪める。
「う…っ」
「シロトを娘に譲れ」
「嫌…よ…!」
「ならば…」
鮫島は1本のメスを取り出し、コハルの顔面目掛け振り下ろした。
ガキンッ
それを防いだのは、姫川のスタンバトンだ。
「容赦なく傷モンにする気かよ…」
「姫川! そのまま黒っ焦げにしてやれ!!」
現れた2人に、コハルは目を丸くした。
「どうやって…、鍵は…!?」
扉は閉じられたままだ。
「「ヘリで来たに決まってんだろ!!」」
屋上の上空には、姫川のヘリが飛んでいた。
「つうか、なんだここ、寒っ!」
神崎は屋上を包む冷風に自身の肩をつかみ体を震わせた。
先程、コハルが能力を使っていたのだから。
「黒焦げ?」
嘲笑し、鮫島は小首を傾げる。
「こういうことだよ」
姫川はスタンバトンのスイッチを押した。
バチィッ!
「なっ!?」
「うわっ!!」
しかし、電撃は鮫島ではなく、辺りに飛散した。
電撃を次元転送したからだ。
「ひとりで来いと言っておいたのに…」
ため息と同時に、
ドス
鮫島は、姫川の胸の中心にメスを突き立てた。
その場にいた鮫島以外の全員の表情が強張る。
メスを引き抜かれた姫川は、うつ伏せに倒れた。
メスの切っ先には、姫川の血が付着していた。
神崎は急いで姫川のもとへ走り寄り、その肩を揺する。
「おい…、冗談だろ? 返事しろよ!! 姫川ぁ!!」
神崎の絶叫、倒れた姫川、言葉もでないコハル、冷笑を浮かべる鮫島、メスに付着した姫川の血。
「姫…か…」
受け止められない光景が、因幡の目の前に広がっていた。
その時鮫島は、ゾクリと背筋を凍りつかせた。
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