24:凶暴兎がブチ切れました。
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突然現れた姫川に目を見開く鮫島は、殴られた頬を擦り、口の中の血を床に吐き捨てた。
「普通に登場できなかったのか」
「意表を突くのが大好きだからな」
姫川は足下のガラスの破片を踏み、薄笑みを浮かべて鮫島を見下ろした。
神崎はそれに体当たりするように胸倉をつかむ。
「!」
傾きかけた姫川だったが、なんとか支える。
目の前には神崎の怒りで歪んだ顔があった。
「てめー、姫川コノヤロー! 来るならさっさと来やがれ! 危うくオレの唇が…っ!」
思い出しただけでも、鳥肌が立つほどおぞましい。
息がかかるところまで顔を近づけられ、もし姫川が来なければ、とその先を本能が止める。
「……もしかしてオレが来なかったらファーストキス取られてたとか?」
「ファーストだろうがセカンドだろうが、あんなヤローにされるくらいなら、セメントで固めて一生海の中で沈んでやる!!」
発想がヤクザだ。
「ブスよりいいだろう。酷いな」
未だに座ったままの鮫島は神崎の発言に傷つき、ボソリと呟いた。
「桃ちゃん!」
ヘリに寄せてもらい、姫川が割った窓から入ってきたのは、コハル本人だ。
連れてくる前に、春樹は家に置いてきた。
コハルがそう望んだからだ。
「母さん!」
「桃ちゃん、助けにごふっ!!」
抱き合っているように見えた神崎と姫川の姿が視界に入ってしまい、コハルは吐血した。
「すでに死にかけですがっ!!?」
口元をハンカチで拭いたコハルは、ようやく立ち上がった鮫島と向かい合う。
「…あら、どこかで見た顔ね」
「はぁ…。御褒美をもらってから役目を遂行するのが悪魔というものだが、お預けだな」
鮫島は白衣の懐に右手を忍ばせ、5本のメスの束を取り出した。
凶器に構える、姫川、神崎、コハル。
「さあ、どこに消えたでしょう?」
鮫島が手を放すと、握られていたメスがフッと消えた。
「!?」
「! 母さん! 上!!」
気付いた因幡が怒鳴り、上を見るよりも早くコハルは後ろに飛び退いた。
床に5本のメスが突き刺さる。
飛び退いてなければまともに食らっていただろう。
「ここは場所が悪い。屋上で待っている。…コハルひとりで来てもらおうか」
鮫島は因幡に駆け寄り、左手でその肩を触り、右手を己の胸に当て、姿を消した。
「消えた!?」
「屋上って言ってたな!」
神崎と姫川はあとを追いかけようとするが、コハルは2人の前に立ちふさがる。
「待って。彼は私ひとりだけ来てほしいそうよ。…あなた達はすぐにここを出て、警察を呼んで」
「ふざけるなよ!? 生徒誘拐したり、監禁したり、セクハラ行為したり、妙な手品使ったりする奴だぞ! まともじゃねえ! 悪いが、「はいそうですか」って行かせるわけにはいかねぇんだ」
「素直に聞いたら、因幡がキレるからな」
姫川に続き、神崎も言った。
「…嬉しいけど…、お願い…」
できれば、巻き込みたくもない。
因幡だけじゃない、こうして愛娘の身を案じてくれている神崎と姫川も。
2人は引き下がる様子はない。
ため息をついたコハルは、「…わかった」と一言。
「ただし、最初は私だけ出て行くから」
その条件で、3人は屋上へ向かう階段を上った。
屋上は4階。
扉の前に到着し、最初にコハルが扉を開けて屋上に足を踏み入れた。
ひとりで来たと見せかけるように、コハルは一度出て扉を閉める。
神崎と姫川は少しして、扉を半分だけ開けて様子を見ようとした。
だが、
「「!?」」
扉はまったく開かなかった。
どんなにノブをまわしても、押しても引いてもビクともしない。
「しまった…!!」
姫川は扉を殴った。
コハルは一度出て、外側から鍵をかけ、そのうえ、能力で扉の隙間を凍りつかせたからだ。
「…娘を返して」
コハルは背後で扉を叩く音を聞きながら、こちらに体を向ける鮫島を睨んだ。
普段では見たことがない母親の顔つきを、因幡は鮫島の背後から見ていた。
「…その前に契約を…」
「返しなさいっ!!!」
屋上に響き渡るほどの怒鳴り声を出すと同時に、コハルの瞳が赤く染まり、周囲の空気が殺気立つ。
その姿に、娘である因幡も戦慄した。
「母さん…?」
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