22:試合開始の時間です。
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1セット目、姫川の案でベル坊を使った頭脳プレーで優勢に立てた石矢魔だったが、出馬の人間離れしたサーブで逆転され、1セット目は六騎聖にとられてしまった。
出馬のサーブを受け続けていた邦枝の両腕は赤く腫れ、試合に出れる状態ではなかった。
「…つぅ…」
「あーあー、すげぇ赤くなっちゃってるね。大丈夫?」
夏目は水を飲み、邦枝に言った。
「ええ…」
「あのクソメガネ…、なんちゅーサーブ打ちやがる」
姫川は流し目で出馬を見る。
「皆さん、タオルどうぞっ」
「おう…。って、おまえ…」
神崎は目を丸くした。
タオルを配っているのは、因幡の弟の春樹だ。
いつの間にいたのか。
「誰?」
「因幡弟」
邦枝の問いに、姫川が答える。
「おふくろの代わりに応援に来ました! 神崎さんっ、ここから巻き返していきましょう!」
春樹は目を輝かせ、神崎に言った。
「お…、おう、当たり前だろ」
「モテるねー。神崎君」
困惑しながら答える神崎に、夏目はニヤニヤしながら言った。
「誰がモテるって…」
「やぁ。足の調子はどうだい?」
「うぉっ!!」
夏目を睨むと、突然背後から鮫島が現れ、神崎はすぐ傍にいた春樹を盾にして隠れる。
姫川は露骨に敵意の目を向けた。
「またてめーかよ」
「おいおい、そんな顔をするな。私は石矢魔チームの応援をしにきただけだ。そんな目を向けられる覚えはないはずだが?」
「誰もそんなこと頼んでねーよ」
「神崎さん、このいけすかねーヤローは誰ですか?」
鮫島からなにかを感じ取ったのか、春樹は指をさして尋ねる。
神崎は「保健医の鮫島だ。いつも無意味に絡んできやがる」と困惑した顔で答えた。
鮫島は春樹をじっと見つめたあと、フ、と笑みを浮かべて神崎に言う。
「神崎君、私が絡むのはすべて意味あることだ」
そう言われた神崎は、ゾッ、と悪寒を感じた。
「神崎のことをどうしたいのか知ったこっちゃねえが、そうやって神崎にちょっかい出すんじゃねえよ。またこれから試合だ。差し障ったらどう責任とるつもりだ?」
「応援だと言っているだろ。キミこそ、神崎君のなんなんなのかは知らないが、というか知りたくもないが、精々、足を引っ張らないように頑張ることだな。先程の最低なブロックもないことを願う」
2人は向かい合い、口元に笑みを貼りつけながら睨み合う。
「あ゛? てめーに試合のこと、とやかく言われる筋合いはねえんだよ。すっこんでろ。オレの視界に入ってくるな。とっとと消えろ。すぐに消えろ」
「キミが勝手に私を視界に入れてるだけだろ。よほど神崎君に絡まれるのが嫌らしいな」
邦枝は「ちょっと、やめなさいよ」と止めようとするが、どちらかが止まった方が負けだと思っているのか、2人は譲らない。
「神崎は関係ねえよ。てめーのことが、徹底的に、超絶に、最高に気に食わねえだけだ。この変態保健医」
「世間一般ではそれを嫉妬というんだよ。自覚がないのか? 哀れだ。哀れすぎて見ていられない」
「嫉妬って字をもっぺん辞書で引いてから出直してこいや。見ていられないなら目ん玉外して丸めたアルミホイルでも詰めとけ」
「口の減らない奴だな。そのリーゼント、すっぱり切ってフランスパンでもくくりつけたらどうだ」
「赤毛がお好みらしいな。顔面真っ赤に血染めして前か後ろか判別できなくしてやろうか」
鮫島の右手の指が、パキッ、と音を立てる。
ここで殺意のままに目の前の姫川を殺そうかと考えたとき、背筋にナイフが突き刺さるような感覚を覚えた。
「―――!!」
振り返ると、2階のギャラリーからこちらを窺う、黒のパーカーを着たフードを被った男と目が合った。
(ここで手を出すなってことだろ。わかってんですよ)
内心で舌を打ち、鮫島はニコリと姫川に笑みを浮かべた。
「!」
不意打ちを食らったかのように、姫川は思わず一歩たじろぐ。
「それだけ減らず口が叩けるなら、試合に勝ってみるがいい。キミ達の退学を望まないのは私だけではない…」
意味ありげにそう言うと、鮫島は背を向けて行ってしまった。
「……あいつ…、スゲー嫌な感じ…」
その背中を見届ける春樹は呟く。
あの品定めをするような目が脳裏に焼きついて離れない。
「譲らないねー、姫ちゃん」
「……なにニヤついてんだよっ」
「…………」
「神崎もなんて顔してんだっ! 大体てめーが奴にはっきり言わねえから…」
照れが移ってしまい、姫川の顔も赤くなる。
(因幡ちゃんにも見せたかったなー、この光景。そういえば、どこ行ったんだろ…)
先程までベンチにいたのに、と夏目はきょろきょろと辺りを見回した。
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