22:試合開始の時間です。
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体育館内は一時的に静かになり、出入口に注目する。
「応援が気合いで負けてどーする!! 声を出せ!! 石矢魔根性の見せどころだぞっっ!!」
現れたのは、城山だ。
頭に包帯を巻いたまま丈の長い学ランを着、“必勝!! 石矢魔”と書かれたタスキを身に付け、左手には“とべ!! 神崎”と大きく書かれた旗が握られていた。
その背後には、同じく学ランを着た真田兄弟や他の石矢魔生徒もいる。
「城山…!」
「あいつ…」
姫川に続き、神崎が驚きの声を漏らす。
「生きていたのか」
勝手に殺したような発言をする男鹿。
「おおおっ、なんだ、あいつ!!」
「応援団!?」
「デケェッ!!!」
聖石矢魔生徒達も驚いて声を上げた。
「城山先輩!!」
「もう大丈夫なんスか!?」
城山のもとに、花澤と飛鳥が駆け寄った。
「あぁ。話は聞いたぞ。この一大事にオレだけ寝てるわけにもいくまい。安心しろっ!! この城山、命尽きるまで応援するぞ!!」
ブシュッ
同時に、頭の包帯の隙間から血が吹き出す。
「いやっ、血出てます、出てます!! 帰ってくださいっ!!」
「セリフがリアルで怖いっス!!」
すると、出入口から次々に医師と看護師達が現れ、城山を取り押さえた。
「むっ!? なんだアンタら!! 放せーっ!!」
「いいから!! 次勝手に抜けだしたら殺すぞっ!! ったく」
「先生!! 血が止まりませんが!!」
「鎮静剤ブチこんどけ」
例のゴツい看護師が城山を卍固めで押さえつけ、その隙に他の看護師が鎮静剤を打った。
「おぉーっと、医者と看護師だーっ!! なにやら物騒だぞー」
「……………」
神崎達は黙ってその様子を眺めていた。
「オレは応援すゆんだー…」
鎮静剤が効いてきて、ろれつが回らなくなっても城山は抵抗し続けたが、ゴツい看護師に肩に担がれ、退場。
因幡は追いかけ、真田兄弟達とともに体育館の玄関まで見送った。
「因幡…、コレを…」
城山は意識を朦朧とさせ、タスキを因幡に渡し、医師達とともに救急車に乗って行ってしまう。
「……………」
床に落ちた旗と、受け取ったタスキを見下ろし、ため息をつく。
「まだ完治してねーのに、ムチャしやがって…」
「傍で見てるくらいなら、城山を継いでおまえが応援したらどうだ?」
真田弟から、丈の長い学ランを渡された。
因幡は想像する。
学ランを着て、旗を振りまわしながら応援している自分の姿を。
「応援団か…」
因幡は出入口に振り返り、始まったばかりの試合の様子をしばし眺める。
石矢魔の動きも悪くない。
ちゃんとしたバレーになっている。
聖石矢魔の生徒達も驚くほどだ。
「オーバーヘッドキックだーっ!!!」
しかし、男鹿のオーバーヘッドキックで、場が静寂に包まれた。
因幡と真田兄弟達も真っ白になっている。
「反則」
「「なにっ!?」」
男鹿と、手伝った東条もショックを受けて審判に振り向く。
「反則です!! 当たり前です!! アホです」
「おなか痛くなってきた…」
因幡は真田兄弟に学ランを返し、玄関を出る。
「おい待て因幡!」と真田兄。
「見てられなくなったからって逃げるなっ!」と真田弟。
「応援なんて気休めだと思うねっ。オレには向いてねえよ! 応援だけで勝てるって思うならおまえらだけでやってろ!」
「「因幡ーっ!!」」
真田兄弟の怒鳴り声を背中で受け止め、因幡は校舎の中へと逃げ込んだ。
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