02:やられたら、やり返します。
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神崎と因幡が同時に後ろに飛び、距離を置く。
神崎は内心で舌を打った。
姫川の言う通りだったことに腹が立つ。
姫川は城山に「奴はできるだけ単体を狙ってくる。神崎と一緒に帰らず、ひとりで家に帰れ」と言った。
もちろん、その気にさせるために小声で「神崎の役に立ちたいならな」と付け加える。
だから城山は、まさか神崎が駆けつけてくるとは、この時は思っていなかった。
城山を先に帰したあと、姫川は神崎に自分の携帯を渡した。
その画面には、石矢魔町の地図と、動く小さな赤い点が点滅していた。
怪訝な顔をして見上げる神崎に、姫川は「GPSだ」と言った。
先程、城山に近づいたとき、こっそりと発信器をつけておいたのだ。
姫川の携帯で、城山の位置を確認できる。
「敵を騙すには味方からっていうだろ? 相手はどこから現れるかわからねーんだ。おまえが近くにいると、相手も警戒して出てこないかもしれなからな」
「遅れて登場ってなっちまったけどな」
睨み合いになる2人、その間にいた城山は夏目が回収した。
「城ちゃん、大丈夫?」
「夏目…」
それを見届けたあと、因幡はくつくつと笑った。
「オレと同じ、足癖の悪ィヤロウだな。もう回りくどいことはやめだ。今すぐこの場で転がしてやるよ、神崎一!」
そう言ったあと、因幡の視線が神崎が右手に持っているヨーグルッチに移る。
「……………;」
笑みを浮かべたままの因幡の額から、冷や汗が流れる。
「どうした? 早くかかってこいよ」
促す神崎に舌を打ち、因幡はヨーグルッチを指さした。
「その前に、その手に持ってる牛乳、どっかやれ! 邪魔だろうが!」
全員の視線が、半分残っているヨーグルッチに注がれた。
「あん? 牛乳って…、こいつはヨーグルッチってんだ」
「名前なんざどうでもいい! さっさと捨てろ!」
苛立ちとともに因幡は声を荒げた。
##IMGR32##
好物を捨てろと言われた神崎もカチンとし、言い返す。
「捨てろだぁ!? てめ、なにもったいねーこと抜かしてんだ! まだ半分も残ってんだぞ!」
「じゃあさっさと飲めよ!」
「なんでてめーに命令されなきゃならねーんだ! 自由に飲ませろよ! 大体、いきなり飲んだら腹壊しちまうだろうが!! てめーの狙いはそれか!?」
いきなりの言い争いに、城山と夏目の目が点になっている。
(なんだ?;)
夏目はヨーグルッチに敵意を見せる因幡に疑問を抱いた。
因幡は、いつまで経っても捨ても飲みもしない神崎に痺れを切らし、先に突進してきた。
「!」
その速さに、神崎の対応が少し遅れる。
「攻撃が蹴りだけだと思うなよ!!」
右手にコブシをつくり、まずは神崎の顔面に叩きこもうと振りかぶる。
(一撃で転がす!!)
パァンッ!
手応えはあった。
しかし、コブシは神崎の顔面に当たらず、反射的に己の顔を守ろうとした右手に受け止められてしまう。
ヨーグルッチを持った右手にだ。
当然、神崎の手のひらと因幡のコブシに潰されたヨーグルッチは衝撃に耐えきれず破裂し、2人の顔に飛び散った。
「…!!」
「オレのヨーグルッチが」とショックを受ける神崎に対し、因幡の顔がみるみると真っ青になっていく。
それを見逃さず、はっと先に我に返った神崎は素早く左脚を上げ、
「うらっ」
ゴッ!
「ぎゃっ;」
因幡の脳天にかかと落としを食らわせた。
咄嗟の攻撃だったため、あまり力の入ったかかと落としではなかったが、因幡はその場にぱたりとうつ伏せに倒れた。
因幡の頭に大きなコブが膨れ上がる。
「やったね、神崎君!」
「さすがっス! 神崎さん! みんなの仇を討ちましたね!」
「お…、おう…」
駆け寄ってきた夏目と城山に返事を返し、神崎は訝しげな顔で目の前に倒れた因幡を見下ろす。
「なんだこいつ…、急に弱くなったぞ…」
しゃがみ、因幡の様子を見る。
因幡は気絶はしていなかったが、顔を青くし、具合が悪そうだ。
「こ…のヤロウ…、ブッ転がす!!」
顔を上げ、神崎を睨みつけた因幡はそのまま目の前の神崎を殴ろうとした。
「寝てろ」
ゴッ!
しかし、背後から再度頭を殴られてしまい、2段目のコブをつくり、今度こそその場に気絶してしまう。
神崎は因幡から顔を上げ、その人物を見上げる。
「姫川」
姫川の手には、スタンバトンが握られていた。
電流を流さなかったのは彼なりの優しさだ。
「遠くから見させてもらったぜ」
姫川は自分の2つ目の携帯についているGPSからこの場所にたどりついたようだ。
「おまえらが暴れてる間に、こいつの個人情報を大体調べ終えた。…たまげるぜ?」
「プライバシーの侵害じゃねーか?」
「てめぇにそんな心遣いができたのか」
「は? 今度はてめぇがかかと落とし食らうか?」
「そんなことより、帰宅途中で悪いが、こいつ学校に運ぼうぜ。話はそれからだ」
姫川はそう言って因幡の前にしゃがみ、気絶したかどうか確認する。
「……夏目、城山を送ってやれ」
「気になるけど、仕方ないね」
夏目は惜しそうに苦笑したあと、城山に肩を貸してやり、「それじゃ、気をつけてね」と言って神崎と姫川に背を向けた。
「神崎、そっち持て」
「これ、傍目から見たら拉致だな;」
人の目に留まる前に、神崎と姫川は足早に学校へと戻った。
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