21:こちらも特訓中です。
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結局、神崎、夏目、姫川、因幡、邦枝、レッドテイルのメンバーでバレーの練習をすることになった。
若干人員不足だが、練習に打ち込む。
因幡がサーブを打ち、それを邦枝が拾い、夏目がトスし、神崎や姫川がスパイクを打つ。
男鹿や東条がいなくても、悪くない流れだ。
「これオレ達だけでもいけんじゃね?」
そう言ったのは神崎だ。
「調子に乗ってると、痛い目みるぞ」
因幡はサーブを打つ前にそう言った。
それはすぐに起こる。
練習の途中で神崎のシューズの紐が解け、姫川が知らずにそれを踏んでしまった。
「つっ!?」
そのせいでジャンプに失敗した神崎は床に倒れた。
「! 練習、ストップストップ!」
「神崎君!」
因幡がストップをかけ、メンバー達が駆け寄る。
神崎は身を起こし、右足のくるぶしを両手で押さえた。
「痛…っ!」
「おいおい、ひねったんじゃねーだろな」
しゃがんだ姫川はその足をつかみ、具合を見る。
つかんだだけで神崎は顔をさらにしかめ、その手を払った。
「痛いっつってんだろ! 触んな!」
その言い方に姫川はムッと顔をしかめる。
「ほっとくと悪化するだろがっ!」
「てめえに触られる方が悪化するっつーの! これくらい屁でもねーんだよっ!」
「じゃあ立ってみろよ!!」
「見てろ!!」
因幡は止めようとするが、意地をはった神崎は誰の手も借りずにゆっくりと立ち上がり、腕を組み、真っ直ぐに立って姫川を見下ろした。
「ど…、どうよ…っっ」
「目に涙が滲んでますがっ!?」
よほど痛いのだろう、右脚はガクガクと震え、神崎は口元に余裕の笑みを浮かべていたが、目は潤んでいた。
「滲んでねえ! 余裕だって…うおっ!?」
「あ…っ」
右脚を動かそうとしたとき、バランスを崩して後ろに倒れかけた。
姫川は咄嗟に手を伸ばしたが、先に誰かが伸ばした手が神崎の腰をつかみ、受け止める。
「無理はよくないな…」
現れたのは、保健医の鮫島だ。
邦枝が横にいた因幡に「誰?」と小声で尋ね、因幡も声を潜ませて「保健医の鮫島」と答える。
いつ来たのか。
誰も、彼が入ってくるところを目撃しなかった。
鮫島は驚く神崎をその場に座らせ、くるぶしを優しく擦った。
「おまえ…」
「負担をかければ、本番で使えなくなる。…みんなの足手まといは困るだろう?」
「……………」
神崎はなにも言い返せない。
「保健室で足を冷やそうか」
「待…てよ!」
躊躇った姫川だったが、鮫島の肩をつかんで止める。
鮫島は肩越しに振り返り、冷たい目を向けた。
神崎に向けた目とはまったく別物だ。
「オレがケガさせたんだ。…オレが診る」
「「診る」…だって?」
鮫島は露骨に嘲笑し、肩の手を払いのけ、神崎から一度離れて姫川と向かい合う。
「……もしかして、あの時のリーゼントか? フン、そんな面をしていたとはな。……たかが何事も金任せのお坊っちゃんになにができる? 私のことを嫌うのは勝手だが、神崎君のことをもう少し考えたらどうだ?」
「なにを…」
青筋を立たせた姫川が口答えする前に、鮫島は手を伸ばし、そのアゴをつかんで睨みつける。
「ボンボンが口出すなと言ってるのがわからないのか?」
「―――っ!!」
「!! 待て! やめろ!!」
「姫川!!」
姫川がコブシを握りしめて振り上げたのを見て、神崎に続き因幡は声を上げた。
殴ればただでは済まされない。
「桃矢ちゃ―――ん!!!」
その時、出入口から突然コハルが登場した。
全員の視線がそちらに集中する。
「…今度は誰?」
そう尋ねたのは邦枝だ。
「………うちの母親」
「「「「お母さん!!?」」」」
驚愕の声を上げたのはレッドテイルだ。
高校生の親とは思えないほど、若い見た目をしているのだから。
「……あれ?」
コハルの登場に目を奪われた姫川は目の前に向き直ったが、いつの間にかアゴは解放され、鮫島は姿を消していた。
他のメンバーも鮫島の消失に驚いていた。
「あいつ、どこ行ったんだ?」
神崎は首を傾げる。
「どうも、母の因幡コハルです。桃矢ちゃんがいつもお世話に…」
「ちょっとちょっと、なんで来るんだよっ。授業参観でもねーのに」
コハルに駆け寄った因幡は声を潜め、焦りながら言った。
「退学をかけた大勝負って言うから、応援しに来たんじゃない。あ、皆さん、はちみつレモン持ってきましたから、よかったらどうぞ」
コハルは手下げバッグから、はちみつレモンの入ったタッパーを取り出す。
「応援しに来たモンが、原稿とGペン(仕事道具)持ってくんなっ」
バッグからのぞいたそれらを見て因幡はつっこむ。
「姫川君もどう?」
コハルはつっこみを無視して、因幡越しの姫川にタッパーを差し出して尋ねる。
迷いのない名指しに全員が内心で驚いた。
((((一発で見破った!!?))))
「それより桃ちゃん…」
「…なに?」
突然真摯な顔つきになったコハルに、因幡はなにか真剣な話だろうかとつられて同じ顔つきになる。
「膝丈上の体操服って最強ね」
口端から血が一筋。
「もうホント帰ってっっ!! 吐いても絶対救急車呼ばねえから!!」
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