20:練習に来て下さい。
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バタバタしたHRだったが、休み時間、花澤と飛鳥が、学園祭の競技がバレーボールに決定したことを伝えた。
放課後、退学組の練習のために1時間だけ体育館を貸してもらえることになったのはいいものの、集まった退学組は男鹿、古市、邦枝だけだった。
その頃、練習に欠席した神崎、姫川、夏目は、川の堤防に座って呑気にジュースを飲んでくつろいでいた。
「バレーなんて冗談じゃねえ。どこの熱血マンガだっつーの」
「白けちまったな…」
「けど、勝手に抜け出して、明日怒られないかな」
「おまえこそ抜け出して来たクセに…」
神崎が夏目にそう言った時だ。
ゴゴゴンッ!
「「「!?」」」
3人の後頭部にバレーボールがぶつけられた。
全員の飲みかけのジュースが手元から落ちて服を濡らす。
「おいコラてめーらぁ!!」
振り返ると、男子の体操服を着た因幡が眉間に皺を寄せて3人を睨んでいた。
「あ、体操服」
物珍しげに見つめて呟く夏目。
「そんなのはどうでもいいんだよっ」と因幡は堤防に下りて3人を見下ろし、怒りを露わにまくしたてる。
「あの男鹿だって練習に来てんのに、揃いもそろってサボってんじゃねえよ! 女子と一緒に体操服でボール持って待ってたオレはバカかっ!?」
「てめーはなに熱くなってんだ?」
「相手もバレーなんて初心者なんだ。どうとでもなるだろ」
神崎に続き、姫川もそんなことを口にする。
「退学がかかってんだぞ! こうしてる間にも六騎聖だってどっかで練習して力をつけてるかもしれねえんだ! もう少し危機感を覚えろよ!!」
「こっちだって負けてやるつもりはねえんだ。…退学組でもねえおまえがなに焦ってんだ?」
神崎に問われ、因幡は「うっ…」と唸る。
「く…、口じゃなんとでも言えんだよ。どちらも未経験者だからこそ、練習すんだろーが…」
「……因幡がチアガールになって応援してくれんなら頑張ってやってもいいぜー」
姫川が言いだしたことに、因幡は「…え?;」と聞き返す。
「おー、そりゃいい」
「きっと似合うよ」
神崎と夏目もいい提案だと言わんばかりに笑う。
「…っ!」
まともに取り合ってくれない3人に、因幡は再び青筋を立たせる。
因幡の怒りを感じ取った3人は笑うのをやめて、いつでも逃げれるようにと腰を浮かした。
「お」
「キレるか?」
一度は殴りかかってやろうかと思った因幡だったが、キッと3人を睨みつけて怒鳴り散らす。
「…てめーらなんざもう知ったことか!! 勝手にサボって、勝手に退学になっちまえ!! 次会った時はプーだ!! バァ―――カッ!!」
水鳥が逃げるほどの大声を上げたあと、背を向けて早足で堤防を上がって行ってしまう。
「…キレたな」
「スポーツって人間を熱くさせるもんだな」
姫川と神崎が因幡が去って行った方向を見つめ、呟いた。
「…因幡ちゃん、オレ達が退学になるの、かなり嫌がってるね」
因幡の必死さを見れば、わかりやすい話だ。
「「……………」」
察した夏目の言葉を聞いた神崎と姫川は、互いの顔を見合わせた。
ドガガッ!
「「ぶっ!?」」
瞬間、姫川の顔にボールがぶつかり、跳ねかえったそれが神崎の顔にぶつかった。
ボールは宙を上がり、落ちてきたそれを夏目が両手でキャッチする。
見ると、文字が書かれてある。
“間接キッスしてろボケ共”
2人はボールで腫れた赤い顔を押さえつけて呻いている。
(さっすが―――。ただでは去らないか)
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