19:まいどお騒がせします。
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神崎は小さな土星につかまり、広大な宇宙を漂っていた。
ゆらゆらと揺られ、気持ち良さそうだ。
「あ、ウサギ」
目の前に浮かぶ月に近づき、一匹のウサギを見つけた。
それは神崎を目を合わせると、つぶらな瞳が急に猛獣のように鋭くなり、大きくジャンプして神崎もろとも土星を蹴り上げた。
「な゛―――っ!!」
宇宙のかなたへと吹っ飛ばされる神崎。
「はっ!!」
「なんだ!?」
目を覚ますと、自分の頭に包帯を巻いてくれている因幡と目が合った。
突然起きた神崎に、因幡は思わず仰け反る。
「あ、気がついたんだ、神崎君」
神崎は辺りを見回す。
保健室ではなく、旧校舎の裏だ。
神崎は座ったまま壁に背をもたせかけ、因幡と夏目の手当てを受けていた。
「ホクロチビは!? オレ、確かあの時男鹿に殴られて…。男鹿ああああっ!!」
思い出した神崎は、怒りのままに叫んだ。
「うるさいっ」
「痛いっ!」
因幡はデコピンを食らわせ、神崎を黙らせた。
手加減したデコピンでさえ、頭に響く状態だ。
落ち着いたところで、因幡はゆっくりと神崎が男鹿に殴られて再び気絶したあとどうなったのかを順番に話した。
男鹿と三木の対決に、六騎聖のリーダーらしき男が割りこんできたこと、東条が現れたこと、結局決着がつかなかったこと。
六騎聖のリーダー―――出馬の存在を思い出した因幡は、人間とは違うなにかを感じ取った時のことを思い返し、嫌な汗を浮かべた。
「……で、解散のあと、オレはここに運ばれてきた…、と。悪かったな、夏目」
「いや、運んだの、オレじゃないよ」
夏目に運ばれたと思っていた神崎は「あ?」と首を傾げる。
夏目は、郷の関節技を食らって腕を痛めたことを話した。
おぶれる状態ではない。
「じゃあ、因幡か?」
「自分より大きな男背負って階段下りられるかよ…」
その口元は嬉しげに緩んでいた。
まさか、と思ったとき、その人物が校舎裏の曲がり角から現れた。
「なんだ、起きたのか」
「姫川…」
その手には絆創膏の箱がある。
わざわざ教室まで戻って石矢魔女子からもらってきたものだ。
そんなことをしなくても保健室に連れて行けばよかったのではないか。
最初は神崎を背負って保健室へと向かっていた姫川だったが、途中でUターンしたのだ。
理由は、「あの保健医感じ悪い。生理的に受け付けない。つうかオレがムリ」と拒絶を露わにしている。
だったら、神崎をさっさと運んでさっさと帰ればよかったんじゃないか、と因幡と夏目は提案を出そうとしたがやめておいた。
姫川は茫然としている神崎に近づき、目の前でしゃがんで箱を開けた。
「ほら、じっとしてろ」
パァンッ
「痛った!!」
姫川は神崎の右頬に平手をかますと同時に絆創膏を貼った。
そのあと、口元をニヤニヤさせながら尋ねる。
「気分はどうだ?」
「…っ、最悪だっ!」
右頬に触れ、絆創膏を貼られたことに気付いた神崎はそう言い返し、貼られたばかりの絆創膏を剥がし、
パァンッ
「痛…っ!!」
姫川の左頬の傷に、同じく平手と同時に貼りつけた。
それから「自分で貼りつけられるっての」と新しいのを出して自分に貼りつける。
「……ズレてるぞ」
「!」
手を伸ばされ、また頬を叩かれるのかと構えた神崎だったが、普通に絆創膏の端を剥がされ、傷の上に貼り直された。
「……………」
「……………」
((なんか…、小っ恥ずかしいな…))
2人は同時に視線を逸らした。
「夏目、オレ達お邪魔みたいだし、先に帰るか」
「だよねー」
因幡と夏目はその場を立ち去ろうとし、神崎と姫川は同時に手を伸ばした。
「待て!!」
「置いてくな!!」
2人は耐えられなかった。
「姫川…、関係ねえとか言っておきながら、神崎に負けず劣らずツンデレなんだな。というか、天邪鬼?」
因幡はニヤつく口元を右手で隠し、肩越しに振り返ってからかう。
「コラ因幡。六騎聖の前に、てめーから相手になんぞ」
「まあまあ姫ちゃん。警察も来てることだし、今日のケンカはこれにて終了。因幡ちゃんもあんまりからかわないの。…ツンデレには同意だけど」
夏目は親指を立て、因幡も「おお、そうかそうか」と親指を立てる。
「よしおまえら、仲良く同じところにコブ作ってやるから並べっ」
姫川はスタンバトンを取り出した。
「はぁ…」
神崎はその光景を眺めながら、姫川に貼り直された絆創膏を指先で撫で、今日のことを振り返ってみる。
城山は病院送り、ヘンな保健医に絡まれる、1日に2度気絶する。
散々だ。
おまけに、姫川に背負われ絆創膏を貼られる始末。
夢の中の心地よさは、きっと姫川に背負われ移動していたからだろう、と考えないようにしていたが考えてしまった。
頭の包帯がきついせいか、頭痛を覚え、目の前がクラクラした。
絆創膏を貼られた頬も、熱を帯びる。
.To be continued